批判さえビジネスにつなげ、さらに社会の役に立つ活動に──。成金を演じる西村社長の心のなかには「日本を元気にしたい」という強い思いがあった。

エクスコムグローバル代表取締役社長。1970年愛知県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業後、大手コンサルティング会社を経て、1995年にインターコミュニケーションズ(現・エクスコムグローバル)を設立。2010年から10年ほどアメリカへ移住し、Wi-Fi事業に取り組んでいた。その独自のPR手法は注目を集める。
稼いだお金をいかに還元していくか
フェラーリやロールス・ロイスなど超高級車に乗り、30億円の豪邸で生活。エクスコムグローバルの西村誠司社長は、批判ややっかみを恐れることなく、自身が送る成功者の生活をメディアやSNSで紹介する。
「金を持った人間が調子に乗っている“絵”って、注目されるじゃないですか。これだけ情報が溢れている時代に、人の心に残るためにはエッジの効いたことをやらないとダメ。『イモトのWiFi』というネーミングも、『にしたんクリニック』のCMもめちゃくちゃ批判を浴びたけど、その分みんなの印象に残った。僕自身もわかりやすい金持ち像を見せることで、人の心に残る。それで稼ぐことができたら、そこから本当に自分がやりたいことをやっていけばいい」
西村社長が「本当にやりたいこと」とは、社会への還元。話題性のある活動の裏で、エクスコムグローバルおよび西村社長は、スポーツや文化へのスポンサー支援、地方創生や少子化問題のためのさまざまな団体への寄付など社会貢献活動を行っている。
「善行をしなければとか、深い意識でやっているわけではないんです。20代、30代はギラギラの生活に憧れていましたし(笑)。でも気がついたら、困っている人を助けることに自分が稼いだお金を使うのは自然なことだと思うようになっていた。誰かに教わったわけではない。何かの本に影響を受けたわけでもなく、気がついたら社会の役に立ちたい、笑顔の連鎖が広がっていってほしいと考えるようになっていた。だから僕、節税しないんですよ。誰かの役に立つのであれば、たくさん納税するのはまったくイヤじゃないんです」
誰かに褒めてもらいたいわけではない
はじまりは、子供のためのホスピスへの寄付だったという。
「横浜で子供用のホスピスを見学しました。僕は子供が好きだし、活動している方の思いも伝わってきたので、寄付をすることにしました。そうしたらそのつながりで名古屋大学の小児科の先生を紹介していただき、小児性白血病のための研究に資金を提供することに。そうやってひとつずつの活動がつながっていった感じです」
社会貢献活動は、西村個人の挑戦でもある。2025年2月に北海道・東川町の地方創生アドバイザーに就任した背景には、ひとりのマーケターとしての思いもあった。
「自分のマーケティングスキルをイモトやにしたんだけではなく、他の分野にも活用できるのではないかと思っていたんです。そこに人口8000人の東川町の話が来た。結果は、4月の1ヵ月だけでふるさと納税が前年の4000万円から3億2000万円まで伸びた。1月から9月までだと前年の9億円が38億円まで増えたんです。僕のスキルで地方を盛り上げることができるという自信になりました」
地方創生と少子化対策、「日本を元気にする」というのが西村社長の大きなテーマだ。
「誰もができることではない。そこに取り組める立場になれたことを嬉しく思います。誰かに褒めてもらいたいわけではないですが、亡くなった両親が僕の生き方を見たら喜んでくれるかなという思いはあります」
投資額は100億以上! 患者ファーストで予約が殺到
高度不妊治療や人工授精を手がける「にしたんARTクリニック」は、自身の不妊治療の苦労から生まれたものだ。
「アメリカの進んだ不妊治療を行うことで、不妊に悩むご夫婦の苦労を少しでも軽くしたかった」
平日は9時から22時までの診察時間で土日祝も無休。カウンセリングを重視するなど、患者ファーストを心がけ、インテリアもまるでホテルのような空間だ。
「採算は取れないかもしれない。2022年に開院した時は、最悪、自分自身の資金を投入するつもりでした。でもおかげさまで事業としても順調でクリニックの数も増えています。全国の不妊で悩んでいるご夫婦の役に立てればと思っています」
貧しい子供時代を過ごした西村社長は、子供への熱い思いを持っている。
「お金があれば子供が笑顔になれるわけではないし、お金がなくても子供を笑顔にすることはできる」
子供の白血病研究への資金提供をきっかけに地元である名古屋大学附属病院のほか、東大など全国多くの大学病院への寄付を毎年億単位で行ってきた。長年にわたる活動は高く評価され、紺綬褒章も受章している。

TikTokでPR! ふるさと納税額が4倍に爆増
きっかけは北海道選出の国会議員になった高校時代の同級生だった。
「彼から電話がかかってきて、『西村社長はCMとかで話題をつくるのがうまいから東川町を盛り上げるのに力をかしてほしい』って。ちょうど地方創生に興味があったから引き受けることにしたんです」
日本を元気にするためには、まずは地方に産業をつくり、活性化させることが必要だと考えていた西村社長にとって、人口約8000人の東川町は絶好のチャレンジの場であった。忙しい合間をぬって東川町に何度も足を運び、自らのSNSでその魅力を発信し続けた。その結果は、上記でも紹介したとおり、1月から9月のふるさと納税額が9億から38億、4倍以上に爆増するという絶大な効果を生んだ。
「ほとんどノーギャラだったので、少しはもらっておけばよかった(笑)。でも東川町の方々が協力して盛り上げてくれたおかげで、僕のマーケティング手法が地方創生でも使えることがわかった。来年から他の地域でもやっていきたいです」
有名な自治体でもなく、莫大な予算があったわけでもない。それでも大きな効果を生んだ西村流地方創生メソッドに期待する自治体は多いはずだ。

笑顔の連鎖のために、もっともっと稼ぎ続ける!
笑顔の連鎖をつくる。その思いから西村社長はお笑いイベントやスポーツ選手、チームへのスポンサードや支援を積極的に行っている。
「やっぱりハッピーの基本は笑顔。お笑いでみんなが笑顔になれば、その分笑顔の輪が広がっていく。スポーツも同じです。言葉が通じなくても、プレイひとつで大きな感動を生むことができる。最近、相撲の懸賞も出すようになったんですけど、相撲はスポーツでもあり、伝統文化の継承でもある。そういう活動はやっぱり応援していきたいと思います」
エクスコムグローバルの強みは、非上場であること。株主らの意向を気にすることなく、西村社長の思いひとつで支援や寄付を行うことができる。障がい児などをテーマとしたYouTubeのドキュメンタリー『964万7千分の一』への支援も西村社長の「少しでも力になれれば」という思いで決められたもの。
「利益だけを追い求めず、いろいろな活動ができるのは非上場だから。もちろん利益は追求しますよ。稼いで、世の中に振り分ける。それが僕の責任。だからこそもっと稼ぎたいし、稼いだ分を社会に還元したいと思っています」


問い合わせ
エクスコムグローバル TEL:03-5766-2808

