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TRAVEL

2020.09.26

【中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝】茶農家の朝食から発展した“朝ラーメン”文化<静岡編⑧>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

にほんもの外伝

明け方から「朝ラーメン」を食べ歩く

旅の朝は早い。遠くの目的地を目指して5時台に出発することも珍しくないし、7時出発だと「今日はゆっくりだな」と思う。特に静岡の場合、県が東西に長いため、必然的に移動時間が長くなる。ある朝、6時台に移動していたとき、カメラマンの淺田氏が10人程度の行列を見つけた。「早朝からなんだろう?」と見てみると、行列の先にあったのはラーメン屋。調べてみると、どうやら「朝ラーメン」の名店らしい。

茶農家は早朝から作業をし、それを市場に収めるのが7時ごろ。彼らの仕事終わりの食事として、静岡の藤枝市、焼津市、島田市あたりで朝ラーメンの文化が定着しているという。普段の旅の間は、朝食はコンビニで済ませることも多い。朝ラーメン、いいじゃない。ということで後日、行列を見つけた吉田町の「ラーメン ますだや」を訪ねることにした。

これは、朝ラーメン全般にいえることなのだが、さすがに朝から脂ギトギトのラーメンはキツイ。「ますだや」の醤油ラーメンはさっぱりとした中華そば。魚介の出汁はクセがなく、朝からスルスルと喉を通っていく。悪くない。いや、むしろ好き。そこから私たちは、いつもよりもさらに早起きして、仕事前の1杯を楽しむことにした。そのなかから、いくつかを紹介したい。ちなみに中田氏にも朝ラーメンの報告をしたが、朝食の習慣がない彼には、あまり響かなかったらしい。

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朝ラーメンの文化が比較的浸透していない浜松で出合った絶品朝ラーメンが「7福神 壱」。名古屋コーチンで出汁をとったというスープのまろやかな香りに朝から食欲を刺激される。国産小麦にこだわったという麺はどこか上品。塩も醤油もさっぱりとしつつ、奥行きのある味わい。やさしいのどごしに、スープも飲み干してしまった。浜松に来たら、また朝から立ち寄りたいと思える店だった。

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もう一軒のおすすめが島田市の「めん 奏心」。グルメガイドなどでも高い評価を得ている名店で、開店時にはすでに行列ができていた。ここの人気メニューは、「煮干しそば」と「鶏そばClassic」。夏は煮干しそばを冷やしで頼めるということで、その2品をオーダーした。煮干し系のラーメンは、臭みが少し苦手なのだが、ここのはまったく臭みがなく、旨味だけが伝わってくる。玉ねぎと長ねぎだけというシンプルなトッピングも朝ラーメンにぴったり。飲むように、完食してしまった。「鶏そばClassic」は、抜群の完成度。シンプルながらも鶏の旨味がしっかり伝わってきて、麺を噛むごとにその旨味が倍増する。行列も仕方なし。その甲斐がある朝食になった。

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静岡は、漁業も農業も畜産も盛んだ。おいしいものはたくさんある。でも朝からおいしいものを求めるなら、ぜひ朝ラーメンを巡ってほしい。「早起きは三文の得」を実感できるだろう。次に静岡に来たときはぜひ中田氏も誘いたいと思う。

「に・ほ・ん・も・の」とは
中田英寿が全国を旅して出会った、日本の本物とその作り手を紹介し、多くの人に知ってもらうきっかけをつくるメディア。食・宿・伝統など日本の誇れる文化を、日本語と英語で世界中に発信している。2018年には書籍化され、この本も英語・繁体語に翻訳。さらに簡体語・タイ語版も出版される予定だ。
https://nihonmono.jp/

中田英寿
1977年生まれ。日本、ヨーロッパでサッカー選手として活躍。W杯は3大会続出場。2006年に現役引退後は、国内外の旅を続ける。2016年、日本文化のPRを手がける「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立。

COMPOSITION=川上康介

PHOTOGRAPH=淺田 創

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