脳を目覚めさせ、リセットさせる驚きの手技との静かなる対話
東京・港区白金の閑静な高級住宅地。正真正銘の隠れ家という佇まいのドアを開くと、山﨑達也氏とシャンプー台が出迎える。華美ではなく、ブラウンを基調とし落ち着く空間。このヘッドスパ「BOLANGE」で山﨑氏はクライアントの身体の声を聞いていく。山﨑氏ともの言わぬ身体の静かなる対話。この“見立て”に、クライアントは心の奥底を覗かれたかのようにドキリとするのだ。
ベースは兵庫県芦屋にあるサロン。経営者や著名人、セレブリティたちが噂を聞きつけ、山﨑氏の施術を受けるために芦屋に通うなか、「東京でもやってもらえないか」という声が上がった。そこで、2021年7月から、東京に月に1週間だけ完全紹介制のサロンを開業した。
そんな山﨑氏の手技に絶大な信頼を寄せるのが放送作家・脚本家で、自らの会社を経営する小山薫堂氏だ。
「僕は入浴文化を“湯道(ゆどう)”と呼んで啓蒙していますが、山﨑さんいわく『僕はヘッドスパを“頭道(ずどう)”だと思って取り組んでいます』と。定期的にヘッドスパに通っているのでどんなものかわかっているつもりだったけれど、ここは衝撃的ですぐに虜に。ヘッドスパというより“ブレインスパ”。脳が目覚め、リセットできる感じ。半端じゃないリフレッシュ感があります」と小山氏は言う。
頭を触っただけでその人の生活スタイルや気質がわかるという山﨑氏。美容師時代からシャンプーと頭部のマッサージには誰にも負けない自信があり、それを極めようと研鑽を積んだ。
「身体的疲労回復(ウェルネス効果)、精神的疲労回復(リラクゼーション効果)、美容効果を同時にかなえるのが、僕のヘッドスパ。マイナスをゼロに戻すのではなく、100を1000にするために、顧客の持つポテンシャルを最大限に引きだすのが使命だと思っています」
コロナの影響で休止中だが、ニューヨークやロサンゼルスで技術講習会を開催する。
「日本人美容師が海外を渡り歩くために、この技術を武器にしてくれたら嬉しい。将来は、定期的に通うミャンマーで貧困層の子供たちにも教えられたらと思います。手に職をつけ、生きる術(すべ)にしてほしいですね」
顧客を生き生きと蘇らせることで自分も幸福感を得られるこの仕事は、山﨑氏にとって天職。その幸せを分かち合うべく、グローバルな技術継承、人材育成にも意欲的だ。
Kundo Koyama
1964年熊本県生まれ。放送作家、脚本家、地域・企業のプロジェクトアドバイザーなど多彩なジャンルで活躍中。京都芸術大学副学長、下鴨茶寮主人、湯道文化振興会 代表理事、2025大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーも務める。