連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」。今回は、先日ロンドンから来日したデザイナーのカストロ・スミス氏。インタビューとともに。
小さなジュエリーのなかに広がる無限の世界
動物や植物をモチーフにした、繊細なエングレービング。その緻密な描写に和の面影を感じさせるが、実はデザイナーのカストロ・スミス氏は日本との関係が深い。
「2017年から1年間、東京に住み日本の金属加工技術を学んだんだ。僕は学びたいことがあると、必ず現地へと足を運ぶ。単に技術を習得するだけでなく、その場から感じられるインスピレーションが重要だから」
彼のクリエイションの根底にあるのは、心象の具現化。といっても決して空想ではなく、実在するものの本質をどう捉えるかが大切と語る。
「目の前のものをそのまま捉えるのではなく、その奥にある魅力を探ること。単なる具現化ではなく、自分がどう感じ取るかによって表現は変わるんだよ」
その言葉どおり、彼が描くモチーフはどれも物語を感じさせる。小さなジュエリーのなかに無限の世界が広がっている。
手に取った瞬間、思わず見入ってしまう
ロンドンを拠点に活動するカストロ・スミス氏の作品には、手作業で金属の表面を彫りこむエングレービングという手法が用いられる。
モチーフは、動物や植物、神話などを軸としたシンボリックなものが多く、1や2は心臓を彫りこみ色付け。6は、ツバメと桜という和なモチーフを採用する。7のペンダントは、リンゴの芯にまといつくムカデという、まさに神話の世界を彷彿とさせる。色付けにおいては、セラミックやロジウムなどが用いられ、ゴールドと鮮やかなコントラストを描く。
■連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」とは……
時にファッションとして、時にシンボルとして、またはアートに……。ジュエリーを身につける理由は、実にさまざまだ。だが、そのどれもがアイデンティティの表明であり、身につけた日々は、つまり人生の足跡。そんな価値あるジュエリーを紹介する。