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2024.03.22

「芸術は爆発だ」才能を伸ばす、岡本太郎の言葉5選

「芸術は爆発だ」の言葉で知られる芸術家・岡本太郎。芸術によって社会の課題に挑み、生涯を通じてあらゆるものと闘い続けた岡本太郎の残した言葉は、今を生きる人々の胸に突き刺さり、前へと進むパワーを与えてくれる。『ありのままに、自分らしく生きる 岡本太郎の言葉』(リベラル社)より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

爆発するアート
david-becker/ unsplash ※写真はイメージ

今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない

これは岡本太郎が主張する「芸術の三原則」です。

一般的な価値基準から言うと、「絵は上手く、美しく、快いものがいい」はずですが、岡本はそれとはまったく正反対のことを言い、「これこそ、まことに正しいのです」と主張しています。

理由はこうです。絵を習うというと、石膏デッサンやモデルの写生といった写実のための技法を身に付けるところからスタートしますが、これは「職人的上手さ」を養っても、そこから「見るものを激しく惹きつけ圧倒する」ような「芸術の凄み」のある作品は生まれない、というのが岡本の考え方です。

岡本によると、ピカソやゴッホもかつては楽しさやきれいさではなく、「一種の不快感、いやったらしさ」を感じさせる画家でしたが、だからこそ観る人に迫り、圧倒するような力があったのです。

優れた芸術には当時の常識に逆らった、一種の緊張感があるだけに、それまでの絵を見慣れた人にとっては決してきれいでも快いものでもありませんが、それこそが真の創造なのです。

「上手い、きれい、ここちよい」がないにもかかわらず、観る人を激しく惹きつけるものこそが岡本の言う、「芸術の本当の凄み」なのです。

絵の値段と、芸術的価値とは、まったく関係がない

日本がバブル景気に沸いていた1987年、ある生命保険会社がゴッホの「ひまわり」を約58億円で落札したことが大きな話題になりました。

この金額は当時の絵画取引の最高値だったマンティーニャの「三博士の礼拝」(約9億円)を大きく上回るものであり、当時の日本の好景気ぶりを象徴する出来事の一つとして記憶されています。

「ひまわり」は同社の美術館の目玉として落札されたものであり、今も展示されていますが、それ以前には3万人程度だった年間の入館者が現在でも20万人を超えているといいますから、一般の人にとって「ひまわり」は観ておきたい絵画の一つであり続けています。

今でこそ高値で取引されるゴッホですが、生きている間は1枚も絵が売れず、同じく人気のセザンヌも生前はわずか3枚しか絵が売れなかったといいます。これだけでも、芸術家の絵の値段が、その画家の芸術的価値につながるとは言えないことがよくわかります。

岡本自身、絵を売らない主義のため、「僕の絵には値段はない」と言い切っています。時代を超えた芸術の価値は値段だけでは測ることができないものなのです。

人間的創造は、そのわくにこだわらない。それを突きぬける平気なシロウトこそがひらくのである

自動車業界は今、電気自動車の時代へと急速に変わり始めていますが、そのきっかけをつくったのはIT業界出身のイーロン・マスクです。

マスクが業界の誰もが考えられなかった技術を導入し、圧倒的に格好いい電気自動車をつくり上げたことが、自動車業界の流れを変えたわけですが、同様にビジネスの世界におけるイノベーションはしばしばその業界の外にいる素人によって引き起こされる傾向があります。

専門家の知識や経験は貴重なものですが、一方で、時にこれらが新たな発想を妨げ、イノベーションを起こしにくくしてしまうのに対し、素人には、余計なしがらみなどなく、自由な発想や挑戦が可能になるからです。

岡本太郎は絵画や彫刻のプロですが、気持ちの上では「素人」のままでありたいと考えていました。理由はこうです。

「音楽は音楽家、絵は画家などと、芸術創造の世界が専門家、職人だけにとざされてしまっていることがつまらない」

岡本自身、専門分野とは言えない鐘の制作や作曲、テレビ出演などにも挑戦しています。創造は専門の枠にこだわらない素人こそが道をひらくのです。

子どもの絵こそ、「絵」「作品」であるというよりも、生活そのものなのである

岡本太郎によると、子どもの絵というのは「絵」や「作品」というより、子どもの持つ生命力の放出であり、生活そのものであり、結果など問題ではないといいます。

子どもが夢中になって絵を描いている時というのは、仲間がそばで遊んでいようが、おいしいお菓子が用意されようが関係なく、白い紙に向かってひたすら描き続けています。

それは岡本によると「小さい炎のよう」であり、出来た絵は「足跡のようなもの」と言えます。そして特徴的なのは、描き終わった絵を前にして、「うむ、我ながら良くできた」とほくそえむこともなければ、「あそこがどうも」と口にする子どもはいないことです。

つまり、子どもたちにとって絵は描きたいから描くものであり、結果は問題ではありません。しかし、そこに親や先生が加わって、「この子は才能がある」などと評価をして、絵を習わせようとしたり、技術指導をしようとするからおかしなことになる、というのが岡本の見方です。

「絵について教えることなどないし、教えてよくなるものでない」以上、大人は大人の眼に上手そうにうつる絵を描くように、子どもを強制するべきではないのです。

芸術は爆発だ

「芸術は爆発だ」は岡本太郎を象徴する言葉の一つです。1981年、岡本がテレビCMで放ったこの言葉はやがてCMを離れて注目を浴びるようになり、1986年には「新語・流行語大賞」も受賞しています。

1968年に銀座・松屋で開いた個展のタイトルも「太郎爆発」ですから、岡本にとっては早くから使っていた言葉ですが、それが一般の人の目に触れた時、岡本の生き方や作品とともに一気に注目を集めるようになったのでしょう。

岡本は「『こういうもの』を描きたい、描くべきだ、という具体的な情熱が起こるまでは、私は絵描きではない」と話しているように、「内なる情熱」が勝手にはけ口をつくって飛び出してくるという、いわゆる「芸術の衝動」に突き動かされて創作をする芸術家です。

それだけに情熱や衝動は絵という形をとることもあれば、彫刻や壁画、鐘や作曲、本、さらには太陽の塔のような形で表現されることもあります。

岡本によると、子どもの頃から胸の奥に神聖な火が燃えているといい、それが宇宙に向かって無条件に開くことが「爆発」であり、その結果として生まれるのが時に芸術であり、岡本太郎という生き方なのです。

TEXT=桑原晃弥

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