毎度お騒がせしております。キングコング西野です。今回の記事は、毎朝voicyという音声メディアで配信している「#西野さんの朝礼」でお話したことから、編集して紹介させていただきます。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ)
今日は、『転職を繰り返しているうちに見えてくるもの』というテーマでお話ししたいと思います。
【連載「革命のファンファーレ2~現代の労働と報酬」】
第34回 「上手くいき始めた瞬間から、衰退が始まっている」という感覚を持っていないと、ヤバイ!
「その業界ってアツイの?」という下調べは、無駄
自分の転職履歴を紹介してから話を始めた方が、説得力が出そうなので、まずは、「成功」と「失敗」、そしてそれらの度合いは無視して、駆け足で僕のキャリアをお伝えすると……
「舞台芸人」としてスタートを切って、「テレビタレント」になり、そのあと、「絵本作家」になり、ビジネス書を書いたり、オンラインサロンを運営して調子に乗りながら、「映画」や「ミュージカル」や「歌舞伎」を作る人になって、今に至ります。
羨ましがられることもあれば、妬まれることもあれば、笑われることもあるので、僕は、まぁまぁヨロシクやってますが、他の人が、この生活を「幸せ」と呼ぶか、「不幸せ」と呼ぶか…そのあたりはよく知りません。
が、今日は、そのあたりの「恩恵」や「痛み」めいたものは一旦無視して、「転職しまくってたら何が見えてくるの?」という一本に絞って、お話しします。
まず、転職の際によく話題にあがる「今、その業界って、アツイの?」みたいな下調べって、ほぼ無駄だなというのが僕の印象です。
というのも、まずは、転職を考える際、自分の中で、「あきらかな斜陽産業」は、無意識のうちに候補から外している……というのがある。
「明らかな斜陽産業には人はトキめかない」という言い方の方が正しいのかも。
つまり、2022年に「電話ボックス、作りてぇ〜!」と考える人、いないと思うんですよね。
とすれば、候補として残るのは、「成長産業」か「まあまあ斜陽産業」。
「まあまあ斜陽産業」は、たしかに、まあまあ斜陽産業ではあるのですが、その代わりに、「才能がいなくて、伝統がある」というメリットがある。
要するに、「格式高い大会で優勝しやすい」というメリットですね。
そして、「格式の王者グローバル」はワンチャンあります。
アンチコミュニティーに属すのは厳しいゲーム
一方で、「成長産業」は、成長産業であるかわりに、「才能が渋滞している」という事実はある。
「勝ったら取り分は大きいけど、勝ちにくい」という感じですね。
こうなってくると、もはや、どちらを選ぶのも正解で、じゃあ、あとは何を基準に選べばいいかというと、自分の気持ちが動いたか否か、しかないんですね。
そこで僕は、「トキめいた方が正解」というアホみたいな結論にしています。
昔と違って、マネタイズの手段も増えたし、職業の掛け算先も増えた。
なので「キチンとマーケティングの知識を持ち合わせた上で、トキメキさえすれば、食うコトには困らない」という感じです。
厳密には「食うコトには困らないラインまでは持っていける」という感じです。
ただ、食うコトには困らないラインまで持っていくには、条件が2つぐらいあると思っていて、そのうちの一つが、「アンチコミュニティーに属さない」です。
誰かを攻撃することが「飯ウマ」になっているコミュニティーは、自分(私)の成功を「抜けがけ」としてカウントしてしまうのと、なにより、支援の文化(ノリ)が根付いていないので、すべて自己責任の世界観になってしまう。
子育てで困っても、「子供を産んだのはオマエだろう」という感じの。
ここで暮らすのは、なかなか厳しいです。
助けがないと、時間もお金も余分に必要になってくるので、まぁまぁシビアです。
手が空いている人が手を差し伸べたり、お金が余っている人がお金を出すコミュニティーに属していた方がいいのは間違いないです。
で、そもそも、「そういった余裕がある人が、どこにいるか?」を考えた方が良いと思っていて、そもそもその人がなんで余裕があるかというと、答えは結構シンプルで、「多くの人を助けているから」です。
皆が使う(皆が助かる)商品やサービスを作っていたりする。
だから、その人に、お金が集まって、だから、その人に「人を助ける時間の余裕」が生まれる。
こういう人が、どこにいるか? を考えると、「アンチ活動に励む(そのコミュニティーに属する)」は、なかなか厳しいゲームになります。
上手く行き始めた瞬間から回収時期が始まっている
そして、もう一つ。
これは転職をしまくっていると、すごくよくわかるんですけども、「上手くいき始めた瞬間から、衰退が始まっている」という感覚を持っていないとヤバイです。
「衰退が始まっている」というより、「回収が始まっている」という感覚かも。
要するに、収穫の時期が一番、人目に触れる(世間とコンタクトをとる)ので、そこがどうしても輝いて見えちゃうんですが、当然、「刈り取ってしまえば終わり」で、終わることを見越して、翌年の苗を植えておかなきゃいけない。
これは僕自身、すごく意識しているところで、それこそ、テレビタレントの収穫時期に入った頃には、もう、絵本作家の苗は植え始めていたんです。
絵本作家として盛り上がってきた頃には、もう「映画」の根回しはしていました。
世間は「上手くいっている人」を見て、「上手くいっている」と判断するから、そことのギャップがなかなか難しいし、自分自身、最も分かりやすい「数字」というもので、成果を判断してしまいがちですが、世間から「上手くいっている」と言われている時や、数字で結果が出ている時は、「上手くいっている」ではなくて、「回収時期に入った」と考えた方が、転職のサイクルは安定すると思います。
参考になるかどうか分かりませんが、転職しまくっている中年の経験談です。
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。
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