新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論23回。
ESGという新しい投資トレンド
世界的に脱炭素に向けた取り組みが急激に加速しています。
世界の機関投資家の間でも、投資先の温暖化ガス排出量をゼロにするという⽬標を掲げる動きも広がっており、温暖化ガス排出削減に消極的な企業は投資対象から外されるというリスクも⾼まってきています。脱炭素など持続可能な社会を構築することが強く求められるようになった現在、投資にESGという考えを取り⼊れる動きも広がっているのです。
脱炭素にむけた企業の動きとして、アマゾンは脱炭素を進めていく連合(気候誓約のイニシアチブThe Climate Pledge)を⽴ち上げ、そこにマイクロソフトなど世界的な企業が13社が加⼊しました。また2021年3⽉、アップルは製品を製造する⼯場で使⽤する電⼒を、2030年までにすべて再⽣可能エネルギーに切り替えていくという⽅針を発表。それは株価にも影響を与えることになり、⼤きなニュースとなりました。
世界的に、企業や投資家の視線が脱炭素などのESGに強く向けられる状況になってきているのです。
それでは、お⾦のトレーニング。ESGとは何の略でしょうか?
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭⽂字を取ったものです。これからの時代、企業の⻑期的成⻑のためには、ESGが⽰す3つの観点が必要だという考え⽅です。企業経営においてもサステナビリティという考え⽅が重要視され、社会や環境を意識した経営戦略をとることが、企業価値向上に繋がると⾔われる時代になってきています。
続けてお⾦のトレーニング。脱炭素の流れも受けて、株価がこの1年で急上昇したアメリカの⾃動⾞メーカーはどこでしょうか?
答えは、電気⾃動⾞のテスラ。1年前の時価総額の世界ランキングは80位前後でしたが、今年は世界ランキングでトップ10位へと急上昇。ちなみに⽇本で時価総額1位のトヨタ⾃動⾞は、世界ランキングだと40位前後です。
テスラは、イーロン・マスク⽒が2003年に設⽴。マスク⽒は⼦どものとき⼤変な読書好きで、1⽇に2冊の本を読み、またコンピューターにも関⼼が⾼く10歳でプログラミングをマスターし、12歳の時には⾃作のゲームソフトを売り500ドルを⼿にしています。
そんなマスク⽒の率いるテスラは、電気⾃動⾞開発でたくさんの苦難を乗り越えながら技術開発をどんどん進め、⾼級モデルに加えて、量産型の⼩型セダンの開発にも成功。そこに脱炭素の世界的な流れも受けて、テスラへの投資家の期待が⼀気に⾼まってきているのです。
ウォーレン・バフェット⽒のESG投資への⽅針とは?
また、この連載でも何度も登場している世界的に有名な投資の神様、ウォーレン・バフェット⽒。バフェット⽒はESG投資についてどういう⽅針なのでしょうか。
“Our favorite holding period is forever.”(好きな株式保有期間は永遠です)
“Only buy something that youʼd be perfectly happy to hold if the market shutdown for 10 years.”(10年間、その市場が閉鎖しても喜んで持ち続けられる株だけを買うのです)
ウォーレン・バフェット⽒の⾔葉です。
彼は、⾵⼒発電などの再⽣可能エネルギーに巨額の投資を⾏っていますが、その理由は単純にESGに取り組んでいる企業だからではなく、持続的に利益を上げ続ける企業だからだと考えます。持続的に成⻑し、利益を上げ続ける可能性の⾼い企業を⾒極め、その企業の株を⻑期保有すること、それがバフェット⽒の投資の前提なのです。
それではお⾦のトレーニング。アフターコロナの2020年夏、バフェット⽒は⽇本の複数企業に⼤型出資をして話題となりました。それは⽇本のどういう企業でしょうか?
答えは、⽇本の総合商社⼤⼿5社。伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅で、それぞれ時価総額の5%程度の株式を取得したのです。それは投資額としては、約6000億円にもなります。
その後、三井物産は2021年中にも海外⽯炭⽕⼒発電事業からの撤退を決めています。バフェット⽒が、脱炭素やESGの観点を投資判断としてどうとらえているか、今後もその動向に注⽬すると、⾃分が投資判断をするときの知識の武器になります。
それでは最後のお⾦のトレーニング。組織の活動パフォーマンスを評価するときに、経済的側⾯・環境的側⾯・社会的側⾯の3つの軸で評価をするフレームワークを何というでしょうか?
答えは、トリプルボトムライン。企業の決算書の最終⾏であるボトムラインに、環境や社会の要素を加えることで、より広い意味での企業の利益を定義するという考え⽅です。
インターネットの普及もあり、トレンド発⽣からその浸透の速度が世界的に加速しています。持続可能な社会をつくる。そういう世界的トレンドを素早くキャッチし、それが⼀過性のトレンドなのか、⻑期的なトレンドなのか? また世界の投資や消費にどういう影響をあたえるものなのか? その中で⾃分は投資や消費についてどういう⾏動をとるのか? ということを常に考えること。そうすることで、お⾦について⾃分で考えられる習慣がつき、そのお⾦の習慣こそが、⾃分の⼈⽣をサステナブルに輝かせる強い武器となるのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。