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2024.04.21

あなたの「妬み度」を科学的に採点! 人間はなぜ嫉妬するのか?

仕事でも恋愛でも私たちを悩ませる「嫉妬」。最近はSNSを見るだけでも嫉妬を感じる人も増えてきているようだ。嫉妬しやすい人とそうでない人の違いは何なのか? 世界の論文に精通する脳科学者・西剛志が、 科学的な観点から「嫉妬のメカニズム」について探る。 ■連載「何気ない勝者の思考」とは

勝者の思考
Unsplash / Pro Church Media ※写真はイメージです

世の中には2つの嫉妬がある

「なんであの人だけが評価されるの!?」、「あいつは絶対に許せない!」私たちは人と比べてよく嫉妬を感じることがあります。

「嫉妬」という言葉は古くは聖書にも七大罪悪の1つとして記され、仏教でも嫉(しつ)という煩悩の1つです。数千年も遥か昔から、私たちを悩ませてきた元凶の1つと言えるでしょう。

そもそも、「嫉妬」とは何なのでしょうか?

世の中ではあまり知られていませんが、科学的には2種類の嫉妬が存在します。

それが、1.「妬み」(envy)と、2.「ジェラシー」(jealousy)です。

「妬み」(envy)は他人が持っているものをほしいときに感じる感情で、例えば、自分よりも仕事の成果をあげたり、リッチな暮らしをしている人を見たときに生まれます。

一方で「ジェラシー」は自分が持っているものを奪われる(かもしれない)ときに感じる感情です。不倫されると交際相手に感じる気持ちがまさにこれです。

動物だってジェラシーを感じる!

「ジェラシー」は人間だけでなく、動物も感じる普遍的な感情のようです。一番身近で分かりやすいのは犬でしょうか。

たとえば、散歩中に飼い主が他の犬と触れ合うと、不快感で威嚇する犬がいます(*1)。さらには、人工的な偽物の犬のぬいぐるみにすら嫉妬するそうです(*2)。また動物園でも新しい同種の動物を迎え入れると、群れの中でジェラシーのような反応が起きるといいます(*3)。ジェラシーは進化の中でも、大切なパートナーを取られてしまうことを防ぐための大切な感情で、持っているのは生命としては当たり前だと考えられています。

一方で、「妬み」(envy)は人間特有の個人差の大きい感情であらゆる悩みを生み出します。人によっては統合失調症にもつながるようです(*4)。

自分の「妬みやすさ」を診断してみよう

あなたの「妬み度」はどのくらいでしょうか? 科学的には「妬みスケール」という簡易的な診断がありますので、興味があったら試してみてください(*5)。かなり当てはまる場合は5点、全く当てはまらない場合は1点というように、妬みの度合いに応じて1-5点で採点して合計点をつけます(40点満点)。

【妬みやすい度診断】

  1. 私は毎日のようにうらやましさを感じる。
  2. 他の人より自分ができないと感じるのは、つらいけど本当のことだ。
  3. うらやましいと感じるといつも私は苦しむ。
  4. 何でも上手にすぐできる人を見るのは不満。

  5. 何をしても、嫉妬する心に悩まされる。
  6. 自分に何かたりないと感じると、困ってしまう。

  7. 全ての才能を持っているかのような人たちがいることは、少し公平でないと思う。
  8. 正直言って友だちがうまくいくと腹が立つ。

結果はどうだったでしょうか?

ちなみに日本の小学生の平均点は21.28点、イタリアの大学生は15.32点だったそうです。

私もつけてみましたが、スコアは10点で平均よりも下でしたので、あまり妬まない性格のようです。しかし、この仕事を始める前は、競争社会の中で生き、かなり妬むことが多かったのも事実。このスコアが高い人は、人の成功を喜べず、SNSを見ても不快感を感じやすい人と言えます。

妬みは“痛み”と“快感”のダンス

もし、この診断で「妬み度」が高い場合、脳の中で何が起きているでしょうか?

実は「妬み」は脳科学でも研究されていて、そのメカニズムがかなりわかってきています。その中でも最も興味深いのは、嫉妬した瞬間に、脳の中の「前部帯状回」が活性化することです(*6)。

実はこの部分、私たちが「ある体験」をしたときにも反応する部分ですが、あなたは何だと思いますか?

多くの研究者が驚いたのですが、その部分は「身体的な痛み」を感じたときに反応する部分だったのです。心ではなく、身体の痛みです。

つまり、人が成功することは、自分の身をナイフで切られるような痛みと同じ。人を妬むのは、心と身体に傷をつけるようなもの、ということになります。

一方で、脳の中は忙しく、痛みと真逆の反応も起きます。

それが、妬む相手が失敗したときです。

このとき、妬みが大きい人ほど、脳の線条体、つまり、報酬(快感)を感じる場所が活性化することがわかってきました(*7)。

「人の失敗は蜜の味」とは昔からよく言われますが、脳科学的にもあながちウソではなかったのです。しかも、自分が損をしても、相手がもっと損をすれば、同じように脳は快感を感じるようです(*7)。よく、お互いに足を引きずりあって泥沼にハマってしまう人達を見かけますが、まさに脳が相手の不幸を喜ぶ性質から生まれていたのです。

人とのつながりが強い人は要注意

しかも嫉妬深い人は、人とつながりたい気持ちが強い傾向も指摘されています。

二人に金銭ゲームをしてもらって嫉妬深さや他者の失敗を喜ぶ気持ちがどのように変化するかを調べた実験があるのですが、その結果、オキシトシン(つながりをもたらすホルモン)が投与された人はより嫉妬深く、より意地悪になったそうです(*8)。人の気持ちを理解する共感力が高い人も嫉妬深い傾向があるそうです(*9)。

世の中には、周りにあまり関心がない人がいますが、そうした人は嫉妬を感じにくい人と言えるでしょう。人に興味があるゆえに、嫉妬が大きくなるのだとしたら、可愛さあまって憎さ100倍という感じでしょうか。

その他にも、嫉妬心を感じやすい人は、幸福度が低く、神経症傾向が高く、自己効力感も低く、劣等感を感じている傾向もあるようです(*10)。

私自身も昔は自信のない人間でしたが、やはりそのときは、人を妬みやすい傾向があったような気がします。

イギリスの哲学者バートランド・ラッセルも「妬みは人間の性質の中で最も不幸なものである。なぜなら、自分の所有しているものから喜びを見出すのではなく、他人の所有しているものから苦痛を見出すためだ」と述べています。

私自身も幸福度が高まってきてからは、このような感覚はなくなりました。

嫉妬深い人は、アルツハイマー型認知症にもなりやすいという報告もありますので、嫉妬しやすい人は、日々の幸福度をあげることを意識して、十分気をつけてください(*11)。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上に講演会を提供。メディア出演も多数。著書に『世界一やさしい 自分を変える方法』『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計32万部突破。

<参考文献>
(*1) Abdai J, Baño Terencio C, Pérez Fraga P, Miklósi Á. Investigating jealous behaviour in dogs. Sci Rep. 2018 Jun 11;8(1):8911.
(*2) Cook, Peter; Prichard, Ashley; Spivak, Mark; and Berns, Gregory S. (2018) Jealousy in dogs? Evidence from brain imagingAnimal Sentience22(1)/Cook et al., 2018; Harris CR, Prouvost C. Jealousy in dogs. PLoS One. 2014 Jul 23;9(7):e94597.
(*3)Panksepp J. Affective neuroscience of the emotional BrainMind: evolutionary perspectives and implications for understanding depression. Dialogues Clin Neurosci. 2010;12(4):533-45. 
(*4) Smith RH, Parrott WG, Ozer D, Moniz A. Subjective injustice and inferiority as predictors of hostile and depressive feelings in envy. Pers Soc Psychol Bull. 1994;20:705–711./Appel H, Crusius J, Gerlach AL. Social comparison, envy, and depression on Facebook: a study looking at the effects of high comparison standards on depressed individuals. J Soc Clin Psychol. 2015;34:277–289./H, Gerlach AL, Crusius J. The interplay between Facebook use, social comparison, envy, and depression. Curr Opin Psychol. 2016;9:44–49./Tandoc EC, Ferrucci P, Duffy M. Facebook use, envy, and depression among college students: Is facebooking depressing? Comput Hum Behav. 2015;43:139–146
(*5)澤田匡人, & 新井邦二郎. (2002). 妬みの対処方略選択に及ぼす, 妬み傾向, 領域重要度, および獲得可能性の影響. 教育心理学研究, 50(2), 246-256. 
(*6)Takahashi H, Kato M, Matsuura M, Mobbs D, Suhara T, Okubo Y. When your gain is my pain and your pain is my gain: neural correlates of envy and schadenfreude. Science. 2009 Feb 13;323(5916):937-9
(*7) Dvash J, Gilam G, Ben-Ze'ev A, Hendler T, Shamay-Tsoory SG. The envious brain: the neural basis of social comparison. Hum Brain Mapp. 2010 Nov;31(11):1741-50. 
(*8)Shamay-Tsoory SG, Fischer M, Dvash J, Harari H, Perach-Bloom N, Levkovitz Y. Intranasal administration of oxytocin increases envy and schadenfreude (gloating). Biol Psychiatry. 2009 Nov 1;66(9):864-70. 
(*9)Gómez-Carvajal, AM., Santamaría-García, H., García, A.M. et al. The unique social sense of puerperium: Increased empathy and Schadenfreude in parents of newborns. Sci Rep10, 5760 (2020). 
(*10)Zhang Hao Goh, Xue Zhang, Gender differences in perceived well-being: Exploring the mediating effects of agentic and communal internet use from a social role perspective, Journal of Human Behavior in the Social Environment, 10.1080/10911359.2023.2298008, (1-20), (2023)./Milić, A., Kardum, I., & Švegar, D. (2022). Contours of the envious personality: Reassessing the capacity of the big five and the dark triad personality traits in predicting dispositional envy. Current Psychology: A Journal for Diverse Perspectives on Diverse Psychological Issues. Advance online publication/Güner Kibaroğlu G, Kızrak M. The Moderating Role of Self-Efficacy: Exploring the Impact of Social Undermining on Emotional Exhaustion Among Gray-Collar Workers. Çankırı Karatekin Üniversitesi İktisadi ve İdari Bilimler Fakültesi Dergisi. October 2023;13(3):1221-1244./ Gold BT. Enviousness and its relationship to maladjustment and psychopathology. Pers Indiv Differ. 1996;21:311–321./Smith RH, Parrott WG, Diener EF, Hoyle RH, Kim SH. Dispositional envy. Pers Soc Psychol Bull. 1999;25:1007–1020/Crusius J, Mussweiler T. When people want what others have: the impulsive side of envious desire. Emotion. 2012;12:142–153/Van de Ven N, Zeelenberg M, Pieters R. Leveling up and down: the experiences of benign and malicious envy. Emotion. 2009;9:419–429./Smith RH, Kim SH. Comprehending envy. Psychol Bull. 2007;133:46–64
(*11)Johansson L, Guo X, Duberstein PR, Hällström T, Waern M, Ostling S, Skoog I. Midlife personality and risk of Alzheimer disease and distress: a 38-year follow-up. Neurology. 2014 Oct 21;83(17):1538-44

■連載「何気ない勝者の思考」とは……
日常の何気ないシーンでの思考や行動にこそ、ビジネスパーソンが成功するためのエッセンスが現れる。会議、接待、夫婦やパートナーとの関係や子育てなど、日常生活のひとコマで試される成功者の思考法を気鋭の脳科学者・西剛志が解説する。

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TEXT=西剛志

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