新型コロナウイルスの蔓延で休止しているエンタテインメント。やがて再開するときに、どんな音楽が求められるのか。多くの人が楽しめるGood Musicとは――。あらゆるアーティストのサウンドプロデュースに携わってきた亀田誠治は、東京事変をはじめ、ライヴではバンドの一員として演奏してきた。そんな亀田が思ういいバンドとは――。
あらゆる音楽を聴いていることが大切
「いいバンドとは、僕のサウンドをつくるレコーディングをするのであれば、2019年に開催した(2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により中止)日比谷音楽祭のハウスバンドのメンバー(The Music Park Orchestra)です」
その顔ぶれは、河村“カースケ”智康(ドラムス)、佐橋佳幸(ギター)、斎藤有太(キーボード)、皆川真人(キーボード)、四家卯大(チェロ)、田島朗子(ヴァイオリン)、山本拓夫(サックス)、西村浩二(トランペット)、小田原ODY友洋(コーラス)、そしてベースは亀田自身。亀田は、どんな基準でメンバーを集めたのか。
「演奏技術の高さはもちろんですが、音楽に真摯で誠実なミュージシャンに声をかけました。腕もハートも一流だということです。フェスにはさまざまなアーティストが参加します。ロックでも、演歌でも、アニソンでも、どんな音楽でも受け入れられて、楽しんで演奏してくれるメンバーです。プロデューサーとして僕がレコーディングにかかわる音楽も多岐に渡っています。そのスタジオにも欠かせない、僕がもっとも信頼している、いわば"チーム亀田"です。彼らなしでは僕の音楽はできません。ミュージシャンのハートは、必ず音に反映されます。どんなに指がよく動くギタリストだったとしても、1音1音に気持ちがこもっていないと、録音され、CDになり、リスナーに届くプロセスでエネルギーが薄まっていきます。でも、魂のこもった音はきちんとリスナーに伝わります」
そういうすぐれたミュージシャンに共通するものはなんなのだろうか。
「音楽に愛情を持ち、しっかり練習もしていることはもちろんですが、そのうえで場数を踏んでいること、そしてリスナーとしてもあらゆる音楽を聴いていることではないでしょうか。あらゆる音楽を聴いていると、たとえばロックでも型にはまった演奏はしません。ロックとはこういうもの、という既成概念を持たずにさまざまなアイデアで演奏してくれる。佐橋さんは、山下達郎さん、坂本龍一さん、桑田佳祐さん、佐野元春さん。カースケさんは、桑田さんや吉田拓郎さんの音楽にも参加していますよね。そういう日本のトップアーティストの現場で体験した音楽を、たとえばキャリアのまだ浅いアーティストのところでも同じ気持ちで演奏してくれます」
亀田自身は演奏者としてのレベルを維持・向上するためにどんなことをおこなっているのか。
「いろいろありますが、たとえばライヴの日は、必ず会場へ向かう前に東京なら自宅、地方ならホテルの部屋で、その日の曲をすべて演奏します。リハーサルのときの演奏を途中で止めずに、本番さながらに自主練します。自分で自分にOKを出せるレベルまでさらってから本番に臨む。ライヴではバンドマスターを務めることも多いので、本番で僕に迷いがあると、メンバーがとまどいますから。僕は演奏が好きなんですよ。音楽プロデューサーとしてだけではなく“ベーシスト亀田誠治”として長くいい仕事をしたい。以前、腱鞘炎を患ってしまったことがあり、そのときは1日60本喫っていたたばこをぴたっとやめました。血行をよくするためです。楽器も、メーカーさんとともに検討に検討を重ねて500gの軽量化ができました。これで、さらに自由に演奏できると思います」
Seiji Kameda
1964年生まれ。音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに数多くのミュージシャンのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、ベーシストとして参加("12年に解散、’20年に再生を発表)。"09年、自身初の主催イベント“亀の恩返し”を日本武道館にて開催。’07年の第49回、’15年の第57回日本レコード大賞にて編曲賞を受賞。近年はJ-POP の魅力を解説する音楽教養番組『亀田音楽専門学校(Eテレ)』シリーズが人気を集めた。’19年5月、自身が実行委員長を務めるフリーイベント「日比谷音楽祭」が開催され、2日間で10万人を動員。