吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回はアマチュアゴルファーが参考にすべき、ネリー・コルダの脱力スイングを紹介する。
アマは完成度No.1ネリー・コルダの脱力スイングを見習うべき!
今、最強の女性ゴルファーは誰かと尋ねられたら、ほとんどの人がネリー・コルダと答えるだろう。
2024年4月21日に女子メジャー初戦のシェブロン選手権で優勝し、出場5試合連続優勝を達成した。この記録は、1978年のナンシー・ロペス(アメリカ)、2005年のアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)以来3人目の快挙だ。
世界ランク1位、賞金ランク1位という成績が示すとおり、彼女の強さは本物だ。そして、彼女のスイングの完成度は、男女合わせてもNo.1といってもいいほど。
無駄がなく、流れるようなスイングは何度繰り返し見ても飽きないほど洗練されている。
コルダがスポーツ一家で育ったことは有名だ。
父、ペトル・コルダは元テニス選手で、1998年の全豪オープン男子シングルスの優勝者。母、レジナ・コルダも元テニス選手で1988年のソウル五輪に出場した。
さらに5歳年上の姉のジェシカ・コルダもプロゴルファーで、米ツアー通算6勝を挙げ、2021年の東京五輪には米国代表として姉妹で出場を果たした。
2歳年下の弟のセバスチャン・コルダはプロテニス選手で、2018年全豪オープンのジュニア男子シングルスで優勝した経験があり、ツアーでも1勝を挙げている。
ネリー・コルダがゴルフを始めたのは姉の影響で、姉の後を追ってコースで真似をしているうちにゴルフを始めたのだという。2013年の全米女子オープンに14歳で出場すると、2016年にプロ転向した。
その年の米下部ツアーで賞金ランク9位となり、レギュラーツアーのシード権を獲得。初優勝は2018年のスウィンギングスカート台湾選手権で、米ツアー3組目の姉妹Vとして注目を集めた。
この頃は「ジェシカの妹」と言われることが多かったが、その後は2021年の全米女子プロでメジャー初優勝を飾って世界ランキング1位になると、そのままの勢いで東京五輪の金メダルを獲得して一気にトップ選手に躍り出た。
ところが、2022年4月に腕が腫れたため受診したところ、左鎖骨付近に血栓が見つかった。手術後、約2ヵ月間離脱したが、11月のペリカン女子選手権で優勝。そのまま復活かと思われたものの2023年は1勝もできなかった。
血栓の手術を乗り越えて復活
勝てない間、ネリー・コルダは相当悩んだようだ。
5連勝を果たしたシェブロン選手権では、「もうメジャーで勝てるかどうかわからないという声も多く耳にした。あの頃は自分の健康に不安があり競技は後回しだった。健康上の不安や悲しい時期を乗り越えて今の自分がある」と当時を振り返っていた。
病気を克服した後、復活を目指して彼女は相当の練習を積んだことだろう。そうした彼女の努力が素晴らしいスイングを作り上げ、5連勝へと導いたに違いない。
シェブロン選手権の初日は猛暑だったが、その後は大雨となり、最終日は強い北風が吹くなど目まぐるしく変わるコンディションが選手たちを苦しめた。
しかし、コルダは2日目の8番から最終日10番までの39ホール連続ボギーなしにするなど、安定したプレーでスコアを伸ばした。
終わって見れば4日間すべて60台はコルダただ一人。通算13アンダーで2位に2打差をつけての勝利だった。3日目まで首位が連日変わり、他の選手を追いかける展開だったが最後は勝利を手にしたのだ。
コルダのスイングの素晴らしいところは動きのスムーズさと脱力感だ。
コルダの場合、切り返しで左足を踏み込む動きが非常にスムーズで素早い。この動きがあまりにスムーズなため、踏み込み動作をせずに切り返しているように見える。
さらに、ダウンスイングからフォロースルーにかけて手や腕に力が入っておらず、クラブの遠心力をうまく使っている。これはダウンスイング後半でクラブをリリースしているからだ。
フォロースルーでグリップエンドが飛球線後方を向いていることからも、クラブを投げるような感覚でインパクトを迎えていることがわかる。
脱力感を身に着ける放り投げドリル
コルダのようなリリースを身につけることは簡単ではないが、リリース動作を身につけることができればスイングの再現性だけではなく飛距離も伸びる。
コルダのような力の抜けたリリースを身につけるクラブ投げドリルを紹介しよう。
クラブ投げドリルとは文字どおりクラブを目標方向へ放り投げるドリルで、インパクト前に手を離してクラブをリリースする。
シンプルな練習法だが、アマチュアゴルファーで目標方向に真っすぐクラブを飛ばせる人は少ない。大抵のアマチュアゴルファーは目標の左や後方にクラブが飛んでしまう。
このような状態になる人はインパクトの瞬間にクラブをリリースしようとするため、クラブを離すタイミングが遅くなり思った場所にクラブを飛ばすことができない。インパクトの直前ではなく、ダウンスイング中盤の右腰周辺にクラブが下りてきたタイミングでリリースすることが必要になる。
タイミングが早すぎると感じるかもしれないが、実際に早めのタイミングでリリースをしてクラブが飛んでいく方向を確認してみてほしい。今までインパクトまでクラブを握りしめていた人は、いかに自分の感覚がズレていたのか気づくだろう。
ぜひ、クラブ投げドリルでリリースの感覚を身につけてほしい。ただし、くれぐれも周りに人がいないことを確認し、安全には十分気を付けよう。
動画解説はコチラ
吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。