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2022.02.20

有事に強いのは「金」──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.41

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

金

「金」の価格が上昇している理由

グローバルな視点から見て日本のファイナンシャルリテラシーは低い、そういう状況が長く続いてきました。海外では小学校から金融教育を行っている国もあったり、子供のうちから資産形成についてゲーム感覚で学べるサービスがあったりと、金融教育において日本は遅れをとっていました。

しかし今年4月、ついに全国の高校で金融教育がスタートします。

高校生がお金について考え、お金のスキルを身につけて、その上で社会に出るようになる時代が目前まで迫ってきているのです。

今回、高校生が学習していくお金のスキルは家計管理、資産運用、投資詐欺、保険、住宅、年金など多岐にわたります。お金のスキルというと、どうしても株式やFXなどの投資がわかりやすいし話のネタにもしやすいので、そこを思い浮かべる方も多いと思いますが、それはお金のスキルの一部にすぎません。私たちは毎日お金と接して生活をしていますので、必要なお金のスキルはもっと幅広いものなのです。

そんなお金のスキルの一つである「金」について、最近その価格が上昇していることに気付いていますか?

「金」の先物価格は1グラム=6800円余りともなり、1年半ぶりの高値となりました。

では、お金のトレーニング。「金」の直近の価格上昇の理由はなんでしょうか?

答えは、ウクライナ情勢の緊迫化です。ロシアがウクライナとの国境周辺で軍備を増強しており、10万人規模ともされるロシア軍がウクライナに侵攻するのではないかと懸念されているのです。

旧ソ連圏のウクライナは、ロシアとヨーロッパに挟まれる位置にあり、国内でも親ロシア派と親欧米派が対立してきました。 ロシアのプーチン政権は、ウクライナのEU加盟やアメリカと西ヨーロッパ諸国による安全保障体制「NATO(北大西洋条約機構)」への加盟を警戒し、圧力をかけてきたのです。

結果ウクライナ情勢が緊迫化するという有事になり、経済についても先行きが不透明感が増し、不安も高まったことで、リスクが少なく安全資産と言われている「金」に資金が流れ、結果的に「金」の価格が上昇しているのです。

ここで、お金のトレーニング。このように有事に強いのは「金」と言われますが、なぜ株式や貨幣ではなく「金」が有事に強いのでしょうか?

それは「金」が、常に高い価値を持ち続ける可能性が高い資産だからです。

例えば株式や貨幣は、世界情勢に非常に敏感です。もし戦争が起こって、国が金融破綻したり、企業が倒産したりした場合は、その資産を一気に失うこともあるからです。多額の資金を使って投資をしても、もしかすると一夜にしてそのほとんどを失うリスクもあるのです。

しかし、「金」はそのようなリスクが少ないのです。

なぜなら「金」は物ですので、安定的に価値を持ち続けることができるのです。なので「金」は株式とは真逆で、世界情勢が悪化したときに価格高騰がおきることがよくあります。

実際に世界中を混乱におとしいれることになったコロナの影響にも「金」の資産価値は動じることなく、むしろ過去最高の価格を記録することになりました。だから有事に強いのは「金」なのです。

そして、「金」は大きなリスクを負うこともなく、気軽に始められる資産形成手段です。短期間で大きな利益を得ることは難しいですが、長期的な目線で安全に資産を形成するという観点では有効なのです。なにより『「金」には価値がある』ということは遥か昔の私たちの祖先の時代から続いている考えです。

15世紀から始まった大航海時代。その時に「金」の探索を続けて、新大陸発見にも貢献したのが有名なコロンブスです。そのコロンブスは、当時のスペイン国王に対して「黄金があれば何でもでき、これを持っているものは死後天国へと行ける」と言ったとされています。またコロンブスは、マルコ・ポーロが著した東方見聞録を読んで、ジパングを探し続けていました。ジパングとは現在の日本のことです。過去に「金」を大量に使った建造物や貢ぎ物が多かったことでこのように呼ばれていたのです。

我々の祖先の時代から人々は「金」に価値を感じてきました。その理由として、「金」の持つ美しさや輝き、手に取れる現物であること、などありますが、最も大きいのはその希少性です。「金」は、今までに全世界で採掘された量が推計で約17万トンしかないのです。

続いてお金のトレーニング。この「金」の採掘量、オリンピック水泳競技公式プールでいうと、その何杯分にあたるでしょうか?

答えは、たった約3杯分しかありません。大航海時代、人々が一生懸命に地球上を探し続けても少ししか発掘できず、さらに古代から長年研究され続けてきた錬金術でも「金」をつくることはできませんでした。

コロナウイルス感染拡大。ウクライナ情勢緊迫化。そういう一見すると我々の資産形成には関係のなさそうなニュースも、実は大きく関係しています。人生の選択肢を増やして、自分の人生を自分で輝かせるには、資産形成の原理原則を理解した上で、最新のトレンドにも常に目を光らせ続けるという、お金のスキルが必要なのです。

高校生が金融教育をうけはじめる時代。私たち大人がお金のスキルを身につけることなく、この変化の激しい時代を生き抜くことができるでしょうか。お金のスキルは、車の運転スキルと似ています。正しいスキルを身につけて日々注意を怠らないことで、自分の人生の目的地にたどり着くことがきっとできるのです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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