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2021.12.20

ブラックフライデーとお金──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.38

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

ブラックフライデー

日本でも浸透してきたブラックフライデー

ブラックフライデー。

日本で認知されるきっかけとなったのは、2016年に家電量販店のノジマや大手スーパーのイオングループがセールを実施したことでした。その後、小売店やECサイトでも浸透し、2018年には楽天市場など大手企業やチェーン店が次々にブラックフライデーと銘打ったセールを実施し、どんどん日本でも定着してきたのです。

多くの企業がブラックフライデーのセールに参入しているため、その年のクリスマスや年末商戦の動向を占う経済指標としても捉えられてきています。

それでは、お金のトレーニング。そもそもブラックフライデーとは、一体何なのでしょうか?

ブラックフライデーは、アメリカの祝日であるThanksgiving Day(感謝祭)の翌日に大々的に行われる、年内で最も価格が安くなるセール日のことです。

1年で最高売上が出る「黒字の日」として広く認知されています。店頭では、70%OFFや80%OFFなど驚くほどの割引率で商品が並んでおり、この日を目当てに商品を大量に購入する人もいます。新型コロナウイルスの流行前は、Thanksgivingのディナーが終わるとそのままセールへ直行し、真っ先に有名店のセール会場に入れるよう、ドアが開くまで一晩中外で待つというのも風物詩の一つでした。

また、アメリカ人にとって、Thanksgivingの翌日はクリスマスシーズンの始まりを意味します。1867年にリンカーン大統領が11月末の木曜日をThanksgiving Dayにしました。その後、1941年にルーズベルト大統領が第4木曜日から4連休としましたが、クリスマスギフトを購入するための休暇として経済効果を見込んだ国家施策とも言われています。

そして2020年、ブラックフライデーのオンラインによる支出総額は過去最高の90億ドル(約9400億円)を記録しました。新型コロナウイルスにより、消費者は混雑する店舗での買い物を避けオンラインショップに流れたことも大きな後押しとなりました。

そのなかでもよく売れた商品は、Appleの「AirPods」「Apple Watch」、Amazonの「Echo」、サムスンのテレビなどで、在宅時間やリモートワークの影響を強く受けていることがわかります。では世界2位の経済大国、中国ではどうでしょうか。

中国ではブラックフライデーとは別に「〇〇の日」というネット通販各社が大規模セールを実施している日があります。今年の売上は過去最大記録となるほどの勢いでした。

それでは、お金のトレーニング。中国で大規模セールの行われる「〇〇の日」とはなんでしょうか?

答えは、「独身の日」です。

中国では、11月11日を「独身の日」と呼び、ネット通販各社による大規模なセールを行っています。独身を意味する数字の「1」が並ぶことから、この日を独身の日としています。

例年盛り上がりを見せるこの日ですが、今年は、IT大手など民間企業に対する統制が強まる中でのセール実施となりました。習近平政権は、政策の軸足を格差是正に移しており、IT企業に対して統制を行うようになっています。そのため、中国大手企業のアリババグループは、「独身の日」のセール取引額に応じた寄付を行ったり、利用者に寄付を促す仕組みを作るなど社会貢献をアピールしながらセールを実施。さらに、政府が重視する環境問題に配慮したセールを積極的に展開するなどしています。

そんななかでも、アリババの「独身の日」のセール取引額は、過去最高記録を更新し続けており、2020年は11日間の開催で741億ドル、2021年は4日間の開催で845億ドルと勢いがとまりません。圧倒的な爆買いが引き続きおこっていることがわかります。

では世界3位の経済大国、日本はどうでしょうか。

日本では新型コロナウイルスの影響で個人消費が落ち込んでおり、貯蓄が増加傾向にあります。内閣府の国民経済計算によると、2020年に消費されずに貯蓄に回ったお金は、一律10万円の特別定額給付金の影響もあり、35.8兆円に達しました。この額は前年の5倍の水準です。

ただ日本でも、年に1度しかないブラックフライデーなどの大々的なセールは経済効果も高いと景気回復への期待も大きくなっています。 「消費」が加速すると企業収益があがるので景気が回復していき、そうなると「投資」という観点でも株価が上がりやすくなり、経済が好調に循環していきます。

「消費」と「投資」がつながっているという関係性や、お金についての考え方の国民性の違いなどを金融リテラシーの一つとして理解しておくと、世界の経済ニュースももっと面白く捉えられていきますし、個人の投資という観点でもどういう投資を選択するのかを考える材料になるのではないでしょうか。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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