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2023.01.26

長友佑都に学ぶ。モヤモヤする心をなくす4つの心得【まとめ】

日本サッカー史上初めて4大会連続ワールドカップ出場を果たした長友佑都。凄まじい重圧がのしかかるなか、大会期間中は「ブラボー」など数々の名言を残し、チームの士気を上げてきた。そんな長友のメンタルタフネスの極意を著書『[メンタルモンスター]になる』より一部抜粋してお届けする。※2022年11月掲載記事を再編。

長友佑都

1.「固い」メンタルは折れやすい。持つべきは「しなやかで柔らかい心」

ブラジルワールドカップ終了後の2014-2015シーズンのことだ。

このとき、メンタルの状態を保つことがどれだけ大事であるか、もっと言えば、メンタルこそすべてである、ということを学んだ。

圭佑らとともに「ワールドカップ優勝」を口にし、本気でそれを狙える位置にいると思っていた。なのに僕らは、優勝はおろか1勝もできず、ワールドカップを去った。

敗退した瞬間に受けた悔しさは形容しがたいものがあったけれど、もっとも苦しかったのはそれ以降、シーズンを通して、どんな手を使ってもモチベーションを上げることができない時間だった。

人生で初めてサッカーをすることが嫌になり、練習にすら行きたくなかった。いつももやもやしている、そんな感覚があった。

びっくりすることに、こうやってメンタル的に気持ちが乗らないと、体にも影響が出てくる。

ワールドカップ終了後のシーズン、前シーズンのプレーが評価されて、副キャプテンに指名されていたのだけど、僕は次々とケガに襲われてその役目を果たすどころか、プレーをすることもできなかったのだ。

自信を取り戻すためにも重要だったシーズンは、そのスタートから雲行きが怪しかった。

開幕戦はスタメン落ちしたものの、次節にはスターティングラインナップに戻った。だけど、プレーを初めてすぐに左足に違和感を覚える。太ももに張りがある。何とかプレーを続けていたけれど、後半17分に自ら交代を申し出た。

次戦はフル出場、翌戦は控え。迎えた5節のカリアリ戦は大きな転機だった。

キャプテンマークを付けて出場したこの試合、僕は前半27分に退場処分を受けた。25分にイエロー1枚、その2分後にもう一度……。

チームに申し訳ない……。

この後、日本代表に戻りジャマイカ代表やブラジル代表とテストマッチを行っていた。ブラジル戦は欠場したが、ジャマイカ戦でのパフォーマンスも手ごたえを感じられるものではなかった。

インテルに戻ると、慕っていたマッツァーリ監督が解任された。僕自身もふくらはぎの張りがどうしても引かず、4試合連続でベンチ外となった。

極めつきは、11月の頭に罹ったインフルエンザだった。

コンディション不良、退場、その後にまたケガをし、今度はインフルエンザ……。

すべてはあのワールドカップの失意から始まっていた。それまでたぎっていた大きな存在への思いを取り戻すことができない。メンタルが上がってこないことで、フィジカルや技術にも影響が出ていた。

何とかしたいと思い、自分自身に何度も言い聞かせていた。

「こんなことでいいのか? お前はそんなものか? もっと強くなれよ……」

メンタルが弱っている。強くあらねば。自分に打ち勝て――。

思えば思うほど、体中が力んでいく。

そのときは気付けなかった。僕の心は「カッチカチ」に固まっていたのだ。強いメンタルを取り戻そう、強くしなければいけないと思い続け、無理やり固めていたのだ。

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2.批判やミスの中に、成長のチャンスがある

ミスをしてしまう未熟な自分をより成長させるためのエネルギー。それは、素直な思いを吐露したときに、返ってくる賛否の声だ。

ときにはそれが厳しい批判であったとしても……いや、批判だからこそ、かもしれない。

勝利を願ってくれたサポーターの厳しい声を真摯に受け止めつつ、反骨心のエネルギーにする。実際、賛否の中に「HOW」のヒントが隠れていたりもする。

日本代表で「長友不要論」が話題になっていたとき、僕は積極的にYahoo! ニュースにある自分の記事の「コメント欄」を見ていた。

相当な書かれようだったけど、「なるほどな」とか「よく見えているな」と思う言葉もあった。

僕はあえてそれを「拾い」にいって、自分の財産にしようと思ったのだ。

逆に気を付けなければいけないのは賞賛だ。

褒められるとうれしいし、気分がいい。でも、それを成長させてくれるもの、として捉えたり、批判を受け止められなくなると、独善的になってしまう。

自分は正しい、あいつらはわかっていない――。

批判やミスの中に、成長のチャンスがある。それは僕の信念だ。

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3.困難に陥った時は、「シーン」と「ストーリー」で自分の人生を捉える

どうしようもないこと、きついことも、時間軸で考え直せば、打破するきっかけになる。その時間軸が「シーン」と「ストーリー」である。

人生には、「今はわからなくても、後々わかるようになること」がある。

シーンは、目の前に起きていること、直面している現実だ。どうしようもないこと、苦しいことそのものと言っていい。

そのシーンの連続していったものが「ストーリー」となる。苦しいことはどうやって起きたか、その先にどうなっていくのか。

歳を重ねるにつれ、自分の頭の中でストーリーを描く力が、どんどん上達していった。

「こういうことが起きれば、こうなるな」というものが見えてくるのだ。

だから目の前に起きている大変なシーン、これまでさんざん語ってきた「批判」も「こうすれば好転する」「ああやってしまえば悪化する」といったように、長い時間軸で、ストーリーで考えるクセがつくようになった。

その考え方は、僕に前進する勇気をくれた。

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4.注目されること、プレッシャーがあること、そしてそこで自身が活躍することで人に光を当てられること

仲間とは、自分が苦しいときに支えてくれた存在だ。これまでの僕を支えてきてくれた人たち、家族はもちろん、トレーナーや所属チームのスタッフ、友人、仕事仲間。

僕がいいプレーをすることで、その仲間たちにスポットライトが当たる。いや、僕が輝くことができれば「当てる」ことができる。そして、仲間が喜んでくれる姿を見るときほど、幸せを感じる瞬間はない。

「仲間」の幸せは、自分の喜びや達成感に勝る最大の僕の幸せなのだ。

注目されること、プレッシャーがあること、そしてそこで自身が活躍することで人に光を当てられること。この三つが揃っていたのが、「ワールドカップ」で、僕の「人生を変える経験」となった。

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長友佑都/Yuto Nagatomo
1986年9月12日生まれ。明治大学在学中の2006年に選出された全日本大学選抜にて注目を集め、プロ1年目となる'08年にはFC東京でJリーグ優秀選手賞と優秀新人賞をダブル受賞。'10年6月南アフリカで開催されたFIFAワールドカップ大会後、7月からイタリア1部リーグ(セリエA)のチェゼーナに移籍。その後'11年1月、ミラノに本拠地を置くインテル・ミラノへの移籍が決まり、日本だけでなく世界のサッカーファンに衝撃を与える。'18年にロシアで開催されたワールドカップでは、3大会連続となる日本代表メンバーに選出され、全4試合にフル出場し、チームの決勝トーナメント進出に貢献。その後、ガラタサライやオリンピック・マルセイユといった世界的名門クラブを渡り歩いた後、'21年、FC東京に復帰。

長友佑都 新刊・「メンタルモンスター」になる。

「メンタルモンスター」になる。
¥1,650/幻冬舎
予選・本戦を含めた苦闘の歴史と舞台裏。さらに、35歳でトップレベルを維持し続けている秘訣、批判を肥やしにしてエネルギーに変えるメンタルコントロール術など、激動のサッカー人生を振り返る、集大成の一冊!

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=JFA/アフロ

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