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2022.08.06

「かっこいいパパでいたい」武藤嘉紀にとって日本代表とは? 家族の存在とは?

三好康児武藤嘉紀、柴崎岳、中島翔哉……。己の成長、その先にある目標を目指して挑戦し続けるフットボーラーたちに独占インタビュー。さらなる飛躍を誰もが期待してしまう彼らの思考に迫る。2人目は、昨年、6年ぶりにJ1に復帰したヴィッセル神戸FW・武藤嘉紀。4回目。

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自分を高めてくれるもの

インタビューをするのはFC東京時代以来だから、7年ぶりのことだった。爽やかな笑顔も、丁寧な語り口も、時おり覗かせる熱さも以前と変わりなかったが、ひとつだけ気になることがあった。

左手にはめている時計の存在である。

インタビューもひと段落ついたとき、話題を振ってみた。

素敵な時計ですね――。

すると、武藤嘉紀はちょっと照れ臭そうに答えた。

「僕、時計がすごく好きで。ドイツに行った頃、日本を代表するトップ・オブ・トップのサッカー選手に『嘉紀、節目節目で時計を買っておくといいぞ』って言われて。資産になるから浪費ではないと。そこから、時計にどんどんのめり込んでいったんです」

この日、武藤が身に付けていたのは、リシャール・ミル。スイスの高級腕時計で、F1ドライバーのフェリペ・マッサやプロテニスプレーヤーのラファエル・ナダルらがアンバサダーとなっていることでも知られる。

「去年、日本に帰国したタイミングで、これを身に付ける機会に恵まれました。今回は節目というよりご縁かな。父と母の教えなんですけど、僕は縁というものを大事にしているので」

もっとも、武藤にとっての時計は、趣味や実用性、資産価値以上の意味を持つ。

「自分を高めてくれるものなんですよね。正直、このリシャール・ミルが自分の身の丈に合っているかと言ったら、合ってない。だからこそ、この時計に相応しい自分になるぞ、という気持ちがモチベーションになる。刺激を与えてくれるものなんです」

少し背伸びをすることで、自身の成長が促される、というわけだ。

武藤が身に付ける、リシャール・ミルの腕時計。

武藤が今、見据えていること

ドイツに移籍した年に結婚し、現在は6歳と3歳の娘、1歳の息子がいる。家族の存在がモチベーションを高めてくれるようになったのは、意外にも最近のことだという。

「実は、以前は子どものためにプレーするというマインドがなかったんですよ。サッカーはサッカー、家族は家族という感じで。ただ、長女も次女も父親がサッカー選手だと分かる年齢になってきた。彼女たちがテレビの前で応援している動画を妻が送ってくれて、その様子を見て、子どもたちのためにも頑張らないといけないなって。やっぱり、かっこいいパパでいたいじゃないですか」

今は家族が東京で暮らしているため、月に1回会えるかどうか。ビデオ電話で毎日、子どもと話すことが至福の時間だという武藤が、子育てにおいて大事にしていることは何か。

「勉強も、スポーツも、自分でやると決めたなら、全力でやってほしいですね。子どもたちが『やりたい』と言ったことは、やらせています。何が本当に好きで、何に向いているかは、やってみないと分からないじゃないですか。だから、スイミングやチア、体操にも通って。いろんなことを経験して、最終的に選ぶのは子どもたち。最大限にサポートはするけど、そこからは口出ししません。脱線しそうになっても、自分で戻れる子供に育ってくれれば。ただ、『中途半端にやるなら、やめたほうがいいよ』とは伝えています」

まさに武藤自身が、勉強とスポーツの両方に本気で取り組み、慶應義塾大学への進学と、FC東京でのプロ入りを実現させた。その過程で大事にしてきたのは、手の届きそうな目標を立てることだ。

「僕はあまり先の目標は作らなくて、1年、1年を本気でやっていく。どうやったら成長できるのか、そこにたどり着けるのかを考えて、コツコツやっていくタイプ」

そんな武藤が今、見据えるのは、ヴィッセル神戸をアジアナンバーワンのクラブにすることと、カタール・ワールドカップに出場することだ。8月にはAFCチャンピオンズリーグのノックアウトスタージが控え、11月末にはいよいよワールドカップが開幕する。

「ACLで活躍するというのも、僕が日本に帰ってきた理由のひとつ。『自分がチームを変えるんだ、助けるんだ』と自分にプレッシャーをかけて臨みたいと思っています」

2019年1月のアジアカップに出場してから、今年1月の千葉キャンプで代表復帰を果たすまで約3年間、日本代表から離れていた。アジア最終予選のピッチに立たずにワールドカップのメンバーに入ることが極めて困難なのは、百も承知だ。

しかし、だからと言って、諦める理由にはならない。

「日の丸を背負うことって特別なものですよね。1ゴールで自分の置かれている状況がガラッと変わる世界だから、自分でチャンスを引き寄せるしかない。ワールドカップが近くなってきて思うのは、もっと日本代表でいることにこだわっていきたかった、ということ。ニューカッスルでは試合に出られなかったから、日本代表に選ばれないのもしょうがないという気持ちがあった。実際にそうなんですけど、日本代表であることに貪欲になれなかった自分が過去にいた。だからこそ、日本代表への復帰にも飢えています」

4年前のロシア・ワールドカップではポーランドとの第3戦で先発したもののゴールを奪えず、チームも0-1で敗れた。

だが、それからの4年間、やみくもに自身を追い込むのではなく、新しい体作りに取り組んできた武藤には、今ならやれる、との思いが渦巻いている。

「ワールドカップは、出られるものなら何回も出たいですよね。ロシアでは、やっぱり力が入りすぎていた。ポーランド戦に出場しましたけど、力が抜けていれば点は取れていたと思う。ハートを燃やしながらも、クールでいられるかどうか。その重要性はこの4年間で理解しています。ワールドカップでゴールを決めたら、すべてが変わると思うし、これまでの苦労も報われる。自分の人生もまた変わると思う。やり続けるしかないですね」

ヴィッセル神戸での活躍が認められ、7月下旬に開催された東アジア4か国によるE-1サッカー選手権のメンバーに選ばれたものの、大会直前の試合で負傷し、辞退を余儀なくされた。9月にはワールドカップ前、最後の強化試合となるヨーロッパ遠征が控えている。この遠征メンバーに入り、ラストチャンスを引き寄せる覚悟だ。

武藤嘉紀のインタビューはこちら

元川崎・三好康児の独占インタビューはこちら

Yoshinori Muto
1992年生まれ。慶應義塾大学2年時からFC東京の特別指定選手となり、大学3年時にJリーグデビュー。2014年、FC東京に正式加入。新人最多タイ記録の13ゴールを記録、Jリーグベストイレブンに。’14年、日本代表デビュー。’15年ドイツのマインツに移籍。その後、ニューカッスル、エイバルへ。’21年にJ1神戸に加入。2018年ロシアW杯メンバー。日本代表出場数29。

TEXT=飯尾篤史

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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