世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム100回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
飛距離を伸ばすために大事なポイント
ゴルフの自粛を強いられているアマチュアゴルファーに80の壁を超えるためのきっかけをつかんでもらおうと、先日、無料のオンラインセミナーを開催した。
アマチュアゴルファーの悩みに答えようと事前にアンケートを行ったのだが、やはり多かったのは「飛距離が伸びない」「飛距離を伸ばす方法がわからない」など飛距離アップに関するものが多かった。
ドライバーが飛んだときの爽快感はゴルフの醍醐味の一つだ。ティーショットでライバルをオーバードライブすると優越感に浸ることもできる。そして、第1打の距離が伸びれば、第2打の距離は短くて済み、無理なくパーオン率を上げることができる。飛距離アップはゴルフを楽しむためだけではなく、スコアを向上させるために欠かせないのだ。今回は、飛距離を伸ばすために大事なポイントをご紹介しよう。
腕や手に力を込めてもスイングスピードは上がらない
ゴルファーであれば、「手打ちはいけない」という言葉は何度も聞いてきたことだろう。頭では分かっているつもりでも、実際には手や腕などの末端部分を中心にクラブを振ってしまっている人は多い。意図せずに腕や手を使ってしまうのは、クラブを速く振ろうとして、腕や手に力が入ってしまうからだ。逆説のようだが、手や腕に力が入るほどスイングのスピードは落ちる。スイングのスピードを上げるのは腕力ではないのだ。
特にダウンスイングの初期に腕や手に頼ってクラブを下ろすと、アーリーキャストという動きになる。この動きを行うことでクラブと腕の間にできるタメができず、インパクトでクラブを加速することができない。ダウンスイングの初期では手元は何もせず、下半身が動き出すことが大事になる。クルマで例えるなら、手や腕はエンジンではなくハンドルだ。ハンドルをむやみに動かしてもスピードは上がらないどころか事故のもとになる。
飛ばすためのエンジンを開発する
飛距離を伸ばすためのエンジンとなるのは、下半身の動きと軸に対する回転運動だ。陸上のハンマー投げをイメージしてほしい。腕や手だけで重いハンマーを遠くに投げようと思ってもできるものではない。下半身を使って身体を回転させて遠心力を利用するからこそ、遠くにハンマーを投げられるのだ。
スイングも同じことで、回転運動で得られる遠心力を働かさなければヘッドスピードは上がらない。そのために下半身を使って、地面反力を回転運動の原動力とするのだ。ゴルフスイングの回転軸には、前後軸(肩の縦回転に影響を与える軸)、垂直軸(頭から地面にかけての垂直な軸)、飛球線後方軸(両腰を結ぶ前傾と後傾に影響を与える軸)の3つがある。スイングは3Dで考える必要があるので、複数の軸で構成されていることを頭に入れてほしい。垂直の軸をイメージする人や、背骨を軸と考える人がいるがそれだけでは不十分だ。
飛距離を伸ばすために、この3つの軸の中で前後軸と垂直軸の二つの軸を回転させることが重要になる。この2つの軸を動かすために、下半身を使ってバーティカルフォース(縦の地面反力)とホリゾンタルフォース(トルク)を発生させる必要がある。バーティカルフォースは主にダウンスイングで左足を踏み込む動きにより生まれ、前後軸の回転を促進する。ホリゾンタルフォースは主に右足で地面を押す動きにより生まれ、垂直軸の回転を促進する。この2つのフォースは1つだけでも有効だが、2つの動きを同時に行うことでそれぞれの軸回転を行うことができるので、スイングの回転スピードを上げることができる。
まずはそれぞれの軸回転とフォースを感じることから始めてみるといいだろう。前後軸を感じるために、胸が地面と平行になるくらいまで前傾して肩を縦回転させてスイングをしてみよう。ダウンスイングで左足を踏み込み、左腰が切れ上がるように抜重する。そうすることで右肩が下がり、肩が縦に回転する感覚がわかるだろう。垂直軸を意識するために、直立した状態でつま先とかかとへ体重移動をしてみよう。バックスイングでは右かかとと左つま先、ダウンスイング以降は左かかとと右つま先に体重がかかるようにする。そうすることで竹とんぼのように、左右の足が胴体を回転させる動きになる。
この2つの軸回転をミックスさせてスイングすることでヘッドスピードを上げることができるのだ。
下半身を使って軸回転を促進することで、回転スピードが上がるだけではなく、上半身の力も抜ける。2つのエンジンを搭載することで、今までの何倍もの馬力を発揮する。まずはあなたのスイングのエンジンを開発してほしい。