全4回にわたってカエカの千葉佳織氏が、プロのスピーチライターになった経緯や、政治家の選挙演説の指導の仕方などを紹介してきた本短期連載。最終回では、実際に話し方トレーニングサービス「kaeka」を受講し、そのメソッドと効果を編集部員が体験する。【他の記事を読む】
伝える力を磨くkaekaの独自メソッド
美容外科医の山本崇弘氏や、社会活動家の石山アンジュ氏、書籍や映画で話題となった“ビリギャル”のモデルである小林さやか氏など、さまざまなフィールドで活躍する業界人も多く受講する、話し方トレーニングサービス「kaeka」。
今回、そんなkaekaの話し方トレーニングの効果を紹介するため、特別にkaekaのスピーチトレーナーによる話し方のレッスンを体験させてもらった。
指導していただいたのは、スピーチトレーナーの山元二葉氏。スピーチトレーナーとしてトレーニングを行うだけでなく、自身も数々のコンテストに出場し入賞経験のある実力者だ。
kaekaの体系化されたカリキュラムは、グループで人に伝えるための知識を学び実践する「グループトレーニング」と、専属トレーナーと一対一で鍛える「パーソナルトレーニング」の2つのプログラムで構成されている。
グループトレーニングでは、他のクラスメイトの前でスピーチ発表を繰り返しながら、トレーナーやメンバーからフィードバックを受ける。実際に初対面の人に向けて話すことで、人前でも緊張せずに話せる状態を目指す。
一方、パーソナルトレーニングでは、専属トレーナーと個人の課題を見つけ出し、最適なカリキュラムをカスタマイズ。AIで“話す力”を数値化する「kaeka score」の結果をもとに、反復学習で効率的に話し方のスキルを身につけていく。
この2つのアプローチを組み合わせることで、総合的に話し方の向上を図るのがkaekaの特徴のひとつ。話すことの内容や一貫性などの「CONTENTS(言葉)」と、声の高さ・目線の動きやジェスチャーなどの「DELIVERY(音声・動作)」の分野を同時に鍛えてくれるのだ。
そんなkaekaのトレーニングのなかから、ビジネスパーソンがすぐにでも使える話し方の改善ポイントをいくつか紹介しよう。
<POINT1>堂々と見せるには両手を組んで腹部に
大勢の人の前で話すことが苦手な人が、まず解決したい課題のひとつに“緊張”がある。どんなに仕事ができる人も、人前でのプレゼンテーションがうまくできないと、自らが成し遂げた結果がうまく聞き手に伝わらない。
また、緊張すると無意識に身体がモジモジと動いてしまい、どこか頼りない印象になってしまう。そんな悩みを解消するためには、まず話す時の“立ち方”から改善していく必要があると山元は語る。
「片足だけ前に出して立つと身体がふらふら動いてしまうので、まずは足の位置を意識しましょう。両足を真横に並べて肩幅と同じくらいの間をあけて立つと、軸がブレないので自然と落ち着いた印象になります。
また、話している途中に動作を付けようと、手を動かしながら話す人も多いのですが、話をしている間ずっと手を動かしていると、逆に話の要点がわかりづらくなってしまいます。そんな時は、手を組んだ状態でお腹のあたりに当ててみてください。手が動かないので話し方も安定してきます」
まっすぐな姿勢で立ち両手を腹部に当てることで、緊張したそぶりを見せずに人前で話すことができるようになり、話し方に威厳が生まれ説得力も増すのだ。
<POINT2>“ここぞ”の場面でジェスチャーを投入
次なるステップとして挑戦したいのが“ジェスチャー”の動きだ。
「話の途中でジェスチャーを加えたい場合は、伝えたいことのコアになる部分、最も重要なところで拳を高く振りましょう。ただ手を動かし続けるのではなく、“ここぞ”という箇所でジェスチャーを使うことで、伝えたいことがより明確になります。
また、聞いている人に視線を送ることで、自分たちに向けて話をしていることがより伝わります。目や顔だけ動かして目線をメンバーに向けるのではなく、上半身ごと動かすのがポイントで、どこを見ているのかを動作で表すことができます」
さらに、ジャスチャーで話の要点を強調したい時は、声の高さを上げて他の要素と差別化すると、大事なキーワードがよりわかりやすくなるのだとか。一方、シリアスなことや難しい内容を伝えるには、声のトーンを少し下げることで、全体の話の流れに抑揚がつけられるそう。
<POINT3>2〜3秒の“間”で聞く人の頭に残す
経営者やチームを率いる管理職のなかには、メンバーに対して成果や課題を話しても、手応えがなく、うまく伝わっていないのでは、と感じている人も多いだろう。そんな時に試したいのが、話の途中で効果的に“間”を開けるテクニックだ。
「メンバーになにかを投げかける際には、間を上手く活用すると伝わりやすくなります。例えば、『〜ができた。………これは素晴らしいことです』と、自分が特に重要に考えていることを話す時に、2〜3秒くらいの間を空けてから言うとか。
話している人からすると少し間が長すぎのではないか、と思うかもしれませんが、実際にやってみると聞いている側はそこまで気にならない。むしろ、次の内容に話の流れが変わっていることがわかりやすくなるんです」
スピーカーの頭の中には“話の構成”があっても、聞いている側には、内容の切り替わりが見えない。だからこそ、自分が最も重要だと思うことを話す前には意識して間を空ける、というわけだ。そして上手い間を空けるコツは、呼吸法にあるのだとか。
「間を入れたいところで、一呼吸を入れてみてください。ひとつの段落が終わったら、『すっ』と息を吸いながら、次の話をする準備をする。すると、自然と次の話に持っていきやすくなります。人によっては緊張で酸欠になってしまうこともあるので、呼吸を意識することでスムーズに声が出るようになります。
あとは、一文の長さも大切です。『〜なのに、〜だから、〜のため』と、接続詞で文をつないでいくと、途中の内容が印象に残らない。一文の長さはできるだけ短く、主語と述語が対応するように構成した方が伝わります。そして、その文と文の間に“2秒くらいの間”を入れることで、テンポよく話をすることができるんです」
<POINT4>重要ワードは0.8倍速で印象付ける
聞き手の記憶に残すコツは、それだけではない。話す時のスピードをうまく変化させることも、話を印象的にするひとつのテクニックだ。
「重要な数字や人名などの固有名詞は、通常の0.8倍の速さで言うと、人の頭に残りやすくなります。例えば、初対面の人に自己紹介をする際など、自分の名前のところだけゆっくりと言うことで、効果的に名前を覚えてもらえるようになるんです」
トレーニングを受けた編集部員は、これら4つのポイントを押さえただけで、レッスンの前と後では話し方の印象が激変。その違いは周囲のカメラマンや他の編集部員も驚くほどだった。実際に動画を見比べた本人も、格段に上達した自分の発表に、話し方トレーニングの効果を実感した。
“話し方”を味方につければ、ビジネスも人生も好転する。それは、ビジネスパーソンが今最も身につけるべきスキルと言えるのかもしれない。