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GOLF

2021.12.25

タイガー・ウッズから学ぶ、戦略的スイング構築──連載「吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン」Vol.173

多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎です。この連載ではスコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝えていきたいと思います。
先週開催されたメジャーチャンピオンが親子で出場する非公式競技「PNC選手権」においてタイガー・ウッズが息子のチャーリー君と出場し、トータル25アンダーで2打差の2位となりました。タイガー本人はPGAツアーの競技レベルに復活するにはまだ時間がかかるという見解を示していましたが、順調に復活への道のりを歩んでいることがわかりました。
今回は完全復活が期待されるタイガー・ウッズのゴルフの取り組みを「PGAツアー超一流たちのティーチング革命」から一部抜粋し、再構成した記事としてご紹介します。ゴルフに対する考え方をアップデートすることでゴルフ上達に役立てていただきたいと思います。

【4段階を経たタイガーのスイング構築】

タイガーのスイング構築には年代ごとに、スイングを変える意味やテーマを読み解くことができます。タイガーはスイング構築において「飛距離」「正確性」「再現性」「超越性」の4つの段階を経てきました。
ブッチ・ハーモンのもとで「飛距離」を武器に勝てるゴルフの基本を身に付け、ハンク・ヘイニーからはフラットなスイングプレーンで「正確性」をベースとしたスイング技術を学び、ショーン・フォーリーの指導で4日間の試合を高いレベルでプレーする「持続性・再現性」をテーマに1年間安定したパフォーマンスで戦い続ける技術を身に付けました。そしてクリス・コモと組むことで自分にとって最も自然な「超越性」をテーマとしたスイングモデルを手にすることができたのです。

私はタイガーがクリス・コモと組むことで必ず復活すると信じ、2016年からアメリカでタイガーが復活する過程を取材してきました。コモの指導するバイオメカニクスを用いたスイング構築法は体に負担が少なく、飛距離を出すことができるため、満身創痍のタイガーにベストマッチだと思っていたからです。
当時のタイガーは度重なる手術や薬物使用による交通事故などで業界関係者も「タイガーは終わった」と言っていましたが、私は一貫して彼の復活を信じました。実際に2019年のマスターズで、オーガスタナショナル、18番ホールのグリーン脇で優勝シーンを目の当たりにしたときは、「やっとこの日が来たか」と万感の思いでした。

タイガーの4人目のコーチであるコモによるスイング改造は、バイオメカニクスに即した科学的見地によるものでした。バイオメカニクスは「生体力学」とも訳され、生物の動作やその仕組みを物理や力学などから解明し、ヒトの動作などに応用しようとする学問です。欧米のゴルフ界ではおよそ10年前に導入されました。コモは、テキサス女子大学大学院に通い、スポーツバイオメカニクスの権威であるヤン・フー・クォン教授からバイオメカニクスを学びました。

バイオメカニクスの登場により、力の向きや使い方を変えることで、体の動きを効率的にし、最大限の力が発揮できるようになりました。それによりゴルフティーチング界では今までの常識が覆る「革命」が起きました。これにより体を酷使するスイングから、力をうまく利用してクラブや体を効率的に使うスイングが推奨され、ゴルフスイングによって怪我をするケースが少なくなりました。タイガーはクリス・コモにバイオメカニクスの知識を学び、新たなスイングに取り入れることで体に無理がかからず、高いパフォーマンスを実現できるスイングを作り上げたのです。

日本の武道や茶道などの修行には、「守破離」という言葉があります。これは修行の段階を示す言葉で、「守」では流派や指導者の教え、型、技を忠実に守り、「破」では他の流派や指導者の教えに触れ、良いものを取り入れて心構えや技を発展させます。そして「離」では1つの流派にとらわれずに独自の境地を生み出し確立させます。

今回の交通事故によるケガからの復活においても、今まで蓄積してきたスイング構築に関する「守」と「破」のスイング構築の知識や経験が大きな助けとなると思います。高校時代からの友人であり、タイガーの所有する会社の役員のロブ・マクナマラにスイングをチェックしてもらいながら、自らスイングを管理して更なる「離」の境地へと高めていくことでしょう。

 【タイガーの逆算思考】

一般的なプロゴルファーのスイングフォームは、一生懸命練習したなかから自分なりの法則に出合い、その流れから培った結果論であることが多く、積み上げ式のスタイルとも言えます。
しかし、タイガーはプレーしている自分の理想像があり、それに必要な指導者と習得方法を選ぶ、いわば戦略思考によるスイングの変更です。目的をしっかり定めて自らプランニングし、それに対して自分が何をすべきで、どんなコーチを選ぶべきかという明確なロジックを持っていました。最初にビッグピクチャーを描き、そこからやるべきことを落とし込む方式です。

これはビジネスの世界では普通のことかもしれませんが、スポーツの世界では切磋琢磨して方法論を自分で見つけて上達するということが半ば常識ですので、タイガーのような戦略思考法はかえって珍しいかもしれません。

ただ彼は、5歳のときから父親にコーチを付けてもらっていたことで、上達のための方法論を幼い頃から身に付けていたというアドバンテージがありました。タイガーの戦略思考は父親の英才教育から始まっていました(参照:『トレーニング ア タイガー』アール・ウッズ著/小学館)。父親のアール・ウッズは米陸軍特殊部隊グリーン・ベレー所属の軍人でした。軍隊では兵士それぞれが任務を着実にこなすことが求められます。そして熟練者や有能者が兵士を教育します。アールも息子が本格的にゴルフに取り組むなら、「ゴルフが上手な人に教えてもらうよりも、しっかりとした技術を持ったプロに教えてもらったほうが効率的」と考えたのでしょう。
軍事作戦において、戦略や戦術が明確ではない作戦は死につながります。攻撃目標と違うところを攻め込んでしまっては軍事力そのものが強くても全く意味をなしません。ゴルフもただ球を打てばうまくなるわけではない、そう考えた末のコーチの指導だったのでしょう。

タイガーは身体的な資質と才能に恵まれていましたが、子供の頃からのゴルフ教育、そして自分を一からつくり直せることにかけて天才的だったことが素晴らしい戦績を残すことにつながったのだと思います。プロ入り後に3回も大規模なスイング改造を行って、そのたびに勝つことは普通ではありません。天才的な才能と戦略思考があったから成し遂げることができたのです。

かつて、自動車事故から奇跡的に復帰したベン・ホーガンは、その後、全米オープンを制しました。タイガーもレジェンドと同じように障害を乗り越え、奇跡の復活劇を見せてくれることでしょう。

「PGAツアー超一流たちのティーチング革命」

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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