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2024.07.01

自宅の空にも不動産価値が!? これから訪れる空間を売買する時代を解説

スマホに代わる次世代デバイスとして注目されるApple Vision Pro(以下AVP)が2024年6月28日、遂に日本上陸を果たした。AVP初の解説書『スマホがなくなる日』を上梓した、ITベンチャーSTYLYの渡邊信彦COOは、「近い将来スマホを持つ人はいなくなり、人類はメガネ型デバイスをかけて生活も仕事もすようになる」と断言する。今回はそんな渡邊氏と、東急不動産CX・イノベーション推進部 グループリーダーの佐藤文昭氏との対談が実現! 空間が土地と同じように売買されるようになる!? 未来の不動産の可能性とは。※本記事は、『スマホがなくなる日』より、内容を一部抜粋、再構成したものです。

Apple Vision Proを持つ佐藤文昭と渡邊信彦

勝ち筋は想像を超えたところにある

空間コンピューティングに注目するのは、アートやエンタメ業界だけじゃない! 今不動産業界からも熱い視線が注がれ始めている。これからは空間の不動産!? 土地の売買だけでなく、空間の売買までされるようになるというのだ。デベロッパーが見据える、空間コンピューティングの可能性とは?

渡邊 佐藤さんには、不動産業界ではおそらく初めて、空間コンピューティングの可能性を感じてもらった記憶があります。具体的に、空間コンピューティングは不動産業界にどんな影響を与えられそうですか?

佐藤文昭と渡邊信彦
佐藤文昭/Fumiaki Sato(右)
東急不動産CX・イノベーション推進部 グループリーダー 。1979年東京都生まれ。不動産投資ファンド運営会社等を経て、2008年東急不動産入社。2016年より米国現地法人へ出向しニューヨークに駐在。2021年より現職。CVCによるスタートアップ企業への出資、オープンイノベーションの推進、新規事業の立案等を行う。

渡邊信彦/Nobuhio Watanabe(左)
STYLY 取締役COO 。1968年千葉県生まれ。2016年 Psychic VR Lab(現STYLY)の設立に参画し取締役COO就任。XRクリエイターの発掘や育成を目的としたプロジェクト「NEWVIEW(ニュービュー)」を立ち上げたほか、グローバルに活躍できる人材を輩出するために尽力している。

佐藤 不動産業界は、いわゆる物件開発、つまりは「ハコを作る」というビジネスをずっと続けてきました。どんな業界でも共通することかもしれませんが、世の中が変化するタイミングで、新しいことを始める必要があると私は常に考えています。そう考えているタイミングで知ったのがXRや空間コンピューティングという言葉でした。この空間コンピューティングでは、気分や用途に合わせた自分好みの空間を作り出せる、まさに「空間を身にまとう」時代が来るという話を聞いた時に「あぁ、これって今までにない新しい価値を不動産につけられて、街の価値を高められる」と感じたのが最初の印象ですね。

渡邊 私たちもXR技術を拡大するために、色々な場所に話をしに行くのですが、佐藤さんはものすごく真剣に話を聞いてくれて、嬉しかったですよ。

佐藤 ありがとうございます(笑)。自分の脳で考える未来なんてたいしたことない、自分の想像を超えたところに、初めて勝ち筋があると常に思っています。自分が想像できちゃう未来ってことは、それは想像の範囲内ということ。自分の常識の範囲外にこそ道があると思っています。普通に考えたらApple Vision Proのような、こんなごついものを身につけて歩く人なんていませんよね(笑)。

でも携帯からスマホに変わったように、世の中の当たり前は、想像の範疇を超えて常に変化しています。その時代の流れがどんどん速くなっている。想像できないようなことが、すぐ近くの未来まで来ているんじゃないかと思ったら、すごくワクワクしてきたんですよ。たとえばVRゴーグルも、最終的にはコンタクトレンズ型になる、みたいな話が本当にすぐ来るんじゃないかなと。そして私はそのお手伝いができたら嬉しいなと思ったんです。

渡邊 なるほど。想像を超えた未来って、想像できないことなんですよね。だから今理解できることで「それは起こり得るよね」って言わせたら多分負けなんですよね。

佐藤 出会った時から、言い表せない可能性みたいなのは感じていたんですが、実際にApple Vision Proを体験して、よりワクワクしましたね。失礼なんですが、大したことなかったらどうしようと思ってたんですよ(笑)。実は今までも、いろんなVRゴーグルやHMDを体験してきたのですが、「迫力がないな、画像が鮮明じゃないな、ちょっと粗いな」と内心思っていたんですよ。でもApple Vision Proは解像度がとにかくすごく鮮明で。感覚としては、タブレットが目の前にある感じでした。空間がディスプレイになるということが理解できましたし、テレビみたいにみんなが使うものになるとも思いました。

Apple Vision Proを体験する佐藤文昭

空間コンピューティングで感じる都市開発の可能性

渡邊 Apple Vision Proはパーソナルデバイスなので、基本、自分一人で楽しむもので、設定も一人一人に合わせないといけない。でも、100台、200台と複数繋いで、みなさんに同時に同じものを見ていただくこともできます。複合型施設などで、みんなで体験できたら面白いですよね。佐藤さんは、どんなことができそうだなと感じていますか?

佐藤 そうですね。東急グループでは、渋谷駅を中心とした半径2.5キロ圏内を「広域渋谷圏」と定め100年に一度の大型再開発を進めています。都市開発と、魅力向上の取り組みの両面から渋谷の街づくりを進め、もっともっと盛り上げていければと考えているんですが、それにはハードの開発に加えてエンタメなどソフトの要素も必要だと感じています。モノを作るだけではなくて、ソフトも同時に作っていけば、体験の強度をさらに高めることができる。渋谷を訪れた人が、「想像より楽しかった、面白かった」と感じていただけることに重点を置いているんですよね。

渡邊 なるほど。「楽しかった、面白かった」と思ってもらえるコンテンツの中で、これまで実現できなかった体験を空間コンピューティングで何かできないか、ということですよね。

佐藤 その通りです。都市開発の中で、循環をしていくためには大事なポイントが3つあると思っていて、それが「創造・発信・集積」なんです。最初に、まだ誰も体験したことがないものを創造する。そしてそれをいい形で発信して、みなさんに知っていただく。それが話題性になって、口コミも増え、多くの人が集まり集積する。それがまた新たな創造に繋がっていく。「この3つのポイントをぐるぐる回していこう!」ということを考えながら街づくりを推進しているので、「ハコ」を作る仕事ではなく、「人の集積に繋がるハコ」を作る仕事がしたいなと考えています。

渡邊 いいですね。不動産は、土地の価値を上げるビジネスじゃないですか。現時点で価値があるのは、あくまで地面という平面。その価値を、空間にまで拡張できると私は思うんです。今までx軸とy軸のみだった基準に、z軸が追加されるイメージなんですが。

佐藤 できると思います! いわゆる外壁広告というか、屋外広告のさらに進化版ができそうですよね。今の時点でも、その壁にどれだけ視線が集まっているかどうかで、壁の価値は上がります。見る人数が多い壁は、価値が高い。それが空間コンピューティングが当たり前になる時代に突入したら、本来何も掲示できない場所にも広告を打つことが可能になると思うんです。

普通、窓があったらそこには何も貼れないじゃないですか。でも空間コンピューティングで窓に広告を貼れるようになったら、どんな壁や窓にも広告を出すことが可能になりますよね。つまり「空間に広告を打つ」という選択肢が出てくると思うんです。しかもその広告はパーソナライズすることも可能なので、同じ壁でも、人によって見える広告を変えられる。それが実現したら、それはものすごい価値を生むようになると思います。

渡邊 今の時点では、空間自体って登記できないし、空間を売買することはできないし、貸したりもできない。他人の土地の上の空間を勝手には使えませんが、空間コンピューティングによって、空間の価値を数値化することができませんかね?

佐藤 十分でき得ると思います。「そこの土地は俺のものだ!」ではなく、「そこの空間は俺のものだ!」みたいな会話も起こりそうですよね(笑)。極論を言うと、今まで価値を見出せなかった不動産に価値が与えられることになると思うんです。これは決して大袈裟ではありません。可能性を感じますね。

佐藤文昭と渡邊信彦

スマホがなくなる日、どんなことをしてみたい?

佐藤 スマホがなくなる日、人類の空を取り戻したいですね。

渡邊 なんか、かっこいい!(笑) とはいえ、どういう意味ですか?

佐藤 今世の中のみなさん、下を向きすぎだと感じることがあります。それは、気持ちもそうですし、体の姿勢も。体が下を向いていると、気持ちまで下向きになりがちです。スマホを見ている姿勢って下向きですから、人間本来の姿勢ではないと思うんですよね。Apple Vision Proのいいところって、自分が見たいものをバーチャルで目の前に表示できると同時に、現実世界も見られるので、視線が自然と上がることだと感じています。今ある、リアルの世界も見られるっていうのがやっぱり大事だと思うんです。外に出て、散歩して、景色を見たりして感じることって、人間やっぱりあるじゃないですか。

渡邊 なるほど。ついついスマホの画面ばっかり見ちゃいますよね。

佐藤 だから空間コンピューティングの登場によって、みんな上を向いて生活できたら、もっと豊かになれる。個人でも組織でも、あるいは国単位でも、もっと明るい生活ができる。そういう風に考えたので、ちょっとこんな偉そうなことを語ってしまいました(笑)。

渡邊 下ばかり見ないで、空ばかり見る日、来そうですね。

佐藤 そのうち駅の看板などに「歩きスマホ禁止」ではなく「空を見上げるの禁止」なんて看板が出てきたりして(笑)。そういう世界が実現すれば、不動産業界も大きく変化するのではと期待しています。

遂に日本上陸するApple Vision Pro初の解説書!

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=廣瀬順二

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