8月13日、若き才能たち「BE:FIRST」が、世界を目指すボーイズグループとして発進した。彼らを誘ったのは、アーティストであり、プロデューサーでもあるSKY-HI。マネジメント会社BMSGを設立し、社長でありながら直接指導し若者たちを育成する。原石を強烈な輝きを放つ宝石へと磨き上げる、“SKY-HIの思考”に迫る。ゲーテ10月号の表紙を飾ってくれたSKY-HIのインタビューをまとめた本誌は完全保存版。
言語化して伝える。それが成長につながる
3次審査以降は、「立ち位置が明確なほうが、モチベーションが上がるだろうから」と、合否に加え、暫定的な順位づけも行った。なぜその順位かという理由を各自に明確に伝えて、だ。
「人は、自分の技能や個性、特徴に対して意外と無自覚。『ここが素晴らしい』とか、『これが欠けている』と、言語化して伝え、本人がそれを意識するようになれば、特性はさらに磨かれ、課題は克服しやすくなるはずです。
ただ、人が人を選ぶのは業の深いことだと常に感じていますし、この判断は本当に正しいのかと逡巡(しゅんじゅん)もします。我が身を顧みると、言えないこともありますしね。でも、埋もれている才能を発掘し、世に出そうと決めたんだから、彼らの能力を伸ばすこと以外、僕に選択の余地はない。そう腹をくくってからは、自分のことは、すっかり棚に上げられるようになりました(笑)」
第4次審査となった富士山合宿では、15人の候補者が、1ヵ月間寝食を共にし、日本屈指のボイストレーナーや振付師らの指導の下、一日中音楽とダンス漬けの日々を過ごした。その間、SKY-HIも合宿所に泊まりこみ、彼らを一番近くで見守った。
「チームに分けての審査もあったのですが、そこで一番に考えたのは、誰と誰が組めば、成長と実りがあるか。水と油だなと思う組み合わせもありましたが、そういう相手と仕事をしないといけない場面は多々あるわけです。根本的に違う相手と、どう付き合うか。その解決方法は自分で見つけないと、この先絶対厳しくなるから。まぁ、ずっと心配で、安眠できた日なんて一日もなかったんですけど(笑)」
リーダーとしての役割を果たそうと、自分を抑えて悩む候補者もいれば、コミュニケーションがうまくできず、もどかしさを抱える候補者もいる。それぞれの悩みに寄り添い、「うんうん」、「わかるよ」と話を聞いた後で、丁寧に言葉を紡ぐ。その関係性はとてもフラットだ。
「僕はオーディション主催者であり、名刺上は代表取締役だけど、別に偉いわけではありません。ネジにはネジ、ビスにはビスと、それぞれ違う役割を担っているだけで、等価値。そこは忘れたくないんですよね」
音楽を愛するという共通の想いを抱いて、集まった同志。SKY-HIが貫いているスタンスは、若者たちにも確実に伝播(でんぱ)していた。課題の克服に悩む候補者には、周りの者たちが惜しみなく手を貸す。それは、ライバルというよりも、互いに切磋琢磨し、成長を目指す仲間だ。実際、合宿中候補者からは、「このメンバーで音楽に向き合えて本当によかった」、「助けられた」という言葉が、幾度となく聞かれた。個々の能力を伸ばすだけでなく、チームとしても成長させる。これもまた、SKY-HIの育成力の賜物だろう。
「最終審査終了後、10人から、サプライズで手紙をもらいました。あれには感動しました。頭は真っ白だったけど、僕も、ひとりひとりに、まったく違う言葉をかけることもできました。それは、みんなとちゃんと向き合えた証。僕自身も、彼らによって成長させてもらったんですよね。同じ志を持ち、命の火を燃やしている時間を、彼らと共有できたことは、僕にとって誇りです」
オーディションは終わったが、これは"初めの一歩"。SKY-HIと、彼が築いたチームは、高みを目指して歩み続ける。
心を揺さぶるSKY-HIの言葉
「この人の下で働きたい!」、「理想の上司!」と話題になったSKY-HIの育成力。それを実感できる“金言”を、オーディション番組、『THE FIRST』からピックアップ。このフレーズ、この言葉がけが、Z世代の成長を促す!
「甘えることも思いやり。信頼されてると感じる」
「チームを引っ張らないと」とプレッシャーを感じ、逆に周囲から浮いてしまう候補者に、「無理にみんなの意見をまとめようとせず、イニシアティブは、経験者に渡してもいいんじゃないかな」と、アドバイス。「時には、誰かに甘えたり頼ったりしてもいい。頼られる側は信頼されているなと感じて嬉しく思うはず。甘えることも思いやりだから」。
「悩んだ時は、自分を少し甘やかしてあげる」
急速に成長する仲間たちと自分を比べ、焦り、空回りしてしまう。そんな苦悩を目にしたSKY-HIは、「目的地が決まっていないまま、たくさん走っているように見える。悩んだ時は、自分を追いこむ環境から、一度自分を逃して、甘やかし、心の栄養を携えてほしい」と。この言葉は、「追いこみ過ぎて自分を嫌いになっていた」という候補者の心を救った。
「モヤっとした時は全員で共有するのが大切」
アクの強い候補者たちを敢えて集めたグループでは、意思疎通がうまくいかず、空中分解寸前に。「誰かの話が通りづらいとか、意見を言っても弾かれてしまうというのは、絶対にあること。その時に、それを解決しようとするのではなく、今モヤッとしているよと言うだけでも、全然違ってくる」。まずは気持ちを共有することが相互理解の糸口になる。
「自分のためにチームがあるのではない」
「自分の個性や特徴を消す必要はない。けれど、自分を出すためにチームがあるのではなく、自分を出した結果チームが輝いたり、チームのクリエイティヴをよくしようとした結果、自分の個性や特徴が輝く。アーティストと作品の関係は、常にそうであってほしいと思います」。これは、仕事におけるチームの在り方にも共通しているといえそうだ。
「100%正解している人も間違っている人もいない」
個性がぶつかり合い、一体感のないチームを前に口にしたのが、この言葉。「このなかに100%正解している人も、100%間違っている人もいない。だから、揺るがない自分自身をすごく愛してあげると同時に、人も同じようにそういうものを持っていると認め、愛してあげて。そうしたら、すごい個性が共存した、素晴らしいグループになれる」。
THE FIRST最終選考メンバー
7月末時点で、10人のメンバーが選考に残った。年齢も出身も違う10人がデビューを目指し切磋琢磨する!
REIKO
愛知県出身、18歳。歌が武器。ダンス未経験ながら急成長。
RAN
熊本県出身、18歳。ダンスを始めて14年、大会での優勝歴も。
RYUHEI
愛知県出身、14歳。独特の雰囲気と歌唱力で高い評価を獲得。
JUNON
東京都出身、23歳。就職内定先を断って挑戦。高音で魅せる。
MANATO
福岡県出身、20歳。NYに約1年間音楽留学した経験を持つ。
LEO
東京都出身、22歳。歌声が魅力の、明るいムードメーカー。
SOTA
神奈川県出身、20歳。ダンスの世界大会で4度優勝の実力者。
RYOKI
愛知県出身、22歳。俳優として活動し、舞台や映画に出演。
SHOTA
東京都出身、23歳。ダンスと楽曲制作に長け、ソロで活動中。
SHUNTO
愛知県出身、17歳。SKY-HIも羨む声を持ち、ダンスも秀逸。
BMSG所属アーティスト・Novel Coreが語るSKY-HIの素顔
SKY-HIさんは社長ですが、同じ目線で話をしてくれます。
僕が体調を崩し悩んだ時も「少し休んで温泉でも行こう!」と言ってくれて、迷いなく活動を休止できました。「俺はコアをライバルだと思っているから少し休もう」と掛けてくれた言葉は、信頼されていると心から感じました。
フレンドリーだけど、とても気を遣っているし人見知りな所も。靴が好きでたくさん持っているのに、結局選ぶのは同じ靴というキュートな一面もあります(笑)。
Novel Core
2001年東京都生まれ。第12回高校生RAP選手権で優勝。音楽のみならず、さまざまなフィールドで注目をされる新鋭のアーティスト。
インタビュー前編はこちら!
※こちらのインタビューをまとめたゲーテ10月号(表紙・SKY-HI)は完全保存版です。
SKY-HI
スカイハイ/1986年千葉県生まれ。2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HI名でソロ活動も開始。’20年マネジメント/レーベルBMSGを設立。「To The First」、「me time」が配信中。