世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム112回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
フィニッシュは正しいスイングのバロメーター
どんなスポーツでも、フォームを見ただけで「美しい」と感じ、憧れる選手がいるものだ。ゴルフでも思わず見とれてしまう美しいスイングの持ち主がたくさんいる。その中でも、PGAツアーで活躍する、ローリー・マキロイのスイングにあこがれている人は多いのではないだろうか。マキロイのスイングは全体的に美しいが、バランスよくピタッと止まるフィニッシュは秀逸だ。マキロイのスイングには無駄がなく、完成度が高いからこそ、緊張する場面でも毎回美しいフィニッシュをとることができる。スイングが美しく見える選手の条件として、フィニッシュが美しいことは欠かせない。肉眼で確認しやすいスイング動作は、止まっているアドレスとフィニッシュ、比較的動きの遅いトップ オブ スイングの3ヵ所だ。ボールを打ち終えた後のフィニッシュは非常に印象に残るのだ。
多くのプロは毎回同じフィニッシュをとっているが、アマチュアはラウンド中にフィニッシュを取れていないことが多い。アマチュアがフィニッシュをとれないのは、スイング中にバランスを崩してしまったり、ボールを打つことに集中しすぎて、打った後のフォロースルーやフィニッシュまで意識できないということが原因だ。フィニッシュはスイングの完成度を表すバロメーターだ。美しいフィニッシュを身につけて、スイングのレベルアップと同時に、ゴルフ仲間の評価も高めたい。
フィニッシュから逆算すればスイング全体が良くなる
マキロイのように、打ち終わった後に左足に体重が乗り、バランスよくピシッと体が静止したフィニッシュを身につけるためにはどうすればいいのだろうか。
そもそもアマチュアの場合、今までフィニッシュをあまり意識していなかったという人もいるのではないだろうか。フィニッシュを意識していなかった人は、ボールを打つことしか考えず、クラブを振り切っていないことが多い。それでは、フィニッシュがとれないだけではなく、クラブをボールに当てただけとなるため、パワーをボールに十分伝えることができず飛距離もロスする。
そんな人はフィニッシュを意識するために、フィニッシュで止まる練習をすることろから始めてみるといいだろう。今までフィニッシュを意図的に行ったことがない人は、想像以上に体勢がつらいかもしれない。インパクト後の動きに意識を向け、スイング軌道の中でボールをとらえるところから意識してほしい。
フィニッシュを意識できるようになったら、美しいフィニッシュをとるために、「バランス」と「手の位置」を意識して鏡の前でフィニッシュの練習をしてみよう。左足でバランスをとりながら体重を支え、手の位置をできるだけ高い位置におさめて5秒間ほどフィニッシュの位置で静止をしてみる。この時、体はフルターンした状態で、右足はつま先立ちになることも意識したい。体がフィニッシュの動きに慣れてきたら、素振りをした後にフィニッシュをとってみよう。徐々にスピードアップして、フィニッシュでバランスよく止まれるスイングスピードを確認してほしい。普段、強振しすぎてバランスを崩してしまう人は、フィニッシュでバランスを崩さないスイングスピードで振るように心がけてほしい。最後に、練習場でボールを打った後に、フィニッシュでしっかりと止まれるように練習する。ボールの行方が気になると思うが、どこにボールが飛んでもフィニッシュでしっかり止まれるように練習してほしい。
美しいフィニッシュを意識することで、見た目が良くなるだけではなく、ダウンスイングの軌道が改善するというプラスの副産物も生まれる。特にスライサーに大きな効果が期待される。左から右に大きくボールが曲がるスライサーは、ダウンスイングでアウトサイドからクラブを振り下ろすので、フォローでは左ひじが引け、フィニッシュではグリップの位置は低くなる。手が高い位置にある理想的なフィニッシュを作るためには、ダウンスイングの軌道をインサイドから下ろし、フォロースルーでは腕が伸ばすようにしてアウトサイドに振り抜かなければいけない。フィニッシュの手の位置を意識することで、自然とアウトサイド・イン軌道が軽減され、左肘が引けることもなくなりスライスの度合いが少なくなる。フィニッシュで手の位置を高くするだけではなく、シャフトが縦になるようなイメージでフィニッシュを意識するとより一層効果があるだろう。
自らのフィニッシュを意識することに加え、美しいスイングといわれるプロのフィニッシュじっくり観察してほしい。何度も繰り返しスイングを見て、フィニッシュの真似しながら練習を繰り返せば、スイング全体が良い方向に改善されていくだろう。