2024年も残りわずか。PGAツアーでは非公式大会ながらタイガー・ウッズがホストを務めるヒーローワールドチャレンジが終わり、今シーズンの日程が終了した。そこで今回は今シーズン活躍した選手を振り返ってみたい。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
安定した強さを見せたシェフラー
PGAツアーでは、年間最優秀選手に贈られる「ジャック・ニクラウス賞」を選手間の投票で決めている。2024年シーズンはスコッティ・シェフラーが選手投票で91%という圧倒的支持を得て、タイガー・ウッズに続く2人目の3年連続受賞を果たした。
年間最優秀選手賞にノミネートされたローリー・マキロイとザンダー・シャウフェレも記憶に残る戦いぶりだったが、シェフラーの圧倒的な強さが際立った1年だった。
シェフラーは高額賞金のシグネチャー大会8試合中4試合を制し、ザ・プレーヤーズ選手権、マスターズ、パリ五輪、プレーオフ最終戦のツアー選手権も勝って年間王者を獲得。
ヒーローワールドチャレンジも制して年間9勝を挙げ、勝たなければならない試合をことごとく押さえたという印象だ。
2024年は予選落ちは一度もなく、出場21試合中18試合でベスト10という成績を残し、タイガー・ウッズの全盛期さえも彷彿させる活躍ぶりだった。実際、PGAツアーのシーズン7勝は2007年のウッズ以来だ。
12月5日から行われたヒーローワールドチャレンジでも、最終日は1打差の2位スタートだったものの、ボギーなしの9バーディー63をマークし、首位スタートのジャスティン・トーマスを圧倒。
首位の座を奪った後は他の選手を突き放し、終わってみれば2位に6打差をつけての優勝だった。
シェフラーはこの大会で新たにクローグリップを採用してパッティングをしていた。
長いパットでは今までどおりに握っていたが、短いパットではクローグリップ。2025年シーズンのシェフラーのパッティングがどうなるのかも楽しみの一つとなった。
シェフラーはストロークス・ゲインド・パッティングのスタッツが77位と、ショットのスタッツに比べて低いが、パッティングが向上すれば鬼に金棒になる。
進化への歩みを止めないシェフラーと表彰式で並んだ大会主宰のウッズも、かつての自分の姿を彼に重ね合わせていたのではないだろうか。
シェフラーの強さはスタッツにも現れている。
平均ストロークは68.65を記録して1位となり、平均ストロークが最も少ない選手に贈られる「バイロン・ネルソン賞」を2年連続で獲得。
スコアの貢献度を表す「ストロークス・ゲインド」のショットに関するスタッツは素晴らしく、ティーショットとグリーンを狙うアイアンショットに関して高レベルのスタッツを残した。
特に50ヤードから125ヤードのストロークス・ゲインド・アプローチ・ザ・グリーンのスタッツは1位を記録し、ウェッジのフルショットやコントロールショットの精度は非常に高かった。
シェフラーは120ヤード付近からウェッジで毎回のように1ピン以内に寄せていたが、このようなショットを打てると、短いパー4のセカンドショットや、パー5の3打目を寄せてバーディーを奪うことが計算できる。
そのため、無理に攻めない余裕をもったコースマネジメントが可能となっていた。
メジャー2冠のシャウフェレと欧州で活躍したマキロイ
2024シーズンのMVPにノミネートされたローリー・マキロイとザンダー・シャウフェレも充実のシーズンとなった。
マキロイは今季のPGAツアーに19試合に出場し、チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオリンズとウェルズファーゴ選手権で2勝。
DPワールドツアーでも最終戦のDPワールドツアー選手権 ドバイで勝利し、3シーズン連続6度目の欧州ツアー年間王者に輝いた。
35歳になっても相変わらずPGAツアー2位の320.2ヤードの飛距離を誇り、成績も安定しているが、念願のキャリアグランドスラムを達成するためにも、2025年はマスターズのタイトルを手にしたいところだ。
一方、シャウフェレは22試合に出場し、メジャー初制覇となる全米プロゴルフ選手権と全英オープンを制してメジャー2勝を挙げ、ファンに強烈な印象を残した。
シャウフェレの好調の原因は、2023年11月からタイガー・ウッズの元コーチ、クリス・コモのもとで進めてきたスイング改造の成果だ。
トップ・オブ・スイングの位置を変え、肩の回転がフラットになったことで手の詰まりが改善。これによって、以前より飛距離と方向性が向上している。
コモはバイオメカニクスをティーチングに取り入れ、効率的な体の動きを重視する。タイガー・ウッズに体の負担が少ないスイングを指導して復活へと導き、ブライソン・デシャンボーのスイング改造に協力したことで有名だ。
約2年間勝てていなかったシャウフェレをメジャー2勝に導いたのは、彼の功績と言っていいだろう。
2024年シーズンの日本人選手の活躍に触れておくと、松山英樹がパリ五輪で日本男子初のメダルとなる銅メダルを獲得し、8月のフェデックスセントジュード選手権などで2勝を挙げ、PGAツアー10勝となった。
2025年の活躍も楽しみだが、そろそろ松山に続いて優勝する日本人選手が出てきてほしいところだ。
シェフラーのウィークグリップのポイントはリリースのタイミング
シェフラーのスイングは現代のトレンドとは異なる部分が多い。
グリップはウィークで、フェースも少しオープンになっている。最近のクラブは重心距離が長く、フェースを開閉しないスイングが向いていることもあり、フックグリップでフェースの開閉を抑えてスイングしている選手が多い。
しかし、人によって体の骨格や使い方によってスイングが変わるのは当然で、シェフラーのようにウィークグリップでフェースを開閉したほうがスイングしやすい人もいる。
フェースを開閉させるスイングで重要なのは、リリースのタイミングだ。
クラブを早めにリリースしてダウンスイングからインパクトにかけてフェースを閉じていく必要がある。
シェフラーを指導しているダラスの名コーチ、ランディ・スミスがリリースの動きを覚えるために取り入れているドリルがある。
両手を少し離してクラブを握り、左腕が地面と平行の高さから、クラブが地面と平行になる高さまでクラブを振り下ろす。クラブを止めたときにシャフトがしなるようにスイングすることがポイントだ。
シャフトがしなるように振ることで、クラブをリリースするタイミングをつかむことができる。
ちなみに、ストロンググリップの人はこのドリルを行うとリリースが早まって左に曲がる球が出やすくなるので注意してほしい。
ウィークグリップでフェースがオープンになるスイングタイプの人は、早めにクラブをリリースすることでインパクトに向かってヘッドが走り、ボールを捕まえやすくなる。
ウィークグリップのほうがスイングしやすいという人は、このドリルでリリースの感覚を身につけてほしい。
動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。