世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム53回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ゲーム的な要素を取り入れるレッスン
私は人にゴルフを教える仕事をしているが、同時に教わることも多い。3ヵ月に1度ほどアメリカを訪れて、最新の理論を提唱するコーチに取材をしたり実際に生徒としてレッスンを体験したりしている。
その中で彼らのレッスン拠点であるアカデミーを訪れることがあるのだが、そこで見る環境は日本の施設とは大きく異なる。もちろん施設が広大であるということもあるのだが、その広い施設の中に大きな練習レンジや練習コースがあるという規模の話だけではないのだ。
例えばパッティンググリーン。広い練習グリーンの各所にカップが切られているところまでは同じだが、カップを中心にして同心円状に線が引かれている。線はカップから1メートルごとに引かれており、実際のレッスンでは複数人が同じ距離から何球サークルの内側に入れられるかを競ったりする。そうすることで、距離や傾斜ごとにゲーム感覚で自分の得意不得意が把握できる。退屈なアプローチ練習をより実践的な形で行うための工夫だ。
練習レンジも日本のように直線的ではないものもある。マスターズの練習場のように意図的にドックレッグをイメージして作られていたりするのだ。
実際のコースは真っすぐのレイアウトというのはほとんどなく、少しずつでもどちらかに曲がっている。その少しの曲がり具合やティグラウンドの向きなどでアドレス時に「構えにくいな」と感じたりするのだ。そういった真っすぐの練習レンジでは解消しにくい感覚的な部分を練習レンジで鍛えることができるようになっている。
また近年アメリカでは「トップゴルフ」という練習場が流行している。ゲーム要素の高い練習場で、フィールドに置かれたターゲットごとに点数が割り振られており、プレーヤーはそこを狙い点数の合計を競うのだ。フォームを固めるために反復練習が必要なこともあるが、ターゲットスポーツであるゴルフは目標に対して構えてその方向に打ち出すことがなによりも重要だ。そういった能力を楽しみながら身につけられる工夫がなされているのだ。
練習嫌いの欧米人に学ぶ
あるジュニア育成に力を入れているアメリカ人コーチと話した時のこと。彼らが最も大事にしているのは「練習をいかに楽しくするか」という点だと聞いた。
「年齢やレベルに限らず、アジア人は勤勉で反復練習が得意な傾向にある。一方の欧米人はサボるのがうまい。いい言い方をすると、自ら工夫をして目標達成のために最短距離を見つけられるんだ」
そのアカデミーには世界中からジュニアのレッスン生が集まる。1日彼らの練習を見ていたが、同じ練習時間でも打っているボールの数に違いはあった。教えている立場からすると、どちらが良いという優劣はつけられない。どちらも上達には必要な能力だからだ。
ただ私もレッスンをする際に感じるのは、多くの人が答えを求めすぎているということだ。もちろん技術向上のためにさまざまなアドバイスは行うが、コースに出ればプレーヤー自ら考えなくてはならない。どんな方法を取ればもっとも高い確率でパーを取れるか、グリーンに乗せられるかといったことは誰もが教えてくれないのだ。
練習であってもただボールを繰り返し打つだけではなく、自ら考えて上達の方法を探ってほしい。練習に行き詰っている人は遊びの感覚でいつもとは違うことを試して、練習自体を楽しんでほしいと思う。「好きこそものの上手なれ」。楽しむことこそが上達に欠かせない要素だったりするのだ。