師匠か、恩師か、目をかける若手か、 はたまた一生のライバルか。 第28回は、かつての上司と部下。
ヤフー宮坂 学が語る、田鎖智人
決済やポイントの話になると、必ず彼がでてきましたね。ものすごい頑張り屋さんでしたが、それではダメだと言いました。上司になったら、部下に頑張ってもらうのが仕事ですから。僕自身も同じ道を通ってきていますので(笑)。その後は、しっかりトップマネジメントのための準備ができていきましたよね。
謙虚ですし、人の意見もちゃんと聞く。学習意欲も高い。だから、いろんなものをすばやく吸収していく。特に感心していたのは、彼のチームは、いろんな部署からのいろんな依頼について、簡単に「できない」とは言わなかったことでした。まずは受け止めて、一生懸命になんとかしようとしてくれていた印象が強い。
仕事はもちろん結果が重要ですが、ポジションを任せるなら、人のよさが大事。大切な部下を預けられるかな、と考えますからね。
ヤフー社長時代はなかなかできなかったけど、もう直接の部下じゃなくなったし、遊びに行ったり、ご飯を食べに行ったりしましょう。
(これよりWEB版限定テキスト)
山登りは高校時代から。当たり前に登りたくなるんですよね。冬のバックカントリーがやりたくなって、トレーニングの一環で走るようになったのが、30歳過ぎ。それこそ昔は、ランニング登山なんて呼んでたんですよ。
スノーボードもトレイルランニングも、ずっとひとりで楽しんでいましたが、走りができる人間を連れていったら、みんなハマってしまうので、彼にも声をかけてみたんです(笑)。見事に完走してくれましたね。
クルマ2、3台で前日からみんなで行って、泊まって遊んで帰ってくる。4、5回は行ったんじゃないかな。楽しかったですね。
ジャパンネット田鎖智人が語る、宮坂 学
直接の部下になったのは、ヤフーに入って7年目。突っ走って周りをグイグイ引っ張っていく強烈なリーダーでしたが、改めて知ったのは、サービスだけじゃなく組織や人材開発についてもしっかり考えていたこと。グレートマネージャーになる人は違う、と思いました。
ある時、月曜に急遽、大事なプレゼンが入ったので連絡を入れると「週末うちでやろう」と。自宅には大量の本があり、「これ、持っていきな」とある本を手渡された。マーカス・バッキンガムの『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』でした。自分に一番足りていなかった部分を、宮坂さんは見抜いていたんです。これ以降も、自分に足りないものを多く気づかせてもらえました。
社長になって大事にしているのは、みんなの仕事のベクトルをいかに揃えるか。これも宮坂さんが大事にされていたことです。ミッション、ビジョンをしっかり共有する。社員との直接のコミュニケーションは、3周目に入りました。
(これよりWEB版限定テキスト)
部下になってすぐの頃、エレベーターでばったり会うと、「走れるんだよね。10キロ走れるなら、40キロも同じだよ」と誘われたのが、北丹沢12時間山岳耐久レース。他の仲間もいて、なんとか完走しましたが、本当に辛かった(笑)。それで「過去に一番キツかったのは?」と宮坂さんに聞いたら、「ああ、このレース」とひと言(笑)。以後、トレイルランニングやフルマラソンにみんなで出かけるようになりました。
見えていなかった価値を、たくさん見せてもらって大きな刺激になりました。これからも脱皮する機会を与えてもらえるとうれしいです。
Tomohito Takusari(右)
ジャパンネット銀行代表取締役社長。1972年生まれ。大学卒業後、日本信販を経て、2003年にヤフー入社。Yahoo! ポイントや決済などを担当。’13年に決済金融本部長。’18年2月より現職。
Manabu Miyasaka(左)
ヤフー取締役会長。1967年生まれ。大学卒業後、ユー・ピー・ユーを経て’97年創業2年目のヤフーに入社。2012年4月CEO就任、6月より代表取締役社長。’18年6月より現職。