「アイドル」の可能性を更新していく
16歳の時からV6のメンバーとして活動してきた三宅健が、インスタグラムに個人アカウントを開設した。まず目に飛びこんできたのは、プロフィール欄の“アイドル”という4文字だった。
「表現することが仕事なので、これからも自分の限界を決めずに舞台や映像でのお芝居やバラエティなど、いろいろなことに挑戦していきたいと思っています。そういう意味で、アイドルという肩書きがしっくりくるのかなと思い、インスタグラムのプロフィール欄に、アイドルと書きました。もちろん自分ひとりでこの道を歩いてきたわけではありません。応援してくれた方々との歴史もあります。ひとりひとりの“想い”のようなものは、今までと変わらずに、この先も大切にしていきたいです」
三宅は2月22日に幕を開けた舞台『陰陽師 生成り姫』を、座長として牽引している。稽古初日、三宅が演出の鈴木裕美に率直に物を言い、共演者の緊張が一気にほぐれた瞬間があったという。そこに、三宅のリーダーとしての流儀が垣間見える。
「場の空気を読んで、そうしたほうがいいと思ったことをやりました。緊張で張り詰めた空気は、誰かのくだけた発言や、笑いによってほぐれていくものだと思います。ただ、どうなるのかを計算していたわけではなく、嗅覚の部分が大きいです」
三宅が演じる役は、数々の俳優たちが演じてきた人気キャラクターの安倍晴明だ。頭脳明晰で冷静沈着、時に辛辣な晴明像について、演出の鈴木は記者会見で、「三宅さんのパーソナリティを役に持ちこんでいけるのではないかと話しています。ハラハラするような物言いとか(笑)」とコメントし、笑いを誘った。
「泉ピン子さんにタメ口をきいたことや、バラエティ番組で毒づく姿など、僕のパブリックイメージを含めてのコメントだと思います。僕のなかでは、そういう振る舞いはひとつのエンタテインメント。自分の素のパーソナリティではないのですが、晴明の“人であって人ではない感じ”を表す際に、役に持ちこめるということなのかもしれません」
〈奇跡の42歳〉と表現される三宅のエイジレスな身体性もまた、浮世離れした晴明にピッタリだ。本人は年齢という物差しには興味がないようだが。
「若々しさや年相応ということよりも、自分がいかに健やかでいられるかがとても大事だと思います。好きなものに囲まれることや、自分に手をかけてあげることも、大切だと思いますよね。性別問わず、きれいでいようとすることも、好感の持てることだと思います。それは自分のためでもありますし、他者のためでもありますから」
美容に関しては「保湿さえしていればいいというぐらい、保湿を重視しています」と笑う。
「あれこれ取り入れなくても、毎日最低限のことをしていればいいという考え方です。自分自身の身体が持つ力を上げる意味でも、自分に手をかけつつも、甘やかしすぎない。そのバランスが大事だなと思います」
いつしか三宅は、ジャニーズはおろか芸能界を見渡しても唯一無二の空気感を放つ異色の存在になっていた。彼がひとりの表現者として、「アイドル」の可能性をどのように更新していくのか、今後も目が離せない。
Ken Miyake
1979年7月2日生まれ、神奈川県出身。現在は『みんなの手話』(NHK Eテレ)や『三宅健のラヂオ』(Bay FM)にレギュラー出演中。近年の出演作はドラマ『黒鳥の湖』や舞台『藪原検校』など。
『陰陽師 生成り姫』
原作:夢枕 獏『陰陽師 生成り姫』(文春文庫)
脚本:マキノノゾミ
演出:鈴木裕美
出演:三宅 健、音月 桂、林 翔太、木場勝己ほか
安倍晴明と、唯一無二の親友である源博雅を中心に展開する、夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズの1編を舞台化。心の奥底に潜む鬼に蝕まれてしまった徳子姫を救うために、晴明と博雅が奮闘する。楽器の生演奏やコンテンポラリーダンスも見どころ。
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