映画やドラマでひっぱりだこの俳優・滝藤賢一さん。その家族愛は有名であり、親子6人で２LDK住まいだった話は、さまざまなテレビ番組などで語られてきたエピソードだ。しかし、そんな滝藤さんがついに2LDKを飛び出したという。その情報を聞きつけたゲーテ編集部は、インテリアショップ巡りに同行。ファッションや園芸など、多趣味で知られる滝藤さんのインテリアに対する情熱を追いかけた。「ハーマンミラーストア青山」「FRITZ HANSEN TOKYO」に続き、最後に訪問したのは「カッシーナ・イクスシー 青山本店」。
女性デザイナーの家具を入れて、空間に柔らかさを！
最後に訪問したのは「カッシーナ」。その源流は17世紀まで遡ることができ、教会の木製椅子の製作から始まるという。そしてチェーザレ・カッシーナとウンベルト・カッシーナによって1927年にカッシーナ社を設立し、20世紀中期を代表する多くのデザイナーの家具製作を行うようになった。
青山にある「カッシーナ・イクスシー 青山本店」は、青山通りに面する好立地ながら、3フロアに数多くの家具を展示し、また企画展なども行うインテリア情報の発信基地となっている。
滝藤 自宅のインテリアには、女性デザイナーの家具を入れて空間に柔らかさを加えたいんですよ。特にシャルロット・ペリアンやアイリーン・グレイといった20世紀に活躍したフランスのデザイナーの作品が気になる。機能性を重視するというよりは、多少の不便があっても、その美しさや表現を楽しみたいと思っています。
スタッフ シャルロット・ペリアンでしたら、まずはLCコレクションを見ていただきたいですね。ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの共作ですが、実はそのデザインはほとんどシャルロット・ペリアンによるものといわれています。
滝藤 それは知りませんでした。てっきりル・コルビュジエが主導していたものと。ここに「4 シェーズ ロング ア レグラージュ コンティニュ」がありますね。これ好きなんですよ。一人の時間を過ごすための特別な椅子。長い時間を過ごす場所だから、じっくり時間をかけて体験したいですよね……。
「4 シェーズ ロング ア レグラージュ コンティニュ」¥748,000〜。1929年に発表された寝椅子で、「休養のための機械」と称した。ニューヨーク近代美術館の永久所蔵品となっており、世界で最も有名な寝椅子である。
スタッフ この椅子は弓型のパイプを鉄のフレームに載せているだけなので、こうやってずらすことで、さまざまな角度でくつろぐことができます。
滝藤 シンプルだけど、機能的なんですね。この毛皮の張地も素敵です。向こうに黒革のタイプもありましたが、僕は断然こっち。そしてその隣にも見たかった家具がありますね。この「アルコ」も、昔から好きな照明です。大理石の土台からすらりと伸びるステンレスのポール……、なんて美しいんだ。うっとりしますねぇ。この優雅なデザインは、まさに究極の贅沢です。でも前から不思議に思っていたのですが、なぜ大理石の土台に穴があるのですか？
「アルコ」¥348,700。イタリアのFLOS社が製作する傑作照明で、デザインはアキッレ・カスティリオーニ。アルコ（ARCO）とはアーチの意味で、街灯をヒントに、モダンな照明に仕上げた。
「アルコ」の土台の上部には丸い穴が。
スタッフ 土台は約60kgもあってとても重たいので、付属する木の棒をこの穴に通して、二人で持ち上げて運搬するのです。
滝藤 面白いですね。これだけモダンなデザインなのに、アナログな感触もあるのか。
スタッフ 3階には、先ほど滝藤さんがおっしゃっていた女性デザイナー、アイリーン・グレイの作品もありますよ。
滝藤 出ましたね。「E-1027」。このテーブルは広瀬アリスさんとW主演したドラマ『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』 で、ロケセットの小道具に使われていたのですが、どうしても一緒に画面に収まりたくて、撮影の時に配置場所を勝手に動かして芝居してました（笑）。それだけでテンションあがりましたね！
「E-1027」¥173,800〜。アイリーン・グレイが、海辺の別荘「E-1027」のためにデザイン。高さを10段階で調節できるだけでなく、天板と脚をつなぐポールが端にあるので、脚をソファの下に入れてサイドテーブルとしても使えるなど、細部までよく考えられている。
スタッフ 1920年代に彼女が設計した別荘E-1027に合わせてデザインされたサイドテーブルですね。スチールパイプとガラスの天板を組み合わせた構造は、当時としては非常に画期的でした。
滝藤 約100年前にこんなモダンな考え方をしていた女性がいたというのも素晴らしい。工業的な素材なのに、どこか女性的な美しさを感じます。
リゾートな雰囲気を醸すピエール・ジャンヌレのテーブル＆チェア
滝藤 自宅のインテリアを考えるうえで、ひとつキーワードにしたのが“リゾート”でした。そこにぴったりはまったのが、ピエール・ジャンヌレの作品だった。同世代のデザイナーと比べると、他とは違った異質な感じがあるんです。
「キャピトル コンプレックス チェア」¥286,000〜、「キャピトル コンプレックス テーブル」¥1,210,000〜。インド・チャンディガールのキャピトルコンプレックスにある立法議会棟や行政庁舎のために製作された椅子とテーブル。ル・コルビュジエ財団やピエール・ジャンヌレの意匠継承者の合意のもと、カッシーナはジャンヌレへのオマージュとして家具の製造を行っている。
スタッフ インドのチャンディガールという街の都市計画に参加し、公共施設のためにデザインされた家具ですからね。
滝藤 そうなんですよね。だからかなり武骨な雰囲気ですが、なぜか色っぽさもあるのが不思議です。「カンガルー ラウンジチェア」なんて、すごくきれいじゃないですか。
「カンガルー ラウンジチェア」¥418,000〜。チャンディガールにある総合病院のホール用に製作されたラウンジチェア。脚部と座面、背板部分がジグザグを描くようにデザインされているのも特徴。
スタッフ かなり座面が低くて深いちょっと変わったデザインですが、座り心地はいかがですか？
滝藤 実は僕は腰痛もちで、座面の低い椅子がちょっと苦手なんです。でもこの椅子は、どの角度で座っても辛くない。美しいけど、ちゃんと考えられているところも好きです。
スタッフ その横にあるのは、シャルロット・ペリアンの「ベルジエ・スツール」です。こちらも一緒にいかがでしょう？
滝藤 このスツールも可愛いですよね。あのシェーズ ロングの横にちょこんと置きたい。でもアイリーン・グレイのサイドテーブルも堪らない！ うーん、悩ましい。一回、あの椅子の写真撮って、じっくり考えます！
カッシーナ・イクスシー 青山本店
住所：東京都港区南青山2-12-14 ユニマット青山ビル1・2・3F
TEL:03-5474-9001
営業時間：11:00～18:00
定休日：水曜（年末年始を除く）
Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。2023年1月13日に初主演映画『ひみつのなっちゃん。』が公開。ドラァグクイーンたちの“ひみつ”をめぐる、ハートフル・ヒューマン・コメディとなっている。また、主演ドラマ『家電侍』(BS松竹東急)が1月4日21時〜放送。3月19日からはドラマ『グレースの履歴』（NHKBSプレミアム）がスタートする。現在、『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』DVD-BOXが絶賛発売中。
