多岐にわたる物件を手がけてきた森田恭通氏と横丁文化の伝道師・浜倉好宣氏がタッグを組んだ、東京の新しい食カルチャー。現代版“ブレードランナー”の世界を体感できる、フードエンタテインメント「グランハマー」が、新橋駅前にいよいよオープンする。デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である。」Vol.53。
「そこにしかないもの」挑戦した“ザ・レジャービル”
新橋SL広場の目の前に、周囲とは異なる雰囲気を放つ、新しい形態のフードエンタテインメントレジャービルが誕生します。その名は「グランハマー」。オーナーは恵比寿横丁をはじめ、数多くの横丁を手がけヒットさせる男、浜倉好宣さん。
浜倉さんとは実は20代からの知り合いでもあり、一緒に仕事もしてきました。彼は若い頃から飲食横丁の立ち上げに成功し、その道に進まれた。その後、僕とは仕事での接点はありませんでしたが、お互いの活躍を励みに切磋琢磨していました。その彼から突然連絡が来たのが1年半ほど前。「とうとう一緒にやる時が来たね」とプロジェクトの打診をいただきました。
浜倉さんから「世界中、どこに行っても同じような店ばかり。だからこそ東京に“そこにしかないもの”をつくりたい」と熱く語られ、同じ想いを持つ僕も大きく頷きました。その場で僕は「映画『ブレードランナー』の世界はどうでしょうか?」と提案したんです。外国人のなかにはあの世界観を求めて東京に来ている方もいるのではないかと思い……。
場所は東京・新橋の駅前の約2500坪。かなりのスケールです。構想としてはビル1棟、カオスでオタクでエンタメな9フロア、そこをホッピングできるザ・レジャービルをつくるイメージでした。
ご存知のように新橋駅前のビルは電飾の看板だらけ。なので敢えてシンプルなディテールで外観をつくりながらも、ふと足が止まるインパクトを狙いました。1階はお祭りステージを囲むミラーボール入りの提灯が天井を飾る、さまざまな日本文化をイメージしたデザインに。フロアごとにコンセプトもインテリアも違う店を配置し、ビル全体を以前から設置されていたエスカレーターを使って下から上までホッピングできる仕組みです(他にエレベーターもあります)。
世界各地のお料理が楽しめる横丁に、カラオケを楽しめる個室レストランもあります。また昭和のキャバレーからインスピレーションを得た、食事をしながらライヴ&パフォーマンスが楽しめる空間には、吹き抜けの壁面に巨大なLEDビジョンを設置。それだけでも見応えがあります。
別の階には15台のクレーンゲームに囲まれたアイランド型のDJバーがあり、屋上は一年中BBQやマジックショーが楽しめるエリアに。週末にはDJが登場し、ショーと映像、音楽とともに食事が満喫できます。外光が入るのは1階と屋上のみなので、一度足を踏み入れたらまさにカオス。時間を忘れて楽しめる、現代の竜宮城です。
メニューもラーメンからドン ペリニヨンまで。僕は外国人ゲストをおもてなしする場所の相談を受けますが、ここなら喜ばれること間違いなし。好みに合わせてフロアを選べばいいのですから。
敢えてカッコよさを求めず、賑わいをつくり上げることは、デザイナーの僕にとってもエキサイティングなプロジェクトでした。今までにないものを、浜倉さんとつくり上げるのは本当に楽しいです。僕らの“遊び”が詰まった次世代の食のエンタテインメント施設が、これからの東京のニュースタンダードとなれば嬉しいですね。
森田恭通/Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍する傍ら、2015年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」を主宰。