新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論12回。
国語・算数・理科・社会・金融という世界へ
明治5年、1872年に発布された「学制」により日本の義務教育の歴史は始まりました。
義務教育制度が導入された背景には、富国強兵があります。欧米諸国に対抗するためには国民に教育を施し、国を強くすることが重要と考えたことがきっかけだと言われています。学制と併せて「被仰出書(おおせいだされしょ)」が発せられ、教育理念が示されました。そこには、身分や性別に関わることなく平等に教育を受けることを推奨し、教育を受けることで将来豊かに暮らすことができるといった内容が書かれていました。
この義務教育の制度が始まった1872年の4年後、あるものを持ち歩くことが禁止されたのですがそれは一体何でしょうか? それは「刀」です。刀は武士の命ともいえるものでしたが、時代が変わるとともにその価値観も変わり、武士という身分制度自体もなくなり、学ぶべきことも変わっていきました。1876年廃刀令が出された1年後、1877年には東京大学が設立されています。
社会の動きや時代の流れ、それに応じて求められるものは変化します。最新の学習指導要領で、小学校においてもプログラミング教育が導入されますが、プログラミング教育の導入はパソコンのスキルを身につけるということだけが目的なのではなく、プログラミング的思考、つまりは「物事を順序立てて考え、試行錯誤し、物事を解決する力」を養うという目的もあります。これには、今回の学習指導要領が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱からなる資質・能力を向上させることを目的とした内容になっているという背景があります。
英語教育、プログラミング教育に続く新しい日本の教育は金融教育だと思っていますが、金融教育も単なる知識だけではなく、お金の基礎となる考え方が重要になってきます。
それでは、お金のトレーニング。日本でも高校生の新学習指導要領で金融教育が導入されることが発表されました。導入はいつからスタートでしょうか?
答えは2022年。そこが金融教育元年です。今中学2年生の子供たちは、高校で金融教育の授業をしっかりと受けることになります。現代社会で生きている限り、お金と人生は切っても切り離せるものではありません。お金は目的ではなく、お金は人生を輝かせるための手段です。金融教育、つまりお金の勉強と言うと、投資テクニックなどを連想してしまうことが多いかもしれませんが、まずは基礎となるお金の基礎を理解することが大事です。その上で、投資などの資産運用や、日々の生活に近い保険・住宅・年金のこと、家計管理方法などの知識を身につけることが正しい順序になります。
私は金融教育を提供する会社の経営者でもありますが、また同時にスタートアップという急激な成長を目指すことが使命である会社を創業した起業家でもあります。私自身も特に起業家になってみて、事業会社、金融機関、投資家、消費者、社員、取引先、国・地方公共団体などとのお金の流れについて、身をもって学ぶことができ、より物ごとを大局的に考えられるようになりました。事業会社は世の中に「価値」を提供して「対価」を受け取ります。当たり前のことですが、目の前の仕事に集中すれば集中するほど、その本質を見失うことも多いのかもしれません。仕事をこなすことが仕事になり、手段が目的化してしまうのです。
最後にお金のトレーニングです。「人の価値は、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」、この言葉にはお金の基礎となる考えが含まれていますが、これは誰の言葉でしょうか。
答えは、相対性理論で有名なアインシュタインです。
また以前の連載でもアインシュタインの言葉として、「複利こそが人類最大の発明である」を紹介しましたが、基礎とテクニックは両方大事だということです。お金の考え方の基礎を理解し、その基礎の上に例えば複利のようなお金の知識・技能を身につけること、それがお金を学ぶ上で欠かせない金融教育の根幹であると強く思います。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。'19年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。