1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第11回はバーテンダー・西田稔。「人生を彩る眼鏡#11」。
PERSON 61
バーテンダー/西田稔
居心地の良い“空気”をつくるために
京都屈指のバー「BAR K6」。マスターの西田稔さんは、地元京都のみならず全国にファンをもち、“伝説のバーテンダー”とも言われる存在だ。
「僕は子どもの頃から目がよくて、老眼鏡も今のところまだ必要ないんです。だから普段は眼鏡のお世話になることはなく、海外へ行ったときにサングラスをかけるぐらいですかね」
穏やかな語り口。白いバーコートに身を包んだオーセンティックなスタイルを、より知的に引き立てているのが、10 eyevanの「no.7 Ⅲ FR」だ。セルロイドならではの柔らかな色合いが、目元に品よくなじんでいる。
「かけた時に、パっと普段の自分の顔と違って見えたのでこちらを選びました。眼鏡をすることで、“いつもと違う自分”という非日常を味わえてワクワクしますね。たまに眼鏡をしてカウンターに入ったら、お客様も非日常を感じてくださるかもしれません」
時には、バーを訪れる常連客の眼鏡が、何かを物語ることもあるという。
「いつも眼鏡をかけている方が、かけないで来店されるとドキっとすることがあります。男性が眼鏡を取るというのは、ヨロイを外すようなニュアンスもありますから。よほど疲れているのか、何か見たくないものがあるのか……。そんな時は、その方の1日を少しだけ知ることができたらと、こちらからお声がけすることもあります」
大学在学中だった18歳から、バーの世界へ。これまでカウンター越しにお酒を介して幾人もの人に出会い、会話を重ねてきた。バーという場所は、仕事から家に帰る間の止まり木のようなもの。カクテルをつくるだけではなく、その空間に流れる空気をつくり上げるのも、バーテンダーの仕事なのだという。
「家に帰る前、何かぬくもりが欲しくてバーを選んでもらっているわけですよね。その時、“じゃあ誰に会いに行こうか”と考えるのは、“どの空気を吸いに行こうか”というのと同義なんです。理屈ではなく、やはり人は居心地のよい空間に足が向くんですね。バーテンダーの完成形は、ボトルを持ってストレートグラスにウイスキーを入れてお出しした時、『どこで飲むストレートよりも、お前の酒がうまいよって』言ってもらえた時だと思うんです」
長年の経験、そして相手を想うホスピタリティが可能にする至極の1杯を求め、客は西田さんのもとへと通う。西田さんの姿勢を学び、巣立っていった門下生も多い。今年で60歳。キャリアの集大成として現在構想しているのは、ひとりで6~8人を相手にするような街場の小さなバーなのだとか。
「これまで多くのスタッフと働く機会に恵まれたんですが、そろそろひとりでやってみたいなと。掃除も料理もすべて自分でして、100%お客様と向き合ったら、これまでと何か違うものが生まれるのではないかという期待があるんですね。ただ、もう無理はしないつもりなので、お店を開けるのは週2日ぐらいで。僕はアルファベットの‟K“が好きなので、火曜と金曜だけというのは決めているんです(笑)」
西田稔/Minoru Nishida
1964年京都府生まれ。心理学を専攻していた大学在学中に、話に耳を傾けるバーテンダーを志す。東京でバーのプロデュースなどに携わり、1994年、30歳で「K6」を開業。これまでに数多くのバーテンダーを輩出してきた。
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