大豪邸であれ、別荘であれ、はたまた別宅であれ、素敵な家からはなんともいえない"味わい"が滲みでている。家主が自身の人生をどう捉え、どんなライフスタイルを送りたいのかがその家に反映されてこそ、独特の味わいは生まれる。今回ご紹介するのは、その味が溢れ出ている家ばかり。そして、家主たちは揃いも揃って豊かな、充実した日常を送っていた。さて、あなたの家にはどんな味が備わっていますか?
本当に必要なものだけを。これが自分の別荘ライフ集大成
生い茂る木々に脈々と続く軽井沢の別荘文化を感じさせる静かな場所。そこに、サイバーエージェント代表取締役社長・藤田晋氏の別荘はある。
「年を重ねるごとに、遊びについても生活についても、先輩たちの言葉はたいてい正しいと日々実感するようになって。海外はやっぱりハワイだとか、40過ぎたら疲れが残るだとか(笑)。だから、そんな先輩たちがこぞって選ぶ軽井沢も、きっと本当だろうと思っていたんです」
とはいえ、すでに成熟している軽井沢文化。正直怖さもあったという。
「例えれば銀座のクラブのように、僕のような若造が来るのはまだまだなのではと思い、土地だけ購入して、いい時期がきたら建てようと思っていました」
ところが、軽井沢の土地をよく知り、藤田氏の秋谷の別荘や東京の自宅の設計も手がけた建築家・坂倉竹之助氏に、土地探しのアドバイスをもらううちに「建てたくなってしまった」。
「アットホームな感じなので団結が深まるのか、1泊の合宿でも普通の会議より効果抜群。協力的に話がすすむのは、ホームアドバンテージで僕が有利な立場だからかも(笑)」
またサイバーエージェント麻雀部監督(!) として思う存分打ち込めるのが、麻雀卓2台を置く麻雀ルーム。昨年「麻雀最強戦」で優勝。最強位を獲得し、麻雀熱はさらに加速。試合前はこの麻雀ルームにプロを呼んで特訓するほどだ。
そのほかにも、邸内にはともに映画好きという奥さまと一緒に観ることも多いシアタールームや、スカッシュコートも完備。
「実は昔、会社を売却し引退した経営者に呼びだされ、彼が昼間からスカッシュをしているジムでミーティングしたことがあって。彼がこの生活は自分に対するご褒美だと言っていた姿に、スカッシュと成功した経営者のイメージが重なっていて、つくってしまいました(笑)」
実はすでに本誌でも紹介したように、国内外に数カ所の別荘を所有する藤田氏。その別荘づくりの経験や反省を経て、本当に必要なものや自分が別荘に何を求めているかがわかってきたという。
「別荘を"迎賓館"として建てる方もいますが、僕は"迎賓"しないので(笑)、使うのは役員合宿ぐらい。となると、『ゲストルームはなんとなく2部屋ぐらい?』という選択は一番中途半端。つくるなら5部屋は必要になる。そうやってわかった自分の別荘でのライフスタイルを反映しています。結果、ここは僕にとって、本当に必要なものだけを入れた、自分の集大成的な家になっていると思います」
妻の宏美さんも「東京では常に何か考え事をして、話しかけてもうわの空のようなこともあります(笑)。でもここだと、主人の表情も確実に柔らかくなって、ゆっくり話ができる雰囲気になります」と話す。どれだけ気に入っているかは
「ここが第二の家になるのが理想」という藤田氏の言葉を聞けばわかるだろう。その思いを強くしたのは、やはり家族の存在だ。
「子供ができて、これまでとは違うライフスタイルになって。子供と犬が遊べる広い庭があり、家族で静かに過ごせる場所であることが一番大切なんです」
インタビュー中もパパのそばを離れたくない大門くんに、優しく話しかける藤田氏。
常に走り続ける経営者の心を丸くさせるのは、この別荘と、ともに過ごす家族の溢れる笑顔があるからに違いない。
DATA
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町
敷地面積:6577.74平方メートル
延床面積:1048.05平方メートル
設計者:坂倉竹之助
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造