男の生き様が表れるコートには、人生を物語るに足る強い存在感がある。ゆえに合わせるアイテムは色調を統一し、控えめにまとめるのが好バランスだ。そこで旬のコートにベストマッチな色選びと着こなしを、ゲーテファッションディレクターの島田明が指南する。
METAL BUTTON × BLACK COLOR
「ここ数シーズン注目されているメタルボタン。ミリタリーの制服に由来するものですが、スポーティでモダンな雰囲気が今の気分にリンクします。そこで合わせたいのがブラックであり、モードテイストを利かせることでモダンさが引き立ちます。ブレザーのようなトラッドなイメージにも振れがちなので、クラシックなアイテムは避けるのが鉄則です」
SAINT LAURENT/サンローラン
奥深い表情に知的さを湛える多様なる黒の世界
「ムッシュ イヴ・サンローランは生前、“ただひとつの黒ではなく、多くの黒が存在する”という言葉を遺しています。まさにその名言を応用した着こなしは、ツイーディなコートに毛足の長いニット、シルクのシャツ、レザーのタイとオールブラックながら素材感にコントラストがあり、シックで奥深い表情。足元はテディボーイスタイルのラバーソールでアクセントを利かせるのが今季風です」
MACCHIA J/マッキアジェイ
エレガンスとワイルドのバランスが決め手
「キャメルカラーのコートは大人らしいエレガンスが魅力ですが、上品なインナーでは凡庸です。ここはレザーのシャツで、敢えて対極のワイルドなテイストをミックスするのが今季の気分。オールブラックゆえ色合わせは不要であり、メタルボタンのダブルブレストコートにはミリタリーユニフォームのテイストもあってドレッシーすぎないため、バランスよく収まります」
PRADA/プラダ
主役のコートを美しく引き立てるモノトーンのコーディネイト
「ミウッチャ・プラダ率いるチームにラフ・シモンズが加わってからのプラダは、トライアングルロゴに改めてフォーカスするなど、旬の’80年代リバイバルを感じさせます。オーバーサイズシルエットやロゴ入りのビッグボタンを採用したアイコニックなコートもそのひとつ。こうしたインパクトのあるコートこそ、ブラックのアイテムを全体に使用し、まとめることでコートの存在感より際立たせます」
TOM FORD/トム フォード
引き算によって際立つ独創的な世界観を愉しむ
「ブラックのカシミア混フランネルに、拝絹(はいけん)と呼ばれるタキシードのシルクラペルを思わせるベルベットラペル、構築的な仕立て、そしてゴールドトーンのメタルボタン。ドレスとフォーマル、さらに得意のミリタリーの要素も加味したコートは、これぞトム フォードな世界観が凝縮された1着です。コート自体に圧倒的な存在感があるので、何も足す必要がなく、合わせはミニマルに徹しましょう」
AKIRA SHIMADA
1963年東京都生まれ。雑誌『MEN’S CLUB』にて編集者としてキャリアをスタート。その後、雑誌『LEON』で編集長代理、『Esquire』でファッションディレクターを経て、2011年より小誌ファッションディレクターに就任。現在、Patrick CoxやHEADなど国内外のブランドのディレクターも務めている。