天性によるものか、それとも壮絶な努力の結果か。突出した才能で世を圧倒する才人に寄り添い、併走する右腕の才覚に迫った。
SYホールディングス
どん底を見た男を、"兼任"秘書が支える
【BOSS】中/会長
杉本宏之
1977年生まれ。不動産業界最年少で上場を果たすも民事再生。再起し、グループ会社7社、売上げ200億円の規模の企業に成長。
左/事業部兼秘書
木村優里
1984年生まれ。2016年入社。秘書歴11カ月。前職はアパレル販売員。主に杉本会長の秘書業務に従事。事業部所属。
右/人事総務部係長補佐兼秘書。
堀 友実
1988年生まれ。2013年入社。前職は化粧品販売員。秘書業務やイベント進行などを3年間務め、人事部門の責任者も担当。
COMPANY DATA
2009年設立。不動産売買、ベンチャー投資、グループ会社経営指導、賃貸経営を行う。基本理念として「会社は家であり、社員は家族である」を掲げる。
自己破産。そして有名投資家のカバン持ちから再出発
どん底を見たからこそわかることがあるのだろう。杉本宏之会長にとって、この会社は2回目の起業となる。24歳でエスグラントコーポレーションを設立。2005年には上場を果たした。しかしリーマンショックで業績が一気に悪化し、09年に民事再生。当時30歳の杉本会長は約400億円の負債を抱え、自己破産に追い込まれた。
「多くの方にご迷惑をおかけしましたが、絶対このままでは終われないと思いました。そして極限まで考え、悩み、やっぱり自分には"経営"しかないと思ったんです」
有名投資家のカバン持ちから再出発、09年にSYホールディングスを起業。数年で見事な復活を遂げた杉本会長には、再出発でのひとつの思いがあった。
「昔は、社員のことはおかまいなし。ただただ業績、数字だけを追いかけていました。でもそれではまた同じ失敗をしてしまう。今は無理に会社を成長させるつもりはありません。それよりも会社として人材、文化を醸成していきたいんです」
ふたりの秘書には、"秘書以外"の業務も与える
ふたりの秘書に秘書経験はない。杉本会長は彼女らを単なるアシスタントにせず、"秘書以外"の業務も積極的に与えてきた。
「堀は、派手っぽく見えるかもしれないけれど(笑)、頭の回転が早くリーダーシップがある。人を見る目もあるので、早い段階から人事担当もお願いし、イベントの取りまとめも任せてきました。世の中には、仕事ができても経験を積めない人がいる。そんな埋もれた人材を発掘して育てるのも、この会社の役割だと思っています」
秘書時代から会長の目の届かいないような社内の機微に通じ、人事の提案を行っていたという堀友実さん。杉本会長のアシスタントや、人事総務のキーマンとして社内を切り盛りしている。
「入社した時はパソコンも使えず、ミスばかりしていた私を辛抱強く指導してくれた会長には本当に感謝しています」
16年に入社し、堀さんとともに杉本会長を支える木村優里さんも、秘書と事業部を兼任。杉本会長は木村さんの存在の大きさをこう語る。
「木村はとにかく一緒にいて疲れない(笑)。性格がいいから癒やされる。なかなかいない人材です。僕が社員に求めるのは、第一に人柄なんです」
木村さんはいま、杉本会長を真近に見ながらさまざまなことを学んでいる。
「会長は常に20年30年先を見ています。震災復興の支援をしたり寄付をしたり、社会貢献に積極的なのも目の前の経営だけを見ていないからだと思います」
杉本会長はふたりを秘書として頼りにし、さらに会社を支える人材に育てようと考えている。そしてふたりもまた杉本会長の復活劇を側面から支えている。全力で走り続けて転んだ以前の彼に足りなかったものが、そこにあるのだろう。
技を引きだす超絶ツール
*本記事の内容は16年12月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)