ヴィンテージ愛好家なら、相場の動向も押さえておきたい。「今、買い時のアイテムは何か」を、世界を代表する名門オークションハウスが教えてくれた。
若返りを見せるヴィンテージ市場
先日、ゲームソフト『スーパーマリオブラザーズ』(未開封)がオークションにかけられ、200万ドル(約2億2000万円)で落札された。他にも最近ではスニーカーやウィスキー、自転車など、ひと昔前のオークションでは出品されることがなかったアイテムに、1億円以上の値がつくことも珍しくない。
「ヴィンテージ市場は大きく様変わりしている」と、クリスティーズの玉置雅司さんは話す。
「相場がある程度決まった品物の売買が中心だったかつてのオークションとは異なり、今は各個人が新たな価値を見いだしていく時代。自分が評価するアイテムを売買し、歴史に残していこうという感覚が強いですね。そのため歴史が浅い品であっても、予想以上の高値がつくことがあります」
ヴィンテージの主要ジャンルにも変化が見られる。今、時計愛好家が注目しているのが"ネオ・ヴィンテージ"だ。
「ネオ・ヴィンテージとは、電池式の腕時計が登場したクオーツショック以降の’70〜’90年代に製造された時計を指します。普段使いできる実用性がありながら、現行製品にはない手作業の味わいも残されています」
昨年末のオークションでは、91年製のカルティエ「クラッシュ」に約2400万円の値がついた。今後の動向は、その注目次第だが、まだ割安感があるという。そのため、投機対象としてもネオ・ヴィンテージ市場の動向には目が離せない。
家具やインテリア用品は好みの多様化が顕著だ。マスターピースのみを探すコレクターもいれば、ルーシー・リーやイサム・ノグチを熱心に集める人もいる。昨年は、ジャン・ロワイエのウォールライト「Liane」が予想額の2倍以上となる約2億円で落札。今、ジャン・ロワイエをはじめ、ジャン・プルーヴェ、シャルロット・ぺリアンといったフランスミッドセンチュリーの作品が若いコレクターたちに大人気なのだという。
勢いを増すワイン市場は王様ロマネ・コンティがやはり強い。比較的新しい時代のワインにも値がつき、今年5月には’99年のDRCアソートメントが約730万円の落札価格を記録した。「目利き力を高めるには、柔軟な感覚で視野を広げ、幅広い時代やジャンルのモノに接するしかありません。そして、一度や二度、購入に失敗しても、めげずにチャレンジを続ける。これが価値あるヴィンテージを入手する秘訣ですね」
クリスティーズ ジャパン
時計部門統括・時計スペシャリスト 玉置雅司
1979年東京都生まれ。国内の時計店に勤務後、アンティコルムに転職。その後、2016年にクリスティーズに入社。自らも時計や現代アートなどを収集する。