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2021.01.01

【武豊×藤田晋 特別対談】30年一流騎手と20年上場起業家が語り尽くした“勝負の神髄”とは?

デビュー3年目の20歳で初めてJRA最多勝利騎手となってから約30年。起業3年目の26歳でサイバーエージェントを上場させてから約20年。長きにわたり業界の第一線に立ち続けるという“共通項”を持つ武豊と藤田晋。武豊たっての希望で実現したふたりの勝負師による初対談、いざスタート。

武豊×藤田晋

狂人でなければ、勝負師じゃない

 初めまして。このたびは対談を受けてくださり、ありがとうございます。

藤田 お会いできて光栄です。

 いきなりなんですが、藤田さんって馬券を買われたりするのですか?

藤田 実は、昔、よく買ってたんです。12年前、有馬記念で1500万円当ててブログに書いたら新聞のニュースになって大変でした……。競馬好きで、今も重賞をたまに買ったりしています。

 それは、嬉しいですね。

藤田 勝負って、誰もが好きだと思うんです。ABEMAでも将棋や麻雀の番組は人気です。勝負は本当のリアル。ネットによって舞台裏が見えるようになって、よりリアルなものが求められている気がします。

 僕も、勝負事は気になりますし、刺激にもなる。野球もサッカーも競艇も好きですし、競輪は実際に買いに行きます。スポーツって一回切りで、同じことが二度とない面白さがある。

藤田 スポーツにはドラマが感じられますよね。駅伝も、自分の人生を重ねて見てしまいます。

 駅伝いいですね。競馬もチームで動きます。馬がいて、育てる人、調教する人、ケアする人。皆で同じ目標に向かう。自分と馬だけになるのはレース中だけ。

藤田 大きなレースともなれば競馬場に10万人が入って皆お金を賭けていて、とんでもない熱気熱狂のなかで走るんですよね。

 お金を賭けてくださっていることで成り立っていますからね。もちろん責任感はいつも感じています。

藤田 あれだけのお金が動くからこそ運営や設備が整うんですよね。だから、日本は世界に通用するレベルになる。お金が動かなければ、こうはいかない。

 実は、日本は世界一馬券が売れているんです。圧倒的です。有馬記念は、世界で最も馬券が売れるレースと言われています。だから、僕たちも満足してもらえるレースをしないといけない。仮に馬券が外れても、「いいものを見たな」と思ってもらいたいですね。

藤田 経営には有馬記念で一年が終わるみたいな区切りがあまりないんです。四半期毎の決算はありますが、常に次の事業を仕込まないといけないし、勝負所がはっきりしない。ABEMAには900億円投資していますが、勝負をかけたというより、いろんな打ち合わせや会食のなかで決めていった感じです。

 やはり経営者が自分で最後は決めるんですね。

藤田 はい。最後は自分で決めるしかないです。ただ、会社は皆でやっているので、「自分ひとりの力で勝負が決まる機会」が欲しくて、2014年に麻雀最強戦に出場したんです……(笑)。

 すごい執念(笑)。ところで、藤田さんは仕事で失敗したな、ということはありますか?

藤田 たくさんありますが、失敗と思わないようにしています。3年のスパンで見たら負けていても、10年、20年で見ればプラスになることもある。そういう時間軸で経営をとらえています。ABEMAにしても長い時間をかけて利益を出せばいいと思っていますし、仮にそうでなくても2000億円で売却できれば利益は出る。失敗して落ちこんでも仕方がないので、少し反省して、忘れることにしています。

 僕も失敗だらけですが、トータルでプラスになればよかったのかな、という考えは持ちたいと思っています。競馬の場合、レースはだいたい3分で終わってしまうんです。10万人が熱狂しても、3分後には結果が出ている。だから開き直る気持ちと、怖い気持ちと、両方ありますね。

武豊

藤田 僕は学生時代から武さんを見てますから、もうすっかり慣れていると思っていました。

 慣れてはいますが、結果はあからさまに出ますので。

藤田 僕も勝負となれば勝ちたいと思うんです。それは、生まれた時から植えつけられている本能だと思っています。ただ、それを私生活で出しすぎたら嫌われたりトラブルになったりする。レースも大会も、それが出せる合法的な場ですよね。死に物狂いで戦って勝つと、気分がいい。

 勝ちたい本能は、人間にはありますよね。約34年、毎週必ずジョッキーとして競馬をやっているけど飽きないですし。小さなレースでも勝てばすごく嬉しいし、自信になる。

藤田 小さなレースでも、やっぱり嬉しいんですね。

 もともとはそんなに勝ち気のあるほうじゃないんです。兄がふたりいて何をやっても敵わなくて、ただのおとなしい少年でした。でも、馬に乗ってみたら人より上手くできて。それがわかった時からのめりこんで楽しくなった。レースは必死で、へこむことのほうが圧倒的に多いですが、たまにいいことがあるので「よし頑張ろう」となる。その繰り返し。

藤田 僕もギラついているように見えないとよく言われますが、武さんと同じで、社長をやってみたら「これ得意なんじゃないか」とのめりこんでいったんです。麻雀も結局は勝ってる人が続けている。ゴルフも、スコアが悪いと続かない。仕事もそういうところがあると思います。得意なことをやったほうがいい。そのうえで、努力が差を作っていく。

 だから、のんびりはできないですよね。今まで仕事においてのんびりしたことはないし、させてもらえない。

藤田 ストレスがあったら、僕たちは飲んだり食べたりで発散しますけど、武さんは太れないから、これもやりづらいのでは。

 30年、体型は変わらないですね。毎週末、51キロにしないといけないけど、基本的に好きなものも食べますし、お酒も好きです。

藤田 競馬の場合、難しいのは、馬の体調も影響しますよね?

 そうですね。馬の体調でかなり結果は変わります。そもそも当たり前ですけど、馬には勝ちたいとか、勝たなきゃいけないとか、ないんです。賞金も入らないし(笑)。

藤田 何も考えないで走っている。まわりが騒いでるだけで。

 馬だって嫌な時があって、急に走らなくなったりするんです。スタート前まで調子よかったのに、ゲートに入ったら走らないとか。その逆もあります。走ってみないとわからない。

藤田 30年以上やってる武さんがわからないってすごい話(笑)。

 だから、馬券を当てる人って、どうやっているのかと(笑)。

藤田 武さんは勝てないで焦る時とか、あるんですか。

藤田晋

 何をやっても、うまくいかない、成績が出ない時もありますよ。そういう時は、あんまりジタバタしないように気をつけています。下手に動かないほうがいいのかな、と。

藤田 経営でも周囲を見ていると、うまくいかない時に慌てふためいて悪循環に陥るケースがあります。いろんなことをやろうとしてしまってうまくいかず、傷口を広げてしまう。

 悪い循環、ありますね。競馬も結果が出ると、いい馬の依頼が来るんです。そうなると、また結果を出しやすい。逆に依頼がなくなると、ますますしんどくなる。僕たちは依頼があるから、馬に乗れるわけです。

藤田 メディアも雰囲気産業ですから悪い循環に入るとますます悪くなる。だから、雰囲気には気をつけています。

 僕の場合は、まずいなと思ったら基本に立ち戻るしかないですね。しっかりトレーニングして、気持ちを整えて。

藤田 僕が競馬を買い始めた頃は、とにかくいい馬には武さんが乗っていた印象があります。

 どんな馬でも乗りますが、人気のある馬に乗っていたいな、という気持ちはありますね。一番人気で勝つのが一番いい。

藤田 喜ぶ人、多いですものね。

 仕事した、って感じがしますね(笑)。ただ、調子には乗らないように気をつけています。

藤田 自分を過大評価したり、過小評価したりしないことは大事ですよね。ちょうどニュートラルでいることが大切かな、と。

 今も友達に聞いたりしているんです。「オレ、調子に乗ってない?」って(笑)。若い頃、師匠に言われたんです。「外車には乗るな」と。国産1000㏄のクルマで仕事に行っていました。プライベートは違いましたけど(笑)。やっかみ含めて、くだらないところでマイナスにならないほうがいい。慣れもマイナスにしないよう常に楽しんでワクワクしようと心がけています。

藤田 経営もそうですね。40歳近くなった頃、何に力を入れて、何に力を抜いていいのか、わかるようになったんです。年月とともに、やるべきことや、ふさわしいことも変わっていく。それを意識しないといけないな、と。

 僕はやっぱり、フランスの凱旋門賞でいつか勝ちたいですね。日本の競馬の進歩はすごいので、チャンスは大きくなっている。その背中に乗りたい。

藤田 目標がわかりやすくて、とてもうらやましいです。

 藤田さんが馬主として凱旋門賞を目指す、というのもありますよ(笑)。

藤田 実は……興味は持っているんです。だんだん夢中になれることが減っていくなか、馬主って相当な趣味なんじゃないかと。

 僕も騎手をやめたら馬主になりたいと思っていますよ。

藤田 やはり魅力あるんですね。

 夢がありますもの。限りないですよね。では、詳しい話は今度、飲んだ時にでも(笑)。

藤田 いいですね。ぜひ!

【武豊の独占インタビューはこちら

Yutaka Take
1969年3 月15日、京都府生まれ。’79年乗馬を始め、’84年にJRAの競馬学校に入学。’87年に騎手デビューを果たし、翌年菊花賞を制しGⅠ初勝利。地方海外含め100勝以上のGⅠ制覇、史上最速・最年少(26歳4 ヵ月)で通算1000勝達成、通算4200勝達成など数々の伝説的な最多記録を持つ。2005年、ディープインパクトとのコンビで史上2例目の無敗での牡馬3冠を達成。’10年の落馬負傷により、約3年に及ぶスランプに陥るも’13年の日本ダービーをキズナで制して完全復活。50歳を迎えた’19年も昭和・平成・令和と3元号GⅠ制覇を達成。父は元ジョッキーで調教師も務めた故・武邦彦。弟は元ジョッキーで、現在は調教師を務める武幸四郎。

Susumu Fujita
1973年福井県生まれ。サイバーエージェント代表取締役。’98年、同社を創業し、2000年に東証マザーズに当時史上最年少の26歳で上場。’14年に東証一部へ市場変更。同年、麻雀最強戦で優勝して最高位を獲得。’18年には競技麻雀プロリーグ「Mリーグ」を設立し、初代チェアマンに就任。

COMPOSITION=上阪 徹

PHOTOGRAPH=小田駿一

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