想像を絶した未曾有の事態のなかで、今なお続く、さまざまな不安と混乱ーー。だが、こんな有事の時だからこそ、平常心を保つことこそが、今をベストにし、明日を切り拓く一番の鍵になる。自律神経の名医、小林弘幸・順天堂大学教授が説く、最先端の医学に基づいたピンチをチャンスに変え、150%のパフォーマンスを引き出すための極意。2011年の記事を一部抜粋して再編集。
平常心を保つ自己防衛法
「ゆっくり早く」という、手術における外科医のノウハウの如く、落ち着いて呼吸をすると、副交感神経が働いて交感神経優位の状況を改善し、周りが見えるように なります。呼吸法は、自律神経を鍛える方法としてとても有効なんです。人は、不安やストレス、怒りなどのネガティブな感情に襲われた時、必ず呼吸が浅くなっている。すると、副交感神経の働きが下り、平常心を失うだけでなく、血液が滞り、身体の調子まで悪くしてしまう。そこで、「あ、まずい」と思った時は、1対2の呼吸をすること。1で吸って、2〜3倍の長さで吐く。別に腹式呼吸など難しいことは気にしなくていい。とにかく1で吸って2〜3で吐く。これを3回繰り返せば大丈夫です。
自律神経を鍛える方法は他にもさまざまありますが、ヒーリング効果のある音楽や適度な日光浴、食事の内容によっても自律神経のバランスを整えることができます。香水やアロマなどの香りも高い効果があって、 私も状況に応じて使い分けています。ヨガや鍼ももちろんいいですし、単純に笑うだけでも効果があります。 シンプルなところで言えば、朝、寝坊をしてしまったら、慌てずゆっくり歯を磨いてください。慌てると無意識のうちに呼吸を止めてしまって、交感神経が高まり副交感神経がどんどん落ちているんです。意識してゆっくり落ち着いて歯を磨くと、自律神経のバランスを整えることができます。
HIROYUKI KOBAYASHI
順天堂大学医学部教授。ロンドン大学附属英国王立病院、アイルランド・トリニティ大学附属病院、順天堂大学医学部小児外科助教授を経て、現職。専攻は、外科学、スポーツ医学、リスク管理学など。また、多くのトップアスリートに「150%のパフォーマンス」を引き出すための助言も多数行っている。著書に『死ぬまで“自分”であり続けるための「未来日記」』『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』『「これ」だけ意識すればきれいになる。自律神経美人をつくる126の習慣』がある。