世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム104回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
シングルプレーヤーでも狂うアドレスの向き
久しぶりにラウンドレッスンを行った。そのなかに10年以上名古屋から通ってくれているアマチュアゴルファーがいた。教え始めた頃はハンディ12くらいの腕前で、ドライバーの飛距離は230ヤードほどしか飛ばず、球筋も弱いスライスだった。しかし、これまでコツコツと地道に練習を続け、今ではプロゴルファーをオーバードライブするほど飛距離を伸ばし、見事なフェードボールを操る片手シングルとなった。クラブ競技でもタイトルを獲得するなど、毎年着実にステップアップしている。
ちなみに、地道にコツコツと練習するというのはシングルになるアマチュアの共通点だ。飛躍的に上手くなる方法はないかと考えているアマチュアも多いが、そういう人はなかなか技術が向上しない。ゴルフに限らず、うまくいくための魔法の薬など存在するわけがなく、結局は適切なスイング構築の方法を学び、コツコツ練習して一つずつ課題をクリアしていくしかないのだ。
それはさておき、その日のレッスンは、練習場でスイングをチェックしてから、ハーフラウンドを回るという内容だった。練習場ではそれほど大きな問題点もなく、微調整の範囲でスイングチェックを行った。ところが、スタートホールのティーショットで、とんでもなく右を向いて構えていた。フェアウェーよりも40ヤード右のOBゾーンを向いていたのだ。そのアドレスの向きでどうなるのか観察するため、声をかけずにそのまま打ってもらったのだが、ボールはフェアウェーをとらえ、他の参加者たちはナイスショットと声をかけた。しかし、スイングは練習場で見たこともないアウトサイド・イン軌道で、ボールはアドレスの向きよりもかなり左に打ち出されていた。
「どこを向いて構えていましたか?」と声をかけてみたが、本人は「フェアウェーセンターのポールです」と右を向いている自覚がない。
「とんでもなく右を向いてましたよ。そのままスタンスなりにまっすぐ打っていたら右のOBゾーンでした」と言っても、「本当に?」と驚いた顔をしていた。
目標の左にターゲットを設定する
アドレスが右を向いていると、当然いつも通りのスイングをすれば、そのまま右に向かって飛んでいく。このため、体はまっすぐに飛ばそうとして、無意識にスイングを補正しようとする。このシングルプレーヤーも、右に向いたアドレスの向きを相殺するため、ボールをスタンスより左に打ち出してまっすぐ飛ばしていた。その結果、いつの間にかスイング軌道がアウトサイド・インになってしまい、スライスしたり、引っかけてしまうミスが出ていた。
アドレスで右を向いているのだから、左を向けばすぐに直るような気もするだろうが、実はそう簡単ではない。それまで、まっすぐに構えているつもりで右を向いてしまっていたのだから、それまでと同じルーティンでアドレスをとれば、やはり右を向いてしまう。
実際、そのシングルプレーヤーは向きを変えることに苦戦していた。
「吉田さん、向き大丈夫ですか?」と毎ホール聞いてきたが、6ホール目までずっと右を向き続けていた。習慣となってしまったアドレスの向きを修正するのは、シングルプレーヤーでも大変なことなのだ。
そこで、右を向いているアドレスを修正するために、アドレスの際の目標物やイメージを変えてもらった。
「ターゲットの左側に立っている木に対してアドレスしてください。ターゲットラインと自分のアドレスのラインが交わらないように線路をイメージしてみましょう」
最初のうちは、「こんなに左ですか?」と戸惑っていたが、徐々にスクエアにアドレスできるようになり、最終的には自力でスクエアに立ち、ナイスショットを放っていた。
今まで右を向いていたゴルファーが、線路をイメージして構えると、最初はすごく左を向いているような気がして違和感を覚えるかもしれない。しかし、慣れてくれば新たなスクエアの感覚として定着するので心配はない。そしてもう一つ調整しなければいけないのがスイング軌道だ。アウトサイド・インに振ることで右を向いたアドレスを補正していたので、スクエアに構えて同じスイング軌道で振ると、とんでもなく左へボールが飛んでしまう。スクエアに構えられるようになったら、徐々に右にボールが出るようにスイングを調整しよう。
シングルプレーヤーでも、いつのまにかアドレスの向きが狂ってしまう。できれば指導者にチェックしてもらうのが望ましいが、まずは仲間同士で確認しあってみてもいいだろう。定期的にコース上でアドレスの向きを確認してみてほしい。