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2021.12.21

常識を疑え! フォーティーンのプロダクトを生む異色デザイナー【世界が認めるゴッドハンドvol.2】

第一線で活躍するトッププロが愛用するゴルフクラブや高機能なゴルフウェア。名品の陰には匠の存在がある。

フォーティーン

手島のペン先に見えるイラストのように、当初はもっと無骨なものだったが、開発部門とやり取りを重ね、TB-5 FORGEDはフォーティーンらしいデザインに仕上がっていった。

シンプルなデザインと秀でた性能で、多くのゴルファーから愛されるフォーティーンのクラブ。創業者の故・竹林隆光は、「クラブは美しくなければならない」「常識を疑え」などの金言を残しているが、いまでもその教えを守りつづけているということなのだろう。

昨年発売されてヒットした、かつてない形状のアイアン、TB-5 FORGEDも、その例に漏れない。アイデアは、商品企画を担当した営業部・池田純のゴルファー目線から生まれた。

フォーティーン

TB-5 FORGEDのモックアップ(左)と完成品(右)。

フォーティーン

斬新な形状により、難しそうに見えながら、じつはやさしいアイアン「TB-5 FORGED」。

「多くの人は、難しいクラブでミスしても、当たり前と思って落胆しませんが、やさしいクラブでミスするとガッカリします。ならば、マッスルバックのような見た目で、かつキャビティバックのようにやさしいものをつくればいいのでは、と。それで、本物のアイアンを削り、金属パテを盛ったりしながら、自分の思う形状の模型をつくってみたんです」

しかし、池田はクラブ開発の人間ではない。

「だから、僕の中の『こんな性能だったら』という考えを、開発側に無茶振りした感じですね(笑)。この性能を、このヘッド形状で出してくれ、と。手島さんには、形状へのアドバイスをお願いしました。開発や手島さんは、大変だったと思います」

手島とは、フリーランスのプロダクトデザイナー・手島彰のこと。手島は2007年から、フォーティーンのほとんどの製品の意匠を担ってきたが、商品企画のスタートに近い段階から関わるのは稀だった。通常は、初期形状も性能も決まったクラブにデザインを施す。

フォーティーン

手島(左)とTB-5 FORGEDの商品企画開発を担った、フォーティーンの池田純(右)の名コンビ。

「製品にするのは大変だなと感じましたが、瞬間的に、これは面白いことが起きるかもしれないとも思いました。燃えましたね。下手をすると大失敗する可能性もありましたが(笑)」

もちろん、自信はあった。多くの経験と守備範囲の広い対応力が、手島の真骨頂だ。

「最初は自動車メーカーで1台丸ごと外観デザインを手掛けましたし、次のオフィス家具の会社ではデザイン部門がなくなったことで商品企画もやることになりました。さらに試作品製作会社では、3Dモデリングや造形加工の技術も得ることができた。さまざまな業種の多様な知識が身につきましたし、こういうテーマ、コンセプトだから、こうすればお客様が喜ぶみたいな勘どころも、すぐ掴めるようになりましたね。マーケティング視点の企画者の立場とデザイナーの立場が両方、混在しているんです」

フォーティーン

1989年、自動車メーカー入社直後につくった、10年後を想定した軽自動車のデザインモデル。

手島の能力が工業デザインの枠を超え、性能面のアドバイスにまで及んだこともある。10年以上前に登場し、いまも進化しながら定番化している、ウェッジの逆テーパーブレード形状は、手島が開発側に投げかけたアイデアが発端だ。

手島の手腕は、TB-5 FORGEDでもいかんなく発揮された。開発側とは、池田を通して、性能と形状のすり合わせを繰り返した。池田の模型の粗削りな部分は、洗練されたラインへと変貌したが、それでいて、池田の意図したコンセプトも、しっかりと形状に表現された。その上にはもちろん、フォーティーンならではのシンプルで美しいデザインを載せた。
手島は自らのデザインポリシーを、“適した”という単語で表す。

「フォーティーンで言えば、竹林さんの美意識、精神を常に念頭に置きながら、そこにタイミング、世の中の状況などを組み合わせつつ、フォーティーン社やそのユーザーにとって、いかに“適した”ものをつくるか。単に自分が思う美しさにしてしまったら、それは手島デザイン展に出すようなものになります。自分の作品とは違うんです」

今後、TB-5 FORGEDで採られた製作手順は、スタンダード化していきそうだ。新たにフォーティーンのどんな製品を目にすることになるのか。楽しみに待ちたい。

フォーティーンについてはこちら

TEXT=柴 トシユキ

PHOTOGRAPH=小林 司

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