新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。 アフターコロナのお金論37回。
メタバースへ大きく舵をきった世界的企業も
メタバース。
それは私たちのいる現実とは別の世界、インターネット上に作られた仮想空間の世界のことです。
それではお金のトレーニング。2021年10月、社名を「Meta(メタ)」へ変更したと発表し、世界中で注目された巨大IT企業は企業はどこでしょうか?
答えは、Facebook。Facebook代表のマーク・ザッカーバーグ氏が、VR(仮想現実)を使ったメタバース事業に注力するため、社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表しました。大胆な戦略発表で世界的なニュースとなりましたが、メタバースにはまだ明確な定義はありません。メタバース上で、ユーザーは現実世界とは別の仮想世界で自分のアバターを操作して、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。
既に、MetaやMicrosoftは、アバターを使って仮想の会議室に集まり、同じテーブルでミーティングができるというメタバースのサービスを提供しています。日本でも2021年11月、凸版印刷がメタバース上に自分のデジタル分身を生成するサービスを開発しました。それは自分の顔写真と身長体重の情報を元に再現した、自分にそっくりなリアルな3Dアバターを自動生成できるサービスです。生成された3Dアバターには、メタバース上で使いやすい「挨拶」や「歩き」などの基本モーションが付与されます。カスタマイズで利用者自身に似たモーションを選択する事もでき、より再現性の高い3Dアバターを生成できます。
実は世界でも、日本でも、メタバースは以前から注目されていましたが、まだまだ技術的な課題がかなり多く、普及までは至っていませんでした。 しかし、テクノロジーの進化や、デジタル資産の「NFT」によって経済活動も可能になり、いよいよ普及が実現されるのではないかと考えられているのです。
それではお金のトレーニング。デジタル資産のNFTとは何の略でしょうか?
NFTとは、「Non Fungible Token(非代替性トークン)」の略です。つまり、デジタルの世界において所有権を記録することができるデジタル資産のことを指します。リアルな世界で家や車や洋服を所有できるのと同じように、デジタル上に自分の資産を所有することができるのです。
ではそうすることで、どういう変化が起きるのでしょうか。
そこでお金のトレーニングです。2021年3月22日に、米Twitterと米SquareのCEOを務めるジャック・ドーシー氏は、オークションで自らの初ツイートのNFTを出品しました。デジタル資産を販売したのです。一体いくらで落札されたでしょうか?
答えは、なんと約3億1640万円。NFTによりツイートの所有権を証明できるようになったため、デジタル資産として価値がうまれ、結果として売買が可能になったのです。
そのNFTはブロックチェーン上の技術ですが、そのブロックチェーンを活用することにより、デジタル上で所有権が誰から誰に渡ったのかを辿れるようになり、新たな付加価値が生まれることがあります。
例えばそれは、アート、ゲーム、ファッション、音楽などです。NFTは全ての業界のルールをアップデートするほどのデジタル革命と言われているのです。
DappRadarの最新市場レポートでは、2021年7~9月のNFTの取引高は約1兆1945億円と、既に莫大な規模となっており、さらに前年同期と比べると3万8060%増と、急拡大していることがわかります。そのように急拡大した理由として、音楽会やスポーツ界の著名人によるNFT市場参入があります。スポーツ界からは元NBAプレーヤーのシャキール・オニール氏、音楽界からはスティーブ・アオキ氏、スヌープ・ドッグ氏などがNFT参入を明らかにしています。
また、2021年8月には、クレジットカード大手VisaがNFTピクセルアート集「クリプト・パンク」の1つのアイコンを約1679万円で購入し、多くのニュースメディアで報道され、一般消費者の認知向上につながりました。
さらにNFTとメタバースの関係を深掘りしましょう。
今までのメタバース内のアイテムは、コピーが可能であったり、サービスが終了すれば消滅してしまうというものでした。それが、ブロックチェーンの技術を活用することにより、メタバース内の土地やアイテムなどの多くがNFTとなり、コピーができない「唯一無二」の存在としてデジタル所有権を証明できるようになったのです。結果、それは半永久的に存在し、所有権を証明できるため、メタバース内でNFTの売買ができるようになりました。
メタバース内のNFTを所有することにより、現実世界の限りある資産とは別に、新たな資産を持てるようになります。現実世界とは別の世界で経済活動を行うことができるようになる、という点が注目されている最大の理由です。
これまでのメタバース内のアイテムは、ゲーム内通貨で取引されていました。ただ、NFTの場合は、仮想通貨や法定通貨で取引されます。そのため、アナログのモノを売買するのと同じように、NFTの土地やアイテムなどを売買してマネタイズすることが可能となるのです。
今後、デジタル技術の革新により、今までの現実世界での経済圏とは別に、仮想空間内で新たな経済活動を行える時代へと突入していく可能性が高くなっています。このビジネスチャンスに多くの企業が注目し、参入し始めているという状況なのです。
まだまだ無限の可能性を秘めているメタバースにNFT。
私たちにとっても、お金、仕事、資産形成という観点でも大きく影響があります。新しい次の世の中のルールがうまれる時代、その夜明け前に今我々は立っているのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。
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