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2023.05.03

人気ゲーム「はぁって言うゲーム」をつくったのは、伝説の落ちゲー「ぷよぷよ」の生みの親だった件

デジタル全盛のこの時代に、大人から子供までジワリとブームを博しているアナログゲームがある。その名も「はぁって言うゲーム」だ。確かに、始めると何度もやりたくなる、面白さの真髄がつまったようなものなのだが、この快作を生み出したのが、なんとほかならぬ、一時代を築いた伝説の落ちゲー「ぷよぷよ」を生み出したクリエーター、米光一成さんだ。本作を生み出した背景から、ヒット作を創造する思考法などなど、聞きたいあれこれをぶつけてみた。

その名を聞けば、こちらが「はぁ?」と言いたくなる奇天烈なゲーム

と、その前に、ちょっと説明が必要だろう。まずブームとなっている「はぁって言うゲーム」だが、なにしろ名前からしてふざけている。むしろこちらこそ「はぁ?」と言いたくなるほど。しかしながら実際、まさに「はぁ」と言うゲームなのだ。

のっけからよくわからないかもしれないが、ざっとゲームを説明したい。うまく伝わるだろうか。お題カードには、「お題」となるセリフが大きく書かれ、その下には、AからHまで選択肢として、そのセリフを言うシチュエーションが用意されている。

例えば、こんな感じ。お題が「はぁ」ならば、選択肢Aから降順で、A:なんで?の「はぁ」/B:力をためる「はぁ」/C:ぼうぜんの「はぁ」/D:感心の「はぁ」/E:怒りの「はぁ」/F:とぼけの「はぁ」/G:おどろきの「はぁ」/H:失恋の「はぁ」とカードに記されている。

「親」は、上記のようなAからHまでの選択肢のなかからひとつのお題を与えられ、この指示に従って指定のセリフを演じ、親以外の「子」が、どれを演じたのかを当てるというシンプルなゲームである。

例えば、B:力をためる「はぁ」を引いたならば、渾身の「はぁ」を繰り出すことになり、「子」はそれを見て、どれを演じたのか当てるのだ。さて、一体どの「はぁ」だったのか。

当然、お題カードはたくさんの種類があり、「はぁ」のほか、「さぁ」「うそ」「好き」などから、「自己紹介(自分の名前)」や顔芸のみというものまである。

そう。まさに「はぁって言うゲーム」。

このアナログゲームだが、縦15×横10×深さ3センチという実にコンパクトなサイズ。箱の中には、カードとチップが入るのみの非常にシンプルなものだ。それでも、前述した「お題」を追加すべく(これは、ハマると次から次へと新たな「お題」が欲しくなるのだ)、全4弾までリリースされているのも納得だ。

もちろん、本当の面白さはプレーしてみないとわからないので、ぜひとも家族や仲間と楽しんでいただきたい。あるいは、ちょっとビミョーな関係の集まりでも打ち解けるのには最適だと思う。

「はぁって言うゲーム」(¥1600+税)。お題の一言を声と表情だけで表現するパーティーゲーム。それぞれのプレーヤーが、順番に披露して正解を当てっこする。演技力や推理力を駆使し、演じる「親」は当てさせるように、「子」は、当てるようにして得点を重ね、最も高得点を挙げたプレーヤーが勝利。現在は、シリーズ1から4までリリース。写真右に写っているのが、発案初期のインディーズ版。

きっかけは、「あ、さみしっ!」と思う気持ちから

駆け足でゲームの紹介をした。ここからは、このゲームの魅力が伝わっているものとしての話となる。

実にシンプルなやりとりで面白さを生み出す。これは、米光さんの名を轟かせた伝説のテレビゲーム「ぷよぷよ」にしても同様。稀代のゲームメーカーによるヒット作は、どのようにして生まれたのか。その経緯は、まさに「ひょんなこと」からだった。

「池袋のカルチャーセンターで『ゲームづくり道場』なる講座の講師を長らく勤めているのですが、授業が終わると生徒さんたちとだいたい飲みに出たりするんです。居酒屋に行く途中、みんなすごく楽しそうにおしゃべりしているのに、なぜか僕だけがぽつーんとひとりになったときがあったんです。『あ、さみしっ!』って思って。みんなに構って欲しい、『好き』って言われたい(笑)。じゃあ、みんなから『好き』って言ってもらえるゲームを作ればいいんだって」

話の輪に加われないことは、誰しもあるが、ゲームによって加わろうとするのは、世界広しといえど、米光さんくらいのものだろう。紙切れに、現在のゲームと同じような「お題」を5個くらい記して、すぐにみんなでやってみることに。

「結構盛り上がったんですよ。これはゲームとしていけるなと手応えを感じましたね。で、その後、毎回、参加しているゲームマーケットで、インディーズ版を出品したんです」

ゲームマーケットというのは、東京ビッグサイトで年2回行われるゲームの祭典。プロからアマチュアまで、メジャーからインディーズまで、ありとあらゆるゲームが一堂に会するビッグイベントである。この出品が、ターニングポイントとなった。

「カード化して作ってたんですが、もたもたしてたら印刷の納期が間に合わなくなりそうで、じゃあどうしよう、ってんで見つけたのが、11枚綴りのコーヒーチケット印刷。ミシン目で切り取るアレです(笑)。こっちのほうが持ち運びも便利だってことで、そこにフォーマットを合わせよう、ってことでできたのが、インディーズ版なんです」

見た目は、まるっきりのコーヒーチケットなのだが、これが、今日、老若男女を熱狂させるゲームになるのだから、世の中はわからないものである。

米光一成/Kazunari Yonemitsu
1964年広島県生まれ。大学卒業後、コンパイルに入社。現在でも人気の“落ちゲー”「ぷよぷよ」などのタイトルをリリース。その後、フリーランスとして、ゲーム制作ほか、デジタルハリウッド大学教授や、池袋コミュニティカレッジ講師なども。「はぁって言うゲーム」(幻冬舎)のほか、「あいうえバトル」「負けるな一茶」「いっしゅんジェスチャーはぁ?」「言いまちがい人狼」などをリリース。

人々との出会いによって、より大きなストーリーに

きっかけは、米光さんが仲間の輪に入れなかった「あ、さみしっ!」という感情だったが、広まったのには、ふたりの人物が大きく影響する。

まずは、プロデューサーの白坂翔さん。彼は、ゲームカフェ「ジェリー ジェリー カフェ」のオーナーであり、ゲームプロデューサーとしての顔をもつ実業家。2017年のゲームマーケットでいち早く目をつけたのが、この白坂さんなのだ。

「白坂さんは、それ以来お付き合いさせていただいているんですが、とにかく動きが速い人。それまでは、お名前くらいしか聞いたことなくて、1ミリも面識はなかったのですが、『米光さん、これ面白いです。すぐ商業化しましょう』といって、ぱぱーってパッケージ版のプロトタイプを作ってきてしまったんです。『はや!』って(笑)。

その試作品が、なんとコーヒーチケット版を作る前に作ったカード版と構造が非常に近かった。。。

いや、実際驚きましたよ。その試作品を見て、完全に信頼できる! ゲームを知っている人なんだ!って」

以降、信頼できるパートナーとして、タッグを組むことになった。その際に、白坂さんのゲームカフェ「ジェリー ジェリー カフェ」で取り扱うバージョンとして「ベストアクト」のタイトルで最初に世に出たわけだ。

「白坂さんは、『人に興味ないでしょ』とか、失礼なことを言ってくるんですが(笑)、そりゃ、彼に比べたら社交性は低いですよ」

と、米光さんが前置きするのは、現在の幻冬舎版への道筋を作ってくれたのも、この白坂さんだからなのだ。結果、もうひとりのヒットの大立者と言える、編集者・佐藤有希さんの手によって「ベストアクト」は、「はぁって言うゲーム」として、大々的にリリースされた。

ゲームフリークが集う場ではスタイリッシュに「ベストアクト」、そして、一般層には、おもしろおかしい「はぁって言うゲーム」に。2つのチャンネルをもつことで、幅広い層に浸透していったのだ。

「『はぁって言うゲーム』って言うゲームです、って説明しないといけない変なタイトルで、でも、そういう部分もまたコミュニケーションとしていいなって思っているんです」

白坂さんをして「天才」と言わしめる、根っからのゲームメーカー、米光さん。ここで紹介した彼の魅力は、ほんの一端にすぎないが、あの名作「ぷよぷよ」をも生み出したヒットメーカーたる思考回路に次回は迫っていきたい。※2回目に続く

米光一成インタビューはコチラ
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ぷよぷよ大作戦

TEXT=高村将司

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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