僻地に行くからこそ味わえる、その土地独自の食文化。世界の美食を知る浜田岳文氏が、エクストリームな地理条件を超えてわざわざ行きたい、辺境の地のレストランとは――。今回はアフリカ、北米編。【特集 エクストリーム旅】
アフリカにもフーディーの注目スポットが誕生
一年のうち5ヵ月は海外で食べる歩くという世界屈指のフーディー、浜田岳文氏の目指すデスティネーションは地中海を挟み、ヨーロッパの南側にも広がる。次は自身も15ヵ国は巡っているというアフリカ大陸だ。
「まず注目なのはルワンダの『MEZA MALONGA(メザ・マロンガ)』。ここのシェフはまだ若いですが、アフリカのシェフをつなげるネットワークをつくっていて、それによって『世界のベストレストラン50』のチェンジメーカーとして表彰されています。料理はもちろん、アフリカをコネクトするということをやっていて気になりますね。
また、西アフリカのガーナにある『MIDUNU(ミドゥヌ)』。ポップアップやダイニングイベントでしかやっていないのですが、アフリカの首都の名前を料理にしたり、アフリカのさまざまな要素を混ぜたメニューは面白そう。サハラ以南のアフリカは南アフリカ共和国以外ファインダイニングがないに等しかったなかで、ようやく出てきました。近い将来、行ってみたいですね」
また、フーディーにはおなじみのペルー「CENTRAL」のシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネス氏が開いた「MIL(ミル)」も、たどり着くまでの行程はエクストリームなものだ。
「ここには行きましたが、レストランが位置するクスコは標高3500mを超えます。使っている料理はクスコ圏のもので、在来種のとうもろこしを地元の農家の方と育てたり、社会的にも意義があることをしているレストランです。ここはとにかく標高が高い。空港から直接行くとおそらく高山病で倒れます。なので、僕は2800mくらいまで下がって、そこで1泊して翌日のディナーに備えました。体調を整えないとよい食事が摂れないので、やはり旅では体調管理が大切です」
また、僻地のレストランを旅することを考えた時に、探し方の参考になるのは、絶景を持つ宿泊施設から探すことだとか。最近では宿としての評価はもちろんのこと、レストランとしての評判もあがってきているところも増えてきたという。
「北米の島にある『Fogo Island Inn(フォーゴ・アイランド・イン)』が気になっています。ここはカナダの東海岸の沖合にあるフォーゴ島にあり、クルマで2時間半かかる最寄りの空港には、国内線しか飛んでいません。ニューヨークからだと乗り継ぎ含め一日がかりでようやくたどり着ける場所です。ホテル好きにはよく知られていますが、世界中のフーディーも多く行っているので、味は確かなはず」
エクストリームな食の旅は、その土地の文化や風土の背景があるからこそ楽しめるもの。日常から半端なく遠く離れた場所で、新たな感性と出合う。それは、わざわざ行く価値のある特別なものだ。
1.メザ・マロンガ|ルワンダ・キガリ
アフリカをつなげる気鋭のシェフのレストラン
アフリカの言語であるバントゥー語で「テーブル」の意味を持つメザを冠したレストランは、“アフロフュージョン”をテーマにアフリカらしさのある料理を展開する。シェフのデュヴェイユ・マロンガは、ドイツの星つきレストラン等を経て、ルワンダに店舗を開業。アフリカのシェフを結ぶChefs in Africaを設立するなど、業界のチェンジメーカーとしても注目の人物だ。
MEZA MALONGA
住所:KG8 18, Avenue Kigali, Rwanda
2.ミドゥヌ|ガーナ
ガーナでアフリカの食文化を知る
アフリカの文化と食の伝統をダイニング体験に落としこむ「MIDUNU」。現在はイベントとプライベートダイニング、チョコレート事業を中心に展開する。
MIDUNU
https://midunu.com
3.ミル|ペルー・クスコ
標高3500mにあるレストラン
インカ帝国時代の農業試験場の遺跡にある、レストラン兼研究所である「MIL」。ペルーで古くから儀式等で出される料理等を再構築して提供している。
4.フォーゴ・アイランド・イン|カナダ・ジョー・バズ・アーム
世界中のフーディーが目指すホテルのレストラン
カナダ東海岸の沖合にあるフォーゴ島にロケーション。高床式で近代的なデザインが特徴のホテルが有名だが、ダイニングにも注目が集まっている。
Fogo Island Inn
https://fogoislandinn.ca
この記事はGOETHE 2024年4月号「総力特集:エクストリーム旅」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら