日本随一を誇るトマムの雲海を楽しめるホテル「星野リゾート リゾナーレトマム」での体験を紹介する。【特集 北海道LOVE!】
気象条件が生む、奇跡の目撃者になる
夏の「星野リゾート リゾナーレトマム」の朝は早い。午前5時から多くの宿泊客がゴンドラでトマム山の山頂付近を目指すのだ。お目当ては、日本随一を誇る雲海。ゴンドラの整備スタッフにはおなじみだった絶景を宿泊客にも見てもらおう、と標高1088m地点に雲海テラスをオープンしたのが2006年。2021年には3階建ての展望デッキも備え、2022年、累計来場者が140万人に達した。
多くの人を引きつけるこの地の雲海は、発生システムの違いにより3タイプに分けられる。太平洋で発生した海霧が山を越えて流れこむ「太平洋産雲海」、地形の一番低い所に冷やされた空気がたまり発生する「トマム産雲海」、低気圧が接近することなどで発生する「悪天候型雲海」。滝のように豪快に流れるものから、静かに地表を覆うものまで表情もそれぞれ。
雲海テラス周辺ではこの景色を心ゆくまで眺めるための「Cloud9計画」が進行中で、すでに6つの展望スポットが完成している。
ただし、雲海は自然現象。見られる可能性は例年40%だ(5〜10月限定)。「見られそうもないな」と感じる朝もあるだろう。しかし、そのような日でも雲海テラスにあがることをお薦めしたい。日高山脈は美しく、空の色は刻一刻と変化。いつの間にか雲海が出現していることもある。
雲海は気圧や気温、風向きなどの偶然が重なり発生するもの。大自然の起こす奇跡の真っただ中にいることにも思いを巡らせてほしい。
リゾート×農業で生まれる循環の輪の中へ
リゾート運営が始まる前は、700頭の牛を飼育する牧場だったこの場所。敷地の一部を当時の姿に戻し、農産物を生産するというプロジェクト、「ファーム星野」が2019年から始まった。
「ファームエリア」では、牛や羊がのんびりと草を食み、放牧されている約30頭の乳牛から「トマム牛乳」を生産。敷地内で搾乳、加工しているので、翌朝にはリゾート内の飲食店に並び、チーズなどの乳製品も製造している。
現在力を入れているのは土壌の改良だ。リゾート内で出た生ごみをたい肥にして豊かな土に。その土で育った草を牛が食べ、訪れた人が乳製品を味わい、生ごみが出ればたい肥に……。リゾートに滞在し飲食をするということがすなわち、この循環の一部になる。
期待値高く向かいたいメインダイニング
「ファーム星野」の乳製品はリゾート内のみで販売・提供している。それを味わえるお店のひとつが「OTTO SETTE TOMAMU」だ。イタリアの郷土料理をベースとしたコース料理で北海道の旬が楽しめる。
今シーズンから料理長となった鈴木將平さんは「北海道のものは素材がいいので、味を入れすぎず、最大限魅力を引きだせるよう調理法や付け合わせを追求しています」と話す。
調理法が演出の役割を担うこともある。メインの仔羊肉は藁とともに包み、焼き上がった状態をまずゲストに見せてから、切り分ける。バジルの葉で覆った白身魚にはゲストの目の前で熱々のオリーブオイルをかけ、パチパチという音と熱せられたバジルの香りで食欲をそそる。
新シェフが目指すのは「ミシュランの星」。大いに期待してテーブルに着いてほしい。
「星野リゾート リゾナーレトマム」と聞いて雲海やスキー場を連想するのは間違いではない。しかしそれでは不十分。もっと広い意味で北海道の自然、風景、食を体験できる場所なのだ。
敷地面積1000haというスケール感を満喫するためにも、少なくとも2泊以上で訪れたい。
トマム|星野リゾート リゾナーレトマム
「雲海テラス」へはゴンドラでアクセス。散策路には現在6種の展望スポットが用意されている。眺めを楽しむだけでなく、浮遊感など雲の上の世界を体感できるものも。
住所:北海道勇払郡占冠村字中トマム
TEL:0167-58-1111(代表電話)
料金:1泊¥21,900~(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込、朝食つき)
客室数:200室
この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら