スタジアムのブランディングやユニークなイベントに加え、オリジナリティの高いグッズもFC町田ゼルビア名物のひとつ。大学生の頃からグッズ関連事業に携わっている若きホープに、開発秘話を直撃。「FC町田ゼルビアの飛躍を支える、裏方仕事術」第4回、FC町田ゼルビア グッズ担当・神戸琴葉さん。

他チームにはないグッズでゼルビアらしさを演出
オンラインストアには、ビブス型のメッシュバッグや、どの選手のものが当たるかお楽しみというシークレットキーホルダー、試合会場では御朱印帳ならぬ蹴球印帳や約24cmの特大アクリルスタンド、特製ガチャなど、ひと味もふた味も違うグッズを展開しているFC町田ゼルビア。2022年以降、グッズの売上額も倍々で推移しているなど、絶好調だ。
――神戸琴葉さんは大学3年の時から、インターン生としてホームゲームでのグッズ売り場の準備や当日の運営をされており、入社後は、自ら希望してグッズの企画・開発をする部署に配属されたそうですね。印象的なグッズをいくつか教えてください。
神戸 はい。グッズだけでなく、チケット販売やファンクラブ運営なども行う部署ですが、グッズ制作は、私と同年代の女性社員のふたりで主に担当しています。グッズに関しては、ありがたいことに、1年目から自分のアイデアを積極的に取り入れてもらえました。
とくに印象に残っているのが、2023年6月のホームゲームで開催した「ゼルビア♡キュン祭り」です。“キュンキュン”にかけて、99のイベントを実施し、町田市に提出できる「ゼルビアオリジナル婚姻届」や選手それぞれのキュンポーズを使用したハート型缶バッジ、選手の私服姿のクリアフォトカード、ジャンボうちわなどを新たにつくりました。翌年の2024年にも第2回となる「ゼルビア♡キュン祭り」を開催し、とくに、反響が大きかったのが、シークレットチェキ。どの選手のものが当たるかわからないというチェキなのですが、販売開始から20分ほどで完売し、ご来場いただいた方に大好評で、嬉しかったです。
2021年から毎年夏にはホームゲームに合わせて「まちだ青城祭」という大きなお祭りを開催しているのですが、2024年は、世界にひとつしかないガチャを販売しました。浴衣姿の選手たちが、りんご飴や水鉄砲を持っている写真を使い、全部で700種類くらいつくったんです。浴衣の柄や手にするアイテムが違うなど、まったく同じものがないようにして。これも、即完売でした。
今シーズンも、ビブスにもエコバッグにも使えるバッグや、まちだみやげのお醤油(地元の醤油メーカーとのコラボ製品)に(マスコットである)ゼルビーのチビゼルビーがひょっこりと顔を出しているラベルを採用したものなど、私の提案したものが製品化されています。

2001年神奈川県生まれ。小学校6年でサッカーを始め、高校卒業後は町田のクラブチームHFCレディースに在籍。大学3年の夏からFC町田ゼルビアでインターンシップを経験し、2023年にゼルビア入社。グッズの企画、開発、試合会場のグッズ売り場運営、オンラインストアの運用などを担当し、2024年、優秀な社員に贈られるフロント年間MVPを受賞。
ラーメン丼ぶり&レンゲ…異業種コラボをやりたい
――ホームゲームのたびに、新たなグッズを投入されるそうですが、アイデアの源はどこにあるのでしょうか? また、グッズを企画する際、重視していることはありますか?
神戸 お休みの日に雑貨ショップを巡って、「使えそう」と思ったものを取り入れたり、私が好きなアイドルのグッズを参考にしたり。アイドルグッズでバインダーが流行っていたので、そのマスコットバージョンをつくったこともありますし、実は、クリアフォトカードも、アイドルグッズがヒントになっているんです。
グッズを企画する時に大切にしていることは、ファン・サポーターの声ですね。試合会場の売り場でお客様とお話したり、SNSにグッズの情報をアップした時のファン・サポーターの皆さんの反応をみたりして、どんなものが求められているかは常に意識しています。
背番号や顔写真が入っているなど、選手に関連したグッズは、やはり反響が大きいですね。“選手推し”でスタジアムにいらっしゃる方が多いんだなと実感しています。タオルやキーホルダー、ユニフォームなど黒田剛監督関連のグッズも販売しているんですけれど、人気が高いく、全選手の中で、売上トップ10に入っています。監督も、自分がグッズになるのを喜んでくださっているみたいで、快く制作に協力してくださっています。選手たちもみなさん好意的で、プロモーションを含め、協力してくれているので、本当にありがたいです。

FC町田ゼルビア大躍進の裏には、アマでもプロでも通用する、黒田流マネジメントの原理原則があった。組織・リーダー・言語化など、4つの講義を収録。結果を出せず悩んでいるリーダー必読。黒田剛著 ¥1,540/幻冬舎
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――最後に今後の抱負についてお聞かせください。
神戸 当クラブはもちろんですが、Jリーグ全体でもやっていないような新しいグッズを企画したいと思っています。2024年、対戦相手の川崎フロンターレさんに交渉し、選手の写真をお借りして、コラボグッズを販売したんですが、今後もそうしたコラボアイテムは、積極的につくっていきたいですね。サッカーとは関係がない、アパレルブランドやキャラクターなどともコラボできたら面白いなと考えています。選手プロデュースのアイテムや、ラーメンの街、町田にちなんでラーメン丼とレンゲのセットも企画してみたいですね。
FC町田ゼルビアは、とても風通しの良い会社で、新人でも若手でも、どんどん意見を言えますし、挑戦させてもらえる風土があります。グッズ制作についても、納期や数量の関係で断念したものはありますが、基本的には現場の裁量に任せてもらえるので、やりがいが、とても大きいんです。学生時代の友人たちからも、「仕事の話をする時が一番キラキラしているね」と言われるくらい(笑)。
選手が目標に向かって頑張る姿は、サポーターやファンのみなさんにエネルギーを伝えられている気がしますし、みなさんの応援があるから、選手は思い切りプレーできる。それを、入社してから、ものすごく実感しています。これからも、ファン・サポーター、観戦に来てくださる皆さんに喜んでいただけるものを、たくさん手掛けたいと思います。