暗号資産やブロックチェーンが持つ、世界を変える大きな可能性について各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.10
インターネットの登場は情報革命を起こし、世界を劇的に変化させた。そして暗号資産に代表されるブロックチェーン技術は今、インターネットに勝るとも劣らないインパクトを社会にもたらし、多くの人を魅了している。暗号資産取引所を運営するビットバンクCEOの廣末紀之氏もまた、暗号資産に大きな可能性を感じてこの業界に飛びこんだという。野村證券やGMOインターネットなどを経てビットバンクを創業した廣末氏は、現在の暗号資産業界にどのような思いを持っているのか、話を聞いた。
「ビットコイン=詐欺」だと考えている状況を変えたい
私がビットコインに出合ったのは2012年。改ざんの危険に常にさらされているインターネットの世界において、非中央集権型でデジタルデータの真正性を担保する仕組みというのは、非常に革命的だと思いました。それと同時に、ビットコインの仕組みって巧妙に考えられているんだけど、とてもエレガントなんですよね。既存の技術をうまく組み合わせて今までになかったものを誕生させるという構造自体が、まるでアートのようで美しさすら感じました。
しかし、’14年に世界最大の取引所だったマウントゴックスがハッキングに遭い、約480億円相当のビットコインが流出したことで、暗号資産にネガティブさを感じる人が増えてしまいました。一方、自分はそれでもビットコインの可能性を信じていましたし、多くの人が「ビットコイン=詐欺」だと考えている状況を変えなきゃいけないという使命感もあって、ビットバンクを創業したんです。
暗号資産取引における販売所と取引所の違いとは
日本の暗号資産取引所には販売所形式と取引所形式の2種類があります。販売所形式は、ユーザーが取引所の運営者を相手に通貨の売買を行うものです。いつでもすぐに取引ができ、取引方法も簡単なので初心者でも気楽に売買できるところが利点ですね。
一方、取引所形式ではユーザー同士が直接やり取りをします。取引板(オーダーブック)と呼ばれるボードに買値と売値が一覧表示されていて、ユーザーは現在の相場を見ながら取引できるんです。販売所形式に比べて手数料が安く済みますし、価格の透明性も担保されているのでユーザーのメリットも多い。私たちは取引所形式をメインに事業を展開しており、現在ビットバンクは国内一の取引量を誇っています。
ビットバンクが取引所の運営を始めたのは’17 年からで、実は他社と比べると後発。それには理由があって、顧客の大切な資産を取り扱うためには、サービス提供者としての体制がしっかり整わないといけないと考えたから。取引所のサービスというのは簡単に言うと、小さな東京証券取引所を日々運用していくようなもの。24時間365日安定して運用していくのは簡単なことではありませんし、相応の準備が必要でした。結果として、ビットバンクはこれまでハッキングによる顧客資産の流出もなく、セキュリティ面でも非常に高い評価を受けています。
NFTゲームの市場がますます拡大していく
’21年は多くの機関投資家たちの参入や、コロナ禍による各国の金融緩和で法定通貨が大量発行されたこともあり、暗号資産取引がとても活況な1年でした。また、NFTの盛り上がりも相まって、暗号資産に興味を持つ人々の裾野がかなり広がったと思います。
個人的に’22年は、暗号資産を取り入れたいろいろなタイプのゲームが次々と登場してくると考えています。「Play to Earn」(遊んで稼ぐ)のコンセプトを世の中に広めたベトナム発のNFTゲーム、Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)のように、暗号資産とゲームの相性はとてもいい。もちろん、暗号資産取引自体もより盛んになっていくと思いますが、NFTゲームの市場もますます拡大していくでしょう。
暗号資産の世界は非常に変化が早く、次々と新たなイノベーションが生まれています。ビットバンクとしても、取引所に限らずさまざまなサービスを試行錯誤していますが、これからも暗号資産の可能性をより多くの人々に広めていくために尽力していきます。
ビットバンク
代表取締役CEO 廣末紀之
1968年東京都生まれ。野村證券、グローバルメディアオンライン(現GMOインターネット)、ガーラ、コミューカなどを経て、2014年にビットバンクを創業した。