師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。第1回は、アニキと慕う経営者と慕われる経営者。
寺田 振り返れば2009年、出会いは共通の知人の結婚式でしたね。仕事はどうだ、なんて話から気づけば説教されて。
似鳥 はて、そうだったかな。
寺田 本気で怒られたんですよ。今のままではダメだ、泥船の船長だ、社員がかわいそうだ......。
似鳥 泥船はいい表現だったなぁ。あの時は自然に出てきた。
寺田 ショックでしたよ。会社やってて叱られることなんてありませんから。そのうえ、勉強しに会社に来い! と言われて。
似鳥 誰にでも言うわけじゃないよ。人なつっこいところがあったから。社長には苦言を呈してくれる人はいない。間違った方向に気づけない。僕は師匠がいて、徹底的にしごかれた。そういう存在がいないのは、かわいそうだとよく思うよね。
寺田 実際、伸び悩んでいる時期でした。翌日、会社の幹部に相談したら「行かなくてもいいんじゃないか」と。あ、これではダメだ、と僕はむしろ反省したんです。叱られに行くことになるけど、敢(あ)えて行こうと。
似鳥 忙しいから、無理に会うこともなかったんだけど(笑)。
寺田 来い、と何度も言ったじゃないですか(笑)。
似鳥 最初から2時間半いたよね、タダで(笑)。1時間100万円は欲しかったなぁ(笑)。
寺田 でも、本当に愛情を感じました。ニトリの強さの秘密をすべてさらけ出してもらって。担当者まで社内から呼び出して説明してくれたり。この時もひどく叱られましたけど。
似鳥 また来られたら大変だと思って(笑)。でも、あんなに叱ったのに次も来たよね。
寺田 会社にうかがって本当に衝撃を受けたんです。椅子や机の配置に始まり、すべてに緩みがない。しかも改革するんだという空気に満ちていて。自分の足元を見つめ直しました。全国を回って1300人の全販売スタッフと面談をしたのは、ニトリの凄まじい事業へのこだわりを見せてもらったからです。
似鳥 経営は科学と論理。僕は師匠に褒(ほ)められたことはなかった。叩いて叩いて立ち上がれないくらいにするのが師匠。でも、師匠のおかげでここまで来れた。
寺田 僕はこの人についていこうと思いました。アニキなんて他の誰のことも呼ばないです。この人のためなら何でもできる。そのくらいのつもりでいようと。それこそ、この女性と結婚しろと言われたら、しますよ。
似鳥 薦められる人がいないな(笑)。
サマンサタバサジャパンリミテッド創業者 寺田和正(左)
1965年生まれ。94年、サマンサタバサジャパンリミテッド設立。華やかなデザインのバッグやジュエリーを主体に、若い女性たちから圧倒的な支持を得ている。
ニトリ 創業者 似鳥昭雄(右)
1944年生まれ。67年、似鳥家具店を創業。85年、家具のチェーンストアを志し、似鳥家具卸センター設立。経営コンサルタントの渥美俊一氏を師と仰ぐ。