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2024.05.31

アメリカの国家試験をトップ1%で合格した日本人医師が実践した「白紙勉強法」とは

「自分が行ってきた勉強法が、科学的にも効果の高い勉強法だった」と語る医師・安川康介氏が、アメリカの医師国家試験をトップ1%で合格した際に実践していた勉強法を明かす。『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA)の、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

最高の勉強法
Unsplash / Kelly Sikkema. ※写真はイメージ

医学の知識を覚える時に使った勉強法

僕が医学の膨大な知識を覚えなければならない時に使ってきた、そして今でも使う「ブツブツ呟いて教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法」を紹介します。

長ったらしい、大そうな名前を付けてみましたが、至ってシンプルな勉強法です。

用意するものは次の3つだけです。

(用意するもの) 
▪ 自分の勉強したい情報:英単語帳、学校の教科書、資格試験の参考書、興味のある分野の本、新聞雑誌など
▪ 白紙:要らないノート、使わないプリントの裏など(僕は、プリンター用紙をよく使いますが、何でも構いません) 
▪ 書くもの:自分の好きな書き心地のペンや鉛筆(ちなみに、僕はZEBRA 社のSARASA Clip 0.5 をよく使っています) 

やり方も、至ってシンプルです。

①英単語のリスト、教科書の章や段落、新聞や本など、覚えたい情報をまず読みます。その後、その情報を見ないで、覚えたい内容を、白い紙にできるだけ書き出していきます。

その際のポイントは、元の情報を見ない、つまり記憶の手掛かりがない状態で頑張って記憶から内容を引き出すことです。アクティブリコール(編集注:勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと)の劇的な効果を示したカーピックらの行った研究でも、学習者がしたことは、学んだ内容をただ紙にできるだけ書き出す、パソコンにできるだけ打ち出すというとてもシンプルなものでした。

あとに残すためのノートを書くわけではなく、ただアウトプットするためだけなので、文字を綺麗に書く必要はありません。僕はもともと字が汚いので、このアウトプットの書き出しは、自分でも読めないくらいの字で書きなぐることがあります。

覚えにくい内容や難しい内容の場合、声に出しながら書くようにします。これは、ある情報をただ黙読するよりも、書き出したり、ブツブツ呟いたり、声に出したりしたほうが記憶に残ることが知られていてプロダクション効果(Production effect)と呼ばれています。

過去の研究では、おもに情報の入力段階において効果が調べられていますが、僕は最初に覚えようとする段階(最初に情報を読んでいる段階)、そして思い出そうとする段階の両方で使うことがあります。

さらに、誰かに教えているフリをしながら、アウトプットすると、より効果は高いと思います。「Learning by teaching(教えることで学ぶ)」、「Teaching is learning(教えることは学ぶことである)」とよく言われるように、誰かに教えることは、実際に情報の整理や記憶の定着を促す効果が確かめられています。

誰かに教える、または教えようとすることで、その学習内容の理解が深まることをプロテジェ効果(Protégé effect)と言います。興味深いことに、実際に誰かに教えなくても、あとで誰かに教えることを前提に勉強すると、学習効果が高まるという研究報告があります。よく成績の良い生徒が他の生徒に教える光景を見ることがあるかもしれませんが、実はより効果の高い学習をしているのは「教えている側」なのです。

僕は、昔からこうした科学的根拠を知っていたというわけではありません。この「ブツブツ呟いて教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法」という僕が行ってきた地味な勉強法が、学習において大切なテスト効果にプロダクション効果とプロテジェ効果を合わせて利用した勉強法であることを、あとになって知りました。

そうしていったん紙にアウトプットし終えたら、次に②、わかっていないこと、忘れていることについて教科書を見直し、情報を確認します。アクティブリコールはそれだけでも効果があるのですが、内容を見直すというフィードバックがあることで、その効果がさらに上がります。1回読んだだけで、覚えたいことの全部をアウトプットできることは少ないので、できれば満足する情報量をアウトプットできるようになるまで、アウトプットしては知識を確認(フィードバック)することを繰り返します。

実際に知っている以上に、知っていると勘違いしがちな自分の脳に騙(だま)されない、すなわち「流暢性の錯覚」に陥らないためには、このような作業の繰り返し(③) によって自分の脳を常に試すことが大切です。

さらに、有効な学習方法である「分散学習」と組み合わせるために、④時間をおいてまた、できるだけ思い出して書き出していきます。この際の間隔については、インプットした情報の難しさ、自分がどれくらい覚えているかによって異なってきます。

個人的には、やや難しく新しいことを覚える場合は、その日のうちに1回、次の日に1回、さらに間隔をあけて繰り返すと効果的だと思います。


TEXT=安川康介

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