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FASHION

2024.01.13

日本とスペインをルーツに持つブランド「SHOOP」デザイナー大木葉平とミリアン・サンス

2023年に東京進出した、スペイン発祥のファッションブランド「SHOOP(シュープ)」。日常の中からインスピレーションを受け、洋服をデザインし続けるデザイナー夫婦の大木葉平とミリアン・サンスの考えに迫る。■連載「世界に誇るべき、東京デザイナー」の記事を読む

「SHOOP」のミリアン・サンス(左)と大木葉平(右)。

自然体を突き詰めて表現する美しさ

2023年8月31日に行われた2024SSコレクションのランウェイを皮切りに、本拠地を東京に移転したスペイン・マドリード発祥のファッションブランド「SHOOP」。

全米シングルチャーTOP10のうち、9曲をしたこともあるラッパーのドレイクが着用したことで、世界的にも注目を集めた。大木葉平とミリアン・サンス、パートナーであるふたりに、東京進出にあたってブランドに込めた思いを聞いた。そして、海外で活躍していたからこそ感じる「日本」とは。

――はじめに、大木さんがスペインへ行ったきっかけは?

僕は15歳の時にスペイン行ったのですが、母親がすごいスペイン好きで。その頃自分がグレていたこともあって、母親から急に「スペインに行ってこい」って言われたんです。だからもともと、ファッションをやろうと思ってスペインに行ったわけではないんですよね。

――では、服を作り始めたきっかけはなんでしょう。

ミリアンですね。ミリアンがブランド立ち上げてからです。僕はスペインの芸大に行ってて、絵とか書いてたので、全く服作りとは違う場所にいましたし、ファッションのこともあまりわかってなかったので、ミリアンがブランドを立ち上げてから、独学で学んでいきました。ミリアンがパターンを引いているのを見たりしながら、勉強しましたね。

服を作り始めた頃は、スペインのメンズファッションが徐々に盛り上がっていたタイミングでした。スペインは、ZARAなどのファストファッションが強いんです。現実的な話をすると、向こうの月の平均賃金が1200ユーロ、日本円で18万円とかなんです。そうなると、あまり余裕がないので、ファストファッションなどがどうしても盛んになります。コロナ以降は、若者を中心にしてヴィンテットというフリマアプリが流行っていて、そういうところで若い子たちは古着を買ったりしています。一方、お金持ちでファッションが好きな子たちは、日本よりもミーハーな傾向があり、ハイブランドのロゴものだったり、ファッションというよりも「分かりやすいもの」を買っちゃうんですよね。デザインで買うっていうよりは、ブランドのステータスで買うって感じなんです。

――そんな環境の中、SHOOPは最初どこで販売していたんでしょうか。

2013年にブランドを立ち上げて、最初はスペインの店舗で売っていたんですが、インターネットでいろんな人が服を見てくれるようになり、アメリカ、オーストラリア、スウェーデンのお店から連絡が来て、自然な感じで広まってきました。その時も展示会とかをやっているわけではなく、インターネットでコレクションを発表して、そうしたら取引先がオファーの連絡をくれて。とてもありがたかったですね。その頃は、スペインはまだ新しいものが好きな時代だったので。わかりやすい流行だけではなく、みんなが新しいデザイナーを探そうっていう時期だったのかなと思います。

――日本的な感覚とは違いましたか。

そうですね。日本はドメスティックに流行るものがあるじゃないですか。海外はアメリカとかフランス、ロンドンの影響力が顕著に出るので、 そこで流行ったものが他のヨーロッパの国でも流行るみたいな感じだと思います。特に最近はヨーロッパもアメリカを受けることが多いですね。やっぱり、ヒップホップの影響力が強いのだとと思います。ヨーロッパのメゾンブランドも黒人デザイナーやヒップホップ界隈のアーティストを起用することも増えているじゃないですか。

――日本に服を卸しはじめたのはいつ頃ですか?

2015年頃からですね。当時はPRなどもつけず、個人でやっていましたが、AVALONの三浦進さんに出会って、「日本で展示会しなよ」と言ってくれたんです。だから最初はAVALONと一緒に展示会をさせてもらったんですよ。 今となっては、僕たちにとって日本のマーケットはすごく大きなものになりました。

――今の日本のファッションについてはどう思われますか?

服自体はすごくクオリティが高いものが多い。いろんなことが考え込まれてる服だと思います。でもやっぱり、少しガラパゴス状態になっている気がします。日本のカルチャーって、みんなで同じことやろう、それを盛り上げましょうっていう感じなので。あとは、商業寄りになりすぎてるというか、もうちょっと「面白み」があっても良いのかなと思います。

違うものに手を出しづらい環境なのかもしれないですね。アメカジが流行ったら、みんなアメカジを着ちゃうみたいな。服を見ていても、日本ではまず「縫製すごい綺麗でしょ」とか、「良い生地でしょ」とか、本当に職人気質な方が多いですよね。それはすごい大事だと思いますが、ファッションってそれだけじゃないと思うんですよ。

2023年8月31日に行われた2024SSコレクションは、国立競技場の駐車場へと繋がるスロープが舞台となった。薄暗く蒸し暑い中、日本の地下鉄や工事の音、セミの鳴き声が響き、まさに日本の夏が表現されていた。

――やはりショーを見る側のリアクションも違いますか?

日本は真面目すぎますかね。スペインなどは「ブラボー」とかすごい色々言ってくれるので(笑)。日本のほうが、見方が細かいですよ。ファーストルックはこうで、こういう素材を使っていて、だからこうって、細かく考察するが多いでよすね。

だからこそ逆に日本は、「服がどうしてこんなに高いのか」をわかってくれる人が比較的多いんですよ。海外の人たちは、ファストファッションの値段に慣れると、それなりに値段のする服を、ファストファッションと比べちゃうんです。

――では、「ファッション」とはどんなものだと思いますか。

ココ・シャネルの「流行は変化していくもの。だけどスタイルは永遠」という言葉が有名だと思うんですが、本当にそうだと思うんです。普遍的なものは確かにあると思う。

ファッションとか文化って、人間のメンタル的な栄養素として絶対に必要なものだと思ってます。動物だって、クジャクのオスは求愛のためにすごい綺麗な羽とかが生えてて、あれはクジャクが遺伝子的に意識してるんでしょうから。人間でいうと、ファッションってそういうものだと思ってます。

でも、美しいっていう感覚は、文化によって色々変わってくると思うんです。例えばアフリカだと美しいといえばふくよかな女性だったり、国や文化によって全く違う。土地に根付いていたりする昔からの空気みたいなものですよね。

だから、美しさの定義って難しい。僕は、「この花が美しいと思えたら、自分の心も美しい」っていう言葉が好きで。最も重要なのは、自分たちが美しいって思うことだと思います。

――最後に今後の目標設定を教えてください。

ビジネス的に成功するためにはパリコレに出たいという気持ちもあります。パリコレが今世界のファッション界の1番になっている、権力も影響力も。でも、そういうのも変わっていけないと思うんですよね。

いまだに、影響力があるのはアメリカ、フランス、イギリスという第2次世界大戦戦勝国のメディア。この人たちが認めたからこれがいいっていう雰囲気は変えていかなきゃいけないと思うんです。結局、僕たちはアジア人だし。ミリアンはスペイン人ですけど、フランス人ではないし。僕たちの価値観を大事にし、自分たちが良いって思うものは、そんな人たちが認めなくてもいいとも思うんです。

彼らが作り上げたシステム、土台でファッション業界はビジネスをしているのですが、そういうのも変えていかなければ、面白いものは生まれてことないと思います。現に、音楽界では、英語圏ではないアーティストの曲が世界のトップチャート入りしてきていますよね。音楽で成立してることなので、ファッションももっとそういう風になるべきだと思うし、そうなってほしい。

日本というものを、外に発信していく。そういう人たちがどんどん増えていくと思うので。日本って、海外に輸出するコンテンツはすごいあると思うんですよね。アニメだったり、日本独自のサブカルがあって、 そういうのを広められる人がどんどん増えてくると思います。あくまで自然体で、日々感じる日本のシーンを、日本人、日本在住ならではのことを発信していく。ファッションでもそういう風に日本のシーンを洋服に昇華して、海外に向けた魅力的なコンテンツとして伝えられたら良いなと思います。 SHOOPもそういうブランドでありたいです。

TEXT=ゲーテ編集部

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