2022年5月27日(金)より公開された映画『20歳のソウル』で主演を務める神尾楓珠。実在した人物を演じることは初めての挑戦だったという。表現者としてのあり方や仕事との向き合い方などを改めて聞いた。
「本気で向き合えるものがある人は強い」
20歳で夭折(ようせつ)した浅野大義さんが、最期の瞬間まで音楽と向き合う姿を描いた映画『20歳のソウル』。浅野さんを演じた神尾楓珠にとって、実在した人物の人生を生きることは初めての挑戦だった。
「大義君を知っている人たちが持っているイメージに反することはしてはいけないというプレッシャーが大きかったです。撮影中は、大義君から『頑張れ!』と背中を押してもらう感覚が常にありました」
神尾の熱演により、闘病シーンではスクリーンから死の匂いが伝わってくるほどだ。
「今回は高校、大学、闘病という流れで撮ったので、闘病シーンでは、自分のなかに残っている高校パートの楽しかった記憶を鮮明に思いだしながら、気持ちで演じることができました」
自分より若くして亡くなった青年を演じたことで、「一日一日をちゃんと生ききらなきゃいけない」と痛感したという。その言葉に噓はないようで、「今は、今日と明日のことしか考えてないです」と笑う。
「自分の状況や先の目標はあまり考えないようにしています。考え始めるといろんなことを考えすぎて何もできなくなる性格なので。生きていられるだけで十分。物にも執着しないので、欲はないほうかもしれません」
サッカーを高校1年で断念し、単なる興味本位で芸能事務所のオーディションを受けた時は、役者がどういう仕事なのかもわからなかったという。
「もし高3までサッカーをやっていたら、普通に大学に行って就職していたと思うので、あの時に辞めてよかったと思います。高1じゃなかったら、芸能活動にチャレンジしていなかったと思うので」
陰のある端正な顔立ちについ目を奪われてしまうが、ミニマムな芝居で感情を表現する演技力はこの世代で随一だ。
「普通に生きているなかで出る感情って、そんなに多くないと思うんです。自分は特に出ないほうなので、毎回それを引っ張りだすのが大変ですが、それがこの仕事の魅力でもあります」
目標も欲もないと言うが、『20歳のソウル』で好きな台詞として「命よりも大切なものが俺にはあるんだ」を挙げるところに、静かな熱が溢れている。
Fuju Kamio
1999年生まれ。2015年、俳優デビュー。主演作に映画『彼女が好きなものは』(ʼ21年)、『親密な他人』(ʼ22年)、ドラマ『顔だけ先生』などがある。主演映画『恋は光』が'22年6月17日に公開予定。
『20歳のソウル』
スポーツの名門校・市立船橋高校に受け継がれる応援曲「市船soul」にまつわる実話を映画化。同校吹奏楽部の浅野大義さん(神尾楓珠)は在学中に同曲を作曲。顧問の高橋健一先生(佐藤浩市)のような音楽教師になるために大学に進学するが、身体ががんに侵されていることを知り……。
原作:中井由梨子『20歳のソウル』(幻冬舎文庫)
出演:神尾楓珠、尾野真千子、福本莉子、佐野晶哉(Aぇ! group/関西ジャニーズ Jr.)、佐藤浩市ほか
2022年5月27日(金)全国公開