史上最多優勝回数を誇る、元横綱・白鵬関の断髪式に参加した森田恭通氏。プライベートで親交のある白鵬関、改め宮城野親方の人となりを日頃から尊敬し、ネクストステージには期待しかないと語る。そんな森田氏のセカンドステージにも動きが!?。デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である」Vol.34。【過去の連載記事】
極めた男が見据える、ネクストステージとは
2021年に引退した第69代横綱・白鵬(現・宮城野親方)の引退相撲の断髪式に参加しました。白鵬関を紹介してくれたのは、ギタリストの布袋寅泰さん。大の相撲好きの布袋さんと京都の知人が白鵬関の後援をしていた御縁もあり、たまにご飯を食べる仲となりました。
彼は若くして博学な人。特に歴史の話が始まると止まりません。チンギス・ハーンが国を統一した生き様を心から尊敬し、自分も相撲の世界で同じことを目指したい。つまり相撲を世界中にもっと広めたい、注目させたいという夢を、キラキラ瞳を輝かせながら語ってくれます。
どんな世界でもトップランナーは孤独です。並大抵の精神力では務まりません。なぜならその世界を登り詰めた後、自分の前を走る人がいなくなるからです。
彼は相撲の基本を重んじており、若い頃から努力してきた人でもあります。モンゴルから15歳で来日した当時、体重は62㎏しかなく、とにかく食べて稽古して、食べて稽古して、あそこまで身体を造っていったと聞き、その努力と苦労は想像だにすることができないものでしょう。そしてその積み重ねた基礎があるからこそ、かぶく、いわゆる型を崩して自分を出せるとも聞きました。
性格はとても穏やかで懐が深く愛情溢れる人。その裏に強さも感じます。頭の回転が早いにも関わらず思いつきでは話さず、ひとつひとつの発言に堂々たるものがあり、引き出しもたくさんお持ちです。お国柄でしょうか、お酒は楽しくよく飲まれますね(笑)。
もともと彼のお父さんがモンゴルの伝統格闘技の日本でいう、横綱だった人。国民的英雄であり、その息子として生まれた瞬間から、彼はプレッシャーのなかで生き続けてきたのでしょう。今はさまざまな緊張から解き放たれ、相撲界をもっと世界にPRするという新たな使命にも燃えています。
彼のネクストステージはこれから始まりますが、僕もそれが楽しみで仕方ありません。目指していた世界で頂点を極めた後、ネクストステージで成功する人は共通して、さまざまな葛藤や困難、自身の恐怖心より未来への期待が勝るからこそ、新しいステージで力を発揮できるのだと僕は思います。
白鵬関のネクストステージとは少し異なりますが、布袋さんもBOØWY、ソロ活動、そしてロンドンで世界進出と新たなステージを爆進中。GMOインターネットグループの熊谷(正寿)さんも先日新しい試みとしてGMOソニック2023を大成功させました。おふたりとも白鵬関とは異なった表現で、世界に向け、日本を発信しています。
僕はデザイナーとは別のステージとして写真に挑戦しているのですが、世界中が動き出している今、2023年10月にはパリと東京・銀座で久しぶりに大きな個展を開く予定です。パリでは、ライフワークでもある伊勢神宮の写真を、銀座ではここ数年フランスに通って撮っていた、フランスの象徴ともいわれる場所の作品を発表する予定です。
現状に満足せず、ゼロから再び違うステージに挑戦する。僕も一生涯チャレンジし続ける姿勢で生きていきたい。白鵬関の髷(まげ)に鋏(はさみ)を入れながら、新たにそう誓いました。
Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍する傍ら、2015年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」を主宰。