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2022.08.04

ブレイクダンスで46度の国際タイトル獲得! 20歳・シゲキックスを知っているか

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。今回は20歳という若さで46度も世界一に輝いているShigekix(シゲキックス)こと半井重幸(なからい しげゆき)に注目する。

Shigekix(シゲキックス)こと半井重幸(なからい しげゆき)

写真:アフロスポーツ

根っからのストリート育ち。「世界的なムーブメントを起こしたい」

2024年7月26日のパリ五輪開幕まで2年を切った。新種目のブレイクダンスで金メダル候補のShigekixこと半井重幸(20歳・TEAM G-SHOCK、Red Bull BC One All Stars)は、金メダル以上の成果を求め、ダンスで世界的ムーブメントを起こす青写真を描く。

「音楽を感じること、踊ることが心の底から好きで、非日常的な瞬間がたまらない。どんな大会でもやるからには優勝を目指すのは変わらない。五輪はブレイキンを多くの人に知ってもらうチャンス。ダンスで世界的なムーブメントを起こしたい」

2020年に世界最高峰の大会「Red Bull BC One World Final」を史上最年少の18歳で制するなど、獲得した国際タイトルは通算46個に上る。7歳でブレイクダンスを始め、11歳で世界大会に初挑戦。キッズ部門で無敵の存在となり、13歳で一般の部で初優勝を果たした。

原点は「ストリートダンスの聖地」とされるOCAT(大阪市浪速区)地下1階のポンテ広場。18歳で東京に拠点を移すまで、聖地で踊るのが日課だった。小学2年の頃から学生や社会人に交ざり、姉で同じくダンサーの彩弥(AYANE)とともに午後9時~12時頃までダンスに没頭。家から車で片道約40分の道のりを毎日両親に送ってもらい、どんな音楽にも対応できるミュージカリティー(音楽性)を磨いた。

「僕は根っからのストリート育ち。ポンテ広場では日本に旅行に来た外国人が踊ったりもしていた。そこでいろいろな人に出会い、教わり、感じとり、自分のスタイルを磨いた。同じ人が同じ端末でかける音楽には偏りがあるが、広場でかかる曲はランダム。それに合わせて踊ることを小さい頃から楽しんでいた」

パリ五輪の新種目「ブレイキン」

ブレイクダンスの本来の名称はブレイキン。1対1、またはチームで音楽に乗せてアクロバチックなダンスを披露し合い、技術や創造性を競う採点競技だ。1970年代に米ニューヨークでギャングの抗争を暴力ではなく踊りで平和的に対決するようになったことが起源とされる。

試合ではディスクジョッキー(DJ)が流すヒップホップ調の音楽に即興で踊りを合わせる。ラウンド(ダンサーが交互に踊り合う回数)はイベントによって異なるが、2~4ラウンドで行うことが多い。1回に踊る時間は自由だが、通常は30秒から最大でも1分以内だ。

基本技は(1)立って踊る「トップロック」、(2)かがんだ状態で足技を繰り出す「フットワーク」、(3)頭や肩など全身を使って回ったり跳ねたりする「パワームーブ」、(4)ピタッと止まる「フリーズ」の4要素。技の難易度、構成、音との調和、独創性などをジャッジされる。

パリ五輪では1対1を採用。出場枠は男女各16人で、各国・地域から最大2人。’23年9月の世界選手権の優勝者が出場内定1号となり、5枠は大陸別の大会、残りはIOC(国際オリンピック委員会)が導入する予選シリーズなどで決める。

半井は1日平均3時間以上に及ぶ練習を行う。身長1m66、体重58kgの鍛え抜かれた体は体脂肪率7%。

「僕が1回に踊る時間は平均で40秒ちょっと。世界的に見ると長く踊れている方で、スタミナを評価されることも多い。この40秒を1秒も無駄にしない、いかに非の打ちどころのないものにするかが勝負。人それぞれの見せ方、スタイルがあり、正解はない。一つの軸ではなく、人それぞれが持ってきた軸をぶつけ合うのが魅力ですね」と半井は言う。

ダンサーネームのShigekixは名前の重幸(しげゆき)から派生しUHA味覚糖の商品に由来。ダンスを始めてすぐにポンテ広場で知り合った先輩に名付けられた。世界大会に出始めた小学高学年の頃にUHA味覚糖に名前の使用許可をもらい、'20年の世界大会優勝後からは同社アンバサダーとして広告やCMにも出演する。

パリ五輪のブレイクダンス会場はパリ中心部セーヌ川北岸のコンコルド広場。半井は昨年12月の世界選手権パリ大会後に五輪会場に足を運び、気持ちをたかぶらせた。

「ブレイキンはスポーツよりもアートに近く、自由に自己表現できる。何にも押さえつけられず、自分の感じたことをダンスでアウトプットできる。五輪ではこれまでの経験や思い、その瞬間に感じるものを表現して、何かが生まれると思う」

絵を描くことが趣味で、個展のオファーが来るほどの腕前。芸術の都でアーティステックなダンスを披露した先に黄金の輝きが待っている。

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連載
連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

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