2024年のシニアツアーの振り返りとともに、スティーブン・アルカーのように左サイドを適切に使って方向性を改善させるためのドリルを紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
年間王者もかすんだランガーの47回目の優勝
50歳以上の男子選手が参加する米シニアツアーのPGAツアーチャンピオンズ。
2024年11月10日に最終戦のチャールズ・シュワブ・カップ選手権を終え、53歳のスティーブン・アルカー(ニュージーランド)が年間王者のタイトルを獲得した。シーズン最終戦の優勝は逃して2位タイとなったものの、大会前に年間王者争いでトップに立っていたアーニー・エルス(南アフリカ)を逆転し、アルカーは2度目の栄誉を手にしたのだ。
2023年の米シニアツアーはスティーブ・ストリッカーの独走状態だったが、2024年はエルスにアルカー、スティーブン・エイメス(カナダ)、パドレイ・ハリントン(アイルランド)らポイントランキング6位までは優勝すれば年間王者を手にできるという混戦状態。
惜しくも最終戦は1打差で優勝を逃したが、アルカーは年間を通して優勝1回、2位が5回と安定した成績を残した。
最後に逆転を喫したエルスは、長年の課題だったパッティングが改善し、シニアメジャーを初めて制したシーズンだっただけに悔しい最終戦となった。
2024年のシーズン最終戦は年間王者よりも、優勝したランガーにスポットライトが当たった。
67歳でエイジシュート(自分の年齢以下の打数でホールアウトすること)を連発し、18年連続勝利を達成、47勝目というシニアツアー最多勝利記録を更新。ランガーの鉄人ぶりにアルカーの年間王者の輝きもかすんでしまったのだ。
しかし、さすがのランガーも2024年は老いを感じさせるシーズンだった。2月の練習中にアキレス腱を断絶して3ヵ月半の休養を余儀なくされ、その影響で思うような結果が出せずにいた。
7月以降はアッセンション・チャリティ・クラシックでプレーオフの末に2位タイに終わった試合を含め、出場5試合連続トップ10入りと調子を取り戻したかのように見えた。
だが、ランガー本人は、今まで最終戦で良いプレーをしたことがないことから、最終戦の練習日に長年キャディーを務めるテリー・ホルトに「今年は勝つことができなかった。もうあと1試合しかない」とこぼしていたのだという。
しかし、最終戦は2日目に64、3日目に67と2ラウンド連続でエイジシュートを達成。最終日は最終ホール18番で約10mの下りのスライスラインを沈めてバーディ。1打差の18アンダーで後続を振り切った。最終日も66をマークし、3日連続のエイジシュートを達成しての勝利となったのだ。
もし、最後のバーディパットが入っていなければアルカーとグリーンに並ばれ、決着はプレーオフに持ち込まれるところだった。
年齢や体力を考えると不利な状況に追い込まれていたかもしれないが、こうした勝負どころで結果を残すのも百戦錬磨の貫録といったところだろう。
来季のフルシードをつかんだ藤田
日本のファンにとってうれしかったのは藤田寛之の活躍だろう。
藤田は6月の全米シニアオープンで単独2位に入ったこともあり、プレーオフシリーズ初戦のドミニオンエナジーチャリティクラシックに出場できる72位以内のポイントランキング45位でプレーオフに進出。
初戦は43位タイの成績で、ポイントランキングは51位と後退したものの、プレーオフ2戦目に出場できる54位までに残った。
第2戦のシモンズバンク選手権では、パターが面白いように入って3位タイの好成績をおさめ、ポイントランキングは51位から32位にジャンプアップし、最終戦のチャールズ・シュワブ・カップ選手権に出場できる36枠に滑り込んだ。
36位以内の選手は最終戦に出場できるだけではなく、来季のフルシード権が与えられる。
最終戦は26位と残念ながら優勝争いには絡めなかったが、シード権獲得は快挙と言っていい。
全米シニアオープンの2位とシモンズバンク選手権の3位タイという2回のトップ3フィニッシュにより、わずか5試合の出場でポイントランキング32位となり、効率よく翌シーズンのフルシード権を獲得したのは称賛に値する。
2025年は米シニアツアーを主戦場にすると明言しているので大いに期待したい。藤田のゴルフに真摯に向き合う姿勢があれば、アメリカの地でも日本のファンを喜ばせるような活躍を見せてくれることだろう。
アルカーのように左腕を意識すれば再現性が高まる
年間王者のアルカーのストロングポイントは正確なショットだ。
アルカーはショットを打つ前に、左手でクラブを持ってアドレスに入るルーティンを行う。アルカーのように左サイドを意識してスイングをすることで、スイング軌道が安定しやすくなるので参考にしてほしい。
今回はアルカーのように左サイドを適切に使うためのドリルを紹介しよう。
左手や左腕の使い方を身につけるには、左手一本のスイングが最適だ。だが、むやみに左手でクラブを振るのではなく、左腕を固定した状態で体の動きに合わせてスイングをする感覚を身につけよう。
練習ドリルでは、アドレスで左手でクラブを持ち、左わきを締めながら左上腕部を右手で押さえ、左腕を自由に動かせない状態で構える。
少し窮屈に感じる状態で、腕を振らないように意識しながら体の回転に合わせてクラブを振ってみよう。最初は小さな振り幅から始め、少しずつ振り幅を大きくしていく。足踏みをするように下半身を連動させることで、体が動かしやすくなる。
バックスイングで左腕が地面と平行のポジションまでクラブを上げる振り幅になったら、手首を親指側に折り曲げてクラブを立てるコッキングの動きを入れるようにしてスイングをしてほしい。
左手を意識するために、日常生活のなかで左手でカバンを持ったり、物をつかんだりするのもいい。左の手や腕を意識して使えるようになれば、スイングの再現性も高まり、方向性も安定してくるはずだ。
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◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。