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2022.03.04

【西野亮廣】「『クリエイティブ』というのは『マーケティング』に内包されている一要素である」これがわからない人は、ビジネスに失敗する!?──連載「革命のファンファーレ2」Vol.32

毎度お騒がせしております。キングコング西野です。(こちらは、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を加筆修正したものです)

今日は『マーケティングとセールスと、クオリティー』というテーマでお話ししたいと思います。

【連載「革命のファンファーレ2~現代の労働と報酬」】

第32回 「マーケティング」「セールス」「クオリティー」。今、自分がやっているアクションの“名前”を、正しく答えられるか?

西野亮廣

photo by @cazrowAoki

さっきまでボンヤリと考えていて、突然、ものすごくシックリきたことなので、産地直送でお届けします。

「名前をつける」という儀式

『えんとつ町のプペル』では、煙突掃除屋の少年「ルビッチ」が、ハロウィンの夜にやってきたゴミ人間に、「プペル」という名前をつけるシーンがあります。
絵本と映画とミュージカルと歌舞伎で、それぞれストーリーは違っていたりするのですが、この「名前をつけるシーン」だけは必ず入れています。

その理由を説明には、まず「名前をつけるとはどういうことか?」を共有しておく必要があります。

まわりくどい話が苦手なので、いきなり結論を言っちゃうと、「名前をつける」というのは、「生み出す」や「存在を認める」という意味(行為)です。
今、僕らの目の前には「空気」がありますが、これも「空気」という名前がなければ、僕らは「空気」を認識できません。

感情もそう。
名前がついたことによって、生まれた感情がたくさんあります。
「さみしい」という名前をつけたことによって、「きっと、今の僕の気持ちは『さみしい』なんだ」と認識するようになり、「さみしい」が大量発生した。

立場を利用した攻撃に対して「パワハラ」という名前をつけたことによって、「パワハラはダメだよね」と社会が一歩前に進みました。
「パワハラ」という名前がつく前のクリエイティブの現場は、「こんなこともできねぇやつは、死んじまえ!」という言葉は当たり前のようにあったんです。
#灰皿も頻繁に飛んでいました

「名前をつける」というのは誕生の儀式であり、「キミがココにいることを認める」ということなので、ルビッチに「プペル」という名前をつけさせました。
そんなこんなで本題です。

マーケティングとセールスとクオリティー

時代のルールが秒速で変わる現代では、素早く、しなやかに打ち手を変えていくことが求められるわけですが、その時に必要なのが「名前をつける」という作業だと思います。

というのも、「新しい打ち手」には、かならず説明責任が付いてくるからです。
「お前がやっていることはナンだ?」とゴリゴリに疑ってくる相手に説明する(納得してもらう)には、「相手が知っている情報」や、「相手が理解できる情報」を織り混ぜる必要がある。

たとえば、「作ったものを受けとるのが『お客さん』だろ!」と信じ込んでいる相手に対して、「お客さんと一緒に作っていくエンタメです」と説明しても無駄なので、このアクションに『バーベキュー型』という名前をつける。
その時、相手は、「ん? たしかに、BBQの時は、お金を払って、火をつけたり、肉を焼いたりしてるぞ。あ。それを他のエンタメでもやろうってこと?」となり理解が進みます。

『レストラン型サービス』と『バーベキュー型サービス』という名前をつけたことによって(知ったことによって)、プロジェクトの無駄はかなり省くことができるでしょう。
『人検索』や『プロセスエコノミー』という名前をつけたことによって、僕らの時代は半歩進みました。
「今、自分がやっているアクションの名前は一体、何なんだろう?」
ここを明確にすることが、ものすごーく大切です。

その上で、すでに存在している「マーケティング」と「セールス」と「クオリティー」という名前を、もう少し整理した方がいいなぁと思いました。
これは「いいから『クオリティー』を上げろっ!」と何度言っても、ついつい「売り方」に逃げてしまう人を8億人ぐらい見てきたからです。
#トホホ
8億人に伝わらないということは、間違いなく、伝え方が間違っています。
#ごめん僕が悪かった
「売り方」に逃げる人に対して、「クオリティーを上げろ」と言ったところで無駄で、もっと別の伝え方をした方がいい……そんなことを思い、今日の話になります。

僕らは「マーケティング」「セールス」「クオリティー」を今一度整理(再定義)する必要があります。
つまり…
「どのアクションに対して『マーケティング』という名前をつけているのか?」
「どのアクションに対して『セールス』という名前をつけているのか?」
という問いです。

さっき、西野亮廣エンタメ研究所で、これらを整理したところ、以下のとおりです↓

・『クオリティーを上げる』=品質を上げること
・『セールスをする』=営業をすること
・『マーケティング』=営業しなくても売れる状態を作ること

ピーター・ドラッカー(小太りの生意気なオッサン)が「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ」と言っていましたが、まさにそのままの結論なのですが……ポイントは、「営業しなくても売れる状態を作ること」と「品質を上げること」がイコールの関係になっているという点です。
つまり、『クリエイティブ(クオリティー)』と『マーケティング』を分けて考えているのが、そもそも間違いであり、『クリエイティブ』というのは『マーケティング』に内包されている一要素である…という見解です。

こう整理(再定義)すると、次の言葉が綺麗に入ってくると思います。
「キミがやっているのは『セールス』で、お客さんが求めているのは『マーケティング』だ。『セールス』は今日で卒業しろ」
…とまぁ、そんな感じです。

現場からは以上です。

西野亮廣氏ポートレイト

西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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連載
『革命のファンファーレ』から『夢と金』

猛烈な勢いで仮説・検証・実行・改善を繰り返し、多彩なプロジェクトを成功させてきた西野亮廣さん。ベストセラー『夢と金』の著者でもあり、現代の日本において、ビジネスパーソンがベンチマークすべき人物の筆頭といえる西野さんの“今”をお届けする連載。

TEXT=西野亮廣

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